アイシンの超広大テストコースで最新車両+次世代技術を一挙に試乗!“メガサプライヤー”の現在地 2026年の実力を体験!「知能化・統合制御」と「乗降・快適性」の進化、そして目指す未来とは?【後編】
北海道豊頃町にあるアイシンの広大なテストコースで、技術説明会と試乗会がおこなわれました。トランスミッションだけでなく、EV、HEVなどのパワートレーン、サスペンション、ブレーキ、ボディなど多岐にわたっての技術展示に加え、現在市販されている最新技術の搭載車から次世代の技術提案の開発車両まで、合計10台の試乗車が用意されました。山本シンヤ氏による前後編でお届けするレポートの、第2弾です。
「便利」と「安心」クルマの乗り降りを「ストレスフリー」に実現
最後に、乗降性とおもてなしを進化させる技術として注目されるのが、デジタルキーと車載カメラを連携させた「ストレスフリーエントリーシステム」です。
「アルファード」による実車デモでは、スマートキーを持った人が近づくと、AIカメラが骨格や体幹の傾き、顔の向きを検知し、前席か後席スライドドアかを先読みしてノータッチで自動オープンしてくれました。雨の日や、両手いっぱいに荷物を持っていたり子供を抱っこしている時に、片足立ちでキックセンサーを探すストレスから完全に解放されます。

車内カメラとも連携しており、着座すると自動で閉まり、降りる体勢をとると自動で開くという極めてシームレスなおもてなしを実現しています。また、それ以上に興味深かったのは「見守り・防犯機能」です。
オーナー以外の人物が車両周囲をうろついたり、車内を覗き込んだり、ホイールハウス内に手を伸ばすような不審な挙動(まさにCANインベーダーの手口!)を検知すると、段階的にライト点灯や警告ホーンで威嚇し、スマートフォンへ即座に通知。
この防犯機能は、「ランドクルーザー」やレクサス「LX」、アルファードなど盗難リスクの高い車種にとって、喉から手が出るほど欲しい技術のはずです。
これは新車装着よりも、KINTO FACTORYなどを通じた既販車への後付けオプション(BtoCビジネス)として展開すれば、より化ける可能性はあると思いました。
アイシンが目指す未来への「期待」と「課題」
今回の取材で数々の最先端技術を目の当たりにし、開発段階ながらもその完成度の高さに圧倒される一方で、強く感じたもどかしさがあります。それは「技術は間違いなく超一流なのに、それを世の中に伝えるのが圧倒的に下手である」という点です。
そもそも「移動に感動を」という言葉自体、部品サプライヤーが掲げるスローガンとは思えないほどエモーショナルで、ユーザー直結の熱いキーワードです。しかし現状はどうでしょうか?
クルマ好きのエンドユーザーは、「ブレンボのブレーキ」や「ビルシュタインのダンパー」であれば、それが付いているだけで誇らしく思い、喜んでプラスアルファの対価を支払います。
ところが、中身がどれほど優れていても「アイシン製」に対して指名買いでお金を払うカルチャーは、まだ世の中に定着していません。

ちなみに欧州のルノー「メガーヌR.S.」やレンジローバーの卓越したハンドリングを支えているリヤステアシステムが、実はアイシン製である事実をどれほどのユーザーが知っているでしょうか。
ブレンボのようにひと目でそれとわかる意匠やキャリパーデザインを工夫したり、次世代ブレーキにも「第2世代」といった無機質な社内呼称ではなく、思わず人に語りたくなるような響くブランドネームを与えたりするなど、自らをもっとアピールできる余地は山ほどあるはずです。
サプライヤーの多くはBtoBの奥に控える“黒子”に徹するあまり、世の中にその価値が届いていないのはあまりにも惜しいことです。「良いものを作っていれば誰かが気づいてくれる」という奥ゆかしさは、もはや美徳ではありません。
かつてパソコン業界でBtoBビジネスながらも圧倒的なブランドを確立した「インテル、入ってる(Intel Inside)」のように、アイシンも自らの技術の凄みをユーザーに向けてもっと堂々と主張し、ブランド価値を勝ち獲りにいくべきです。技術の進化と同じ熱量で「伝える力」を磨くことこそ、今のアイシンに必要な最大のブレイクスルーだと確信します。
そして、筆者はアイシンにぜひ挑戦してほしいことがあります。それは、「すべての先端技術を凝縮した“御神体”となるクルマを、自らの手で丸ごと1台創り上げること」です。

かつてアイシンの前身であるアイシン・エィ・ダブリュの先進開発を牽引した「エクォス・リサーチ」は、日々の生産や目先の改良に追われる本社から物理的に距離を置き、全く新しい価値を創造するために設立された“異能”の集団でした。
彼らが掲げていた純粋な情熱こそが、「馬のようなクルマをつくりたい」という想いです。手綱を介して乗り手と呼吸を合わせ、走る歓びを分かち合い、時には乗り手を助け、寄り添うように自ら屈んで乗せてくれる。
あの頃、異能の先人たちが夢見た「愛馬のようなクルマ」の理想像は、今日のアイシンが手中に収めた技術によって、現実のものとして具現化できるでしょう。筆者は一品物でもいいので、技術の結集を見てみたいと思っています。
ドライバーの癖を読み取って人馬一体の走りを仕立てるパーソナライズ運動統合制御、乗り手の意図を先読みして迎え入れるストレスフリーエントリー、剛性とマイルドなしなやかさを両立する適材ボディ、そして車体レイアウトを根底から解き放つX-in-1 eAxle。これらはすべて、人とクルマが心を通わせるためのピースにほかなりません。
各自動車メーカーへの提案にとどまらず、先人たちのDNAを受け継いだアイシンの卓越した技術と、情熱あふれる若いエンジニアたちの手で「現代の馬のようなクルマ」を形にする。その象徴的な1台を世に見せつけることこそが、アイシンの真のプレゼンスを示し、次のモビリティ社会のけん引役になってほしいと願っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。




















































