アイシンの超広大テストコースで最新車両+次世代技術を一挙に試乗!“メガサプライヤー”の現在地 2026年の実力を体験! 「骨格と走り」の最新技術をレポート【前編】
北海道豊頃町にあるアイシンの広大なテストコースで、技術説明会と試乗会がおこなわれました。トランスミッションだけでなく、EV、HEVなどのパワートレーン、サスペンション、ブレーキ、ボディなど多岐にわたっての技術展示に加え、現在市販されている最新技術の搭載車から次世代の技術提案の開発車両まで、合計10台の試乗車が用意されました。山本シンヤ氏による前後編でお届けするレポートの、第1弾です。
アイシングループ「アドヴィックス」の最新+次世代のブレーキ製品を体験
ブレーキ領域でも、実用量産性と極限のコントロール性の双方が大きな進化を遂げていました。
まずは「RAV4」で市場投入済みの「普及型回生協調ブレーキ(HBC)」です。こちらは従来のギアポンプ式加圧源(高額)から汎用性の高い電動シリンダーへ刷新しています。
部品の超高精度加工を排してコストを抑え、グローバル量産を容易にしつつ、従来のメカ油圧ブレーキと全く変わらない自然なペダルタッチを実現。停止直前の不快なカックンを自動で抜く「スムーズストップ」や、回生から油圧ブレーキへのすり替わりは、同乗者には全く感知できないほど滑らかで、踏み込み初期の減速Gの立ち上がりも非常にリニアでした。
次に、レクサス「RZ」で体感した「次世代ブレーキ」。フロントに電動油圧シリンダー、リヤに完全電動キャリパー(EMB)を配置した4輪完全独立制御のバイワイヤシステムとなります。

油圧バルブを通過するタイムラグを排したことで、応答速度は約35%も短縮。急制動時でもフロントのノーズダイブ(前のめり)を抑え、リヤをグッと沈み込ませて4輪全体で路面に吸い付くように止まります。そのフラットな制動姿勢は、まるでポルシェ「911」のブレーキを思わせる絶対的な安心感です。
急制動でも従来のABSのような「ババババッ」という激しい油圧キックバックや車体振動が皆無で、滑らかに減速していく様は圧巻の一言。ボタン操作によるステップ制動試験でも、電光石火のレスポンスで狙った通りの減速Gがピタッと立ち上がります。
これだけ凄いブレーキだからこそ、「新世代」のような無機質な社内呼称ではなく、ブレンボのようにユーザーが指名買いしたくなるようなカッコいいブランド名やキャリパーデザインをあしらって、もっと世の中にアピールしてほしいところです。
日本未導入モデル、ジープ「チェロキー」と三菱「エクスフォース」のハイブリッドシステムを体感
アイシンはトヨタの自社工場とともにTHS II(トヨタハイブリッドシステム)の基幹変速ユニット生産の一翼を担っていますが、それとは別に、アイシン独自の2モーターハイブリッドの系譜が存在します。
そのルーツは、2004年にフォードへ供給を開始したエスケープ・ハイブリッドに遡ります。遊星歯車を用いた動力分割機構という基本原理こそ近しいものの、自社専用に最適化されたトヨタのTHS IIに対し、アイシンの独自ユニットは「他社の多様なエンジンやバッテリーと自在に組み合わせられる」独立したサプライヤー製ハイブリッドとしてグローバルに磨かれてきました。
その最新進化形として今回テストコースで試乗したのが、北米向けのジープ「チェロキー」と、アセアン向けの三菱「エクスフォース」という、キャラクターの全く異なる2台です。

チェロキーに搭載された大容量FF 2モーターユニットは、BluE Nexusおよびデンソーと共同開発した北米現地生産(USMCA対応)モデル。従来の多段ATスペースにそのまま収まるよう軸長を4mm短縮しつつ、トルクを約7%強化しています。
コースへ向かい走り始めてみると、THS IIとはドライブフィールが似ているようで異なります。アクセルを踏み込んだ際にエンジン回転だけが先行して唸るようなラバーバンド感が驚くほど少なく、発進から中間加速にかけては大容量モーターが太いトルクで粘り強く車体を押し出します(EVモードも70-80km/hくらいまでへっちゃら)。
車速の伸びに合わせて1.6リッターターボエンジンの過給圧とトルクがダイレクトにリンクし、力強くリニアに加速していくフィーリングは想像以上に爽快。ハイウェイ合流の瞬発力や、大柄なチェロキーを軽快に走らせるトルクフルな走りは、ステランティス傘下の欧州車にそのまま搭載してもいいと思いました。
一方、エクスフォースに積まれたユニットは、油圧回路を完全に廃止し、電動アクチュエーター駆動の2速ドグクラッチで「シリーズ走行」と「エンジン直結パラレル走行(ハイ/ロー)」を切り替える超高効率・低コスト設計となっています。
ドグクラッチ特有の変速ショックを懸念していましたが、ステアリングを握ると直結モードへの切り替わりはエネルギーモニターを見ていなければ絶対に気づかないほどシームレス。市街地はEVそのものの静粛なモーター走行を維持し、速度が乗ると小気味よく直結モードへ移行します。

感心したのが、登坂路を想定してあえてバッテリー残量を減らした際の制御です。エンジンを高回転で回して発電しつつ、ローギヤで駆動力を直結アシストするモードへ入ると、多少エンジンノイズは響きますが1.5リッター級とは思えない力強い登坂力を発揮。CVTのような滑り感が一切ないダイレクトなトラクションと、過酷な熱環境下でもラジエーターを巨大化させずに冷却負荷を逃がす合理性も、アジア向けだと聞いて納得です。
ボディ骨格からブレーキ、電動駆動ユニット、そして世界各地の使われ方に合わせたハイブリッドに至るまで、試乗した技術に共通していたのは、「ソフトウェアは言わずもがな、徹底したハードウェアの作り込みが、クルマの動的質感を劇的に引き上げる」という揺るぎない事実でした。
数値上のスペック競争にとどまらず、ステアリングを握った瞬間に誰もが納得できるフィジカルな安心感と気持ち良さ。それをサプライヤーの立場でここまで愚直に追求できる企業は、世界を見渡してもアイシンをおいて他にはないでしょう。
後編ではこれらの卓越した走りに加えて、さらに命を吹き込み、ドライバー一人ひとりの感性に寄り添う「知能化・統合制御」と「新たな体験価値」、そしてアイシンが挑むべきクルマづくりの未来像をお届けします。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。




















































