電力需要ひっ迫で「賛否両論!」EV普及して本当に大丈夫!? 自動車メーカーも取り組む「ダイナミックプライシング」の可能性とは

近未来のエネルギー政策のあり方は「ガソリンとクルマ」の二の舞であってはならない

 一方、電力の供給については、国のエネルギー基本計画に基づいて、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーを既存の電力網に効率的につなげる系統連携などについて、様々な業界、団体、そして個人が、これからの日本のエネルギー政策のあり方について議論を深めているところです。

 そこに、長引くコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻が重なり、発電のための使うLNG(液化天然ガス)、原油、石炭などの供給が不安定になり、家庭の電気代の上昇、そしてガソリンやディーゼル燃料の価格高騰など、毎日の生活で使う様々なエネルギーに対して不安な気持ちになる人も少なくない状況だと思います。

EV(電気自動車)の充電シーン[写真は三菱「eKクロスEV」]
EV(電気自動車)の充電シーン[写真は三菱「eKクロスEV」]

 そうした中、現時点で発電して送電する側とEVを作り売る側との間で将来の電力需給に対する明確な方針や、データに基づく具体的な需給シュミレーションが一般向けに公開されている状況ではありません。

 見方を変えると、これまでもガソリンやディーゼル燃料の供給量と、自動車の生産・販売台数について、具体的なシュミレーションが一般向けに公開されてきたわけでもありません。単純に、自動車販売台数が増えることに対して供給型が対応するためにガソリンスタンドの数を増やし、ガソリンの供給量を増やしてきたのです。

 しかし、近年ではハイブリッド車の普及で燃費が良くなり、結果的にガソリン供給量が減ったり、ガソリンスタンド間での価格競争が激しくなり経営不振に陥る小資本の事業者が店じまいするなど、様々な要因でガソリンスタンド全体数の減少が続いている状況です。

 こうした、ガソリン需給のこれまでの経緯を振り返ってみますと、EVと電力供給の関係性についても、基本的には市場での自由競争のなかで、社会状況に応じてEVと電力供給のバランスを模索し続ける可能性も考えられます。

 理想的な社会の姿としては、いわゆるスマートシティやスーパーシティといった街の概念の中で、EVを含めた社会全体で必要な電力を発電・送電し、また蓄電したEVから家に送電するなど、計画的かつ効率的な社会全体でのエネルギーマネージメントが考えられています。

 ただし、こうした議論は2010年に国産EVの日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」が相次いで世の中に登場した際、電力大手やガス大手などがこぞって提案した社会の未来像でしたが、そうした社会が現時点である程度の規模で実現しているとは言い難い状況です。

 EV普及元年である2022年は、改めてEVと電力供給に対する考えをユーザーも含めて国全体で議論するべき時期だと感じます。

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