17か月ぶりの首位陥落、なぜ? 「軽の王者」に何が? ホンダ「N-BOX」の現状はいかに
不動の王者ホンダ「N-BOX」が2025年10月、まさかの4位に転落。ムーヴやスペーシアに敗れ、前年比76%と上位陣で唯一の「一人負け」状態。絶対王者に一体何が起きているのでしょうか。販売現場の声から見えてきた強気の価格設定やデザインの賛否、値引き状況など、急激な失速の背景を解説していきます。
それでも「年間ナンバー1」は確実? 上半期の貯金とライバルの猛追
ホンダ「N-BOX」は、軽自動車のみならず、登録車を含めた販売台数で何度もナンバー1になり、現在の新車で最も売れているクルマといえます。
2021年から4年連続で登録車を含めて暦年で1位になり、軽自動車のみでは10年連続ナンバー1を達成しています。
しかし、全国軽自動車協会連合会の調べによると、異変が起きたのは2025年10月。
1位の座をダイハツ「ムーヴ」に奪われたばかりか、2位も同じ軽スーパーハイトワゴンであるスズキ「スペーシア」に、3位もライバルであるダイハツ「タント」に譲っています。
じつに17か月ぶりの首位陥落となりました。

1位のムーブは、前年同月比308.3%で1万5015台、2位のスペーシアは同101.3%の1万4420台、3位のタントは同134.3%の1万4244台。
そして、4位のN-BOXは、同76.0%の1万2784台と、上位の中では一人負けといえる状態になっています。
なお、2025年上半期(1月〜6月)では、N-BOXが10万3435台(前年同期比102.7%)で1位、スペーシアが8万4322台(前年同期比比99.9%)が2位となっていて、その差は1万9000台超あります。
10月のスペーシアとN-BOXの差は1600台あまりで、11年連続となる軽自動車販売台数1位を獲得する可能性は高そうです。
2025年上半期の時点で、N-BOXと勢いに乗るムーヴとの差はまだ5万2000台超もあり、ムーヴがまくるのは現実的とは思えません。
ムーヴキャンバスも含めてムーヴが売れているのは、新型の両側スライドドア化や良品廉価を謳うダイハツらしい価格設定などがありそうですが、N-BOXの急激な落ち込みが気になります。
都内の正規販売店で話を伺ったところ、新型になった時点で先代ほどの勢いが長続きしていない感覚があるようです。
その理由は、軽自動車トップクラスの充実装備を誇る反面、約174万円〜約247万円という強気の価格設定がありそうです。
現行登場時は、値引きなしという状況もあったそうですが、現在は車両本体から15万円〜、販売店の在庫車であれば20万円強というケースもある模様です。
押し出し感のあるフロントマスクが流行している中、N-BOXは上質感を追求。
筆者は個人的にはオラオラ系のモデルは苦手ですが、迫力フェイスが支持を集める現在においては、デザインも物足りないと感じる声もあるようです。

また、販売のてこ入れ策として期待されていたはずのN-BOX「JOY」もあまり出ていない模様。
さらに、「デリ丸」フェイスが印象的な三菱「デリカミニ」、上質感と存在感を併せ持つ日産「ルークス」が新型にスイッチしたことで、軽スーパーハイトワゴンの販売競争がさらに激化することは必至。
N-BOXのホームページの冒頭には、残価設定型クレジットの「残クレ」、バリュー保証プランの「バリ保」、楽まるごとプランの「楽まる」という、多彩な販売、サブスクが提案されています。
そのほか、2025年度卒業予定で、2026年春就職予定のフレッシャーズ向け「フレッシャーズ応援 飛びますクレジット」と呼ぶ支払いが6月からですむプランも用意されています。
販売促進に向けてホンダも打開策を図るかは分かりませんが、N-BOXは、スペーシアやタント、ルークス、デリカミニなどのライバルはもちろん、同じホンダの販売店同士で商談(競合)すると、さらに、値引きも期待できるかもしれません。
Writer: 塚田 勝弘
中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー用品などのフリーライター/フリーエディターに。軽自動車からミニバン、キャンピングカーまで試乗記や使い勝手などを執筆。現在は最終生産期のマツダ・デミオのMTに乗る。





























































