トヨタ「クラウンエステート」登場! “シリーズ第4”のモデルはなぜ「SUV×ワゴン」融合した? 伝統の「エステート」名称“復活”にかけた開発の想いとは【開発者インタビュー】

トヨタ「クラウン」シリーズのうち、第4のモデルとなる「クラウンエステート」が登場しました。果たしてどのようなクルマなのでしょうか。開発にあたっての背景や、ほかの3タイプとのキャラクターの違いを開発担当者に聞いてみました。

シリーズ最後の「エステート」 なぜ「ワゴンとSUV」が融合?

 16代目「クラウン」は、トヨタ自動車会長 豊田 章男氏の「マイナーチェンジを飛ばしてもいい。クラウンをもっと本気で考えてみてほしい」という声から、クラウン史上最大の革新と挑戦が行なわれて登場しました。
 
 開発コンセプトは「あなたのフラッグシップ」で4つのモデルを設定。すでに「クラウンクロスオーバー(以下、クロスオーバー)」、「クラウンスポーツ」(以下、スポーツ)、「クラウンセダン(以下、セダン)」が発売中ですが、そのトリを飾るのが今回登場した「クラウンエステート(以下、エステート)」になります。
 
 筆者(山本シンヤ)は今回、クラウンシリーズのチーフエンジニアである清水 竜太郎氏と、エステートの製品企画を担当した本間 裕二氏にエステートへの想いをお聞きしました。

トヨタ新型「クラウンエステート」HEVモデル
トヨタ新型「クラウンエステート」HEVモデル

ーー今回18年ぶりの復活となるエステートですが、そもそもワゴンの再投入を決めた理由は何だったのでしょうか。

 清水氏(以下、敬称略):クラウンの歴史を振り返ると、ワゴンボディは2代目から設定されています。これは、クラウンという商品を通じて色々なお客様のニーズに対する提案だったと思いますが、それは16代目のエステートも同じ考えです。

 実は販売店のスタッフからも、「今も11代目のエステートを所有するお客様が多く、彼らに買い替えてもらえるクルマがない」という声も聞いていました。ただ、皆さんのご存じの通りステーションワゴン市場は縮小傾向ですので、ただのワゴンではダメだと。

ーーその答えが「ワゴンとSUVの融合」だったということですが、簡単に生まれたモノなのでしょうか。それとも悩みに悩んで生まれたモノなのでしょうか。

 清水:企画初期から色々なタイプのモデルを豊田会長も交えてたくさん議論しました。

 なかには小さいクラウンやミニバンなどのアイデアもありましたが、そのなかにエステートも。

 実はクロスオーバーをベースに荷室だけ広げた案もありましたが、今までの価値観から抜け出せず、「革新と挑戦をしているクラウンじゃないよね」と。改めて「自分が本当に欲しいクルマって何だ?」と考えた結果が、ワゴンのSUV融合でした。

ワゴンらしいスタイリングに十分なラゲッジ容量を確保
ワゴンらしいスタイリングに十分なラゲッジ容量を確保

 通常、ワゴンとSUVの融合というと、スバル「レガシィ アウトバック」のようなクロスオーバースタイルのイメージを受けますが、エステートは単なるステーションワゴンの“かさ上げ”バージョンではなく、エステート独自のデザインが採用されています。

 2022年の16代目クラウンシリーズ世界初公開時、披露されたモックアップはSUV色が強く、個人的には「豪華版『RAV4』なのでは?」と思うところもありましたが、改めて量産モデルを見るとプロポーションを含めて「ちゃんとワゴン」しています。

 清水:実は世界初公開の時はモックアップで、デザインは最終版ではありませんでした。ちなみにボディサイズが一番近いのがキャデラック『リリック』ですが、実は直接的なライバルは存在しません。そういう意味では、我々としては挑戦でもあります。

ーーこのあたりの細かい話はデザインパートでお聞きするので割愛しますが、メカニズム的にはどうでしょうか。

 本間氏(以下、敬称略):プラットフォームや選択しているパワーユニットも含めて、共通項が多いのはスポーツですね。もちろん、ホイールベースや各部の味付けを含めてエステート専用です。

ーー…となると、使える武器は決まっていると思いますが、そのなかでエステートとして「ここは絶対に譲れない」、「これは絶対に盛り込みたい」といった部分はどこでしょうか。

 本間:エステートのコンセプトは「大人のアクティブキャビン」です。そこで意識したのはスペースの部分です。その中でもラゲッジルームは一番のこだわりですね。

 16代目はシリーズとして、「全席特等席」という考えで開発していますが、エステートはその考えをラゲッジルームまで広げています。

 このあたりはデザインチームも交えてワーキンググループを作り、「お客様が喜ぶラゲッジって何だろう?」と議論しながら、アイデアを出し合って開発を行いました。

「ラゲッジ拡張ボード」を展開した状態
「ラゲッジ拡張ボード」を展開した状態

 そのアイデアの一つが、リアシートの背もたれを倒すと表れる室内長2mの広大なスペースということです。

 本間:リアシートは6:4の分割可倒式で、そのまま倒すだけだと隙間が出てしまいますが、シートバック裏側に装着される「ラゲッジ拡張ボード」を開くと、完全なフラットスペースが生まれます。

 ただ広いだけでなく段差のない空間を作ることで、お客様の大事な趣味の道具(例えば楽器など)を大切に置いておけます。最近では車中泊で使われるお客様も多いので、そのような時でも快適に過ごせる空間になっていると自負しています。

ーーただ、フラットな空間を実現するためにリアシートの快適性が損なわれると意味がありません。その辺りはどのような工夫があるのでしょう。

 本間:もちろんシートバック/クッションともにシッカリと厚みを取ったうえで、フルフラットになるように構造設計を進めていますので、快適性は一切犠牲になっていません。

【画像】超カッコイイ! これが18年ぶり復活の「クラウンエステート」です! 画像で見る(90枚)

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