スポーツカーはどうなる? クルマの「電動化」へ世界中のメーカーが急転換 その背景とは?
先日、日本政府は2050年までに世界で販売する日本車のすべてを電動化させるという目標を打ち出しました。この流れは日本だけでなく世界中で見られますが、なぜ今世界中が電動化に向かっているのでしょうか?
2050年までにすべての日本車は電動化に
2018年7月、自動車メーカーの代表取締役や大学教授などの有識者で構成された経済産業省主導の自動車新世代戦略会議が、2050年までにすべての日本車を電動化させるという方針を打ち出しました。
注目すべきは日本国内だけでなく世界で販売する日本車が対象である点で、あくまで議論途中の中間整理ですが、大きな方向性は変わらないでしょう。また、フランスやイギリスでも、2040年までに自国で販売する自動車のすべてを電動化させると表明していることからも、この流れは世界的なものと言えます。
では、なぜ世界中が急速に電動化へ向かっているのかといえば、その背景には環境問題という世界中で取り組むべき課題があるのは明らかです。しかし、ここ数年で動きが活発化しているのにはある理由があります。
その理由を自動車関連コンサルティングファームに所属しているコンサルタントにその背景を聞きました。
――最近になって、なぜ突然「電動化」が叫ばれるようになったのでしょうか?
自動車業界では、以前から将来的にはほとんどのクルマが電動化されるというのが定説でした。1997年に採択された「京都議定書」では、先進国全体で2008年から2012年までの5年間で、1990年比で5.2%の温室効果ガス削減が求められました。それを達成するために、新たな自動車の開発が求められたのです。
日本はこれに対応して、世界に先駆けてハイブリッド車を市販しました。一方、欧州では既存のエンジンに改良を加えた「ダウンサイジングターボエンジン」やディーゼルエンジンを改良した「クリーンディーゼルエンジン」で対応しましたが、既存のエンジンの改良では将来的に環境基準が厳しくなった場合に対応できないのは明らかでした。それでも欧州の自動車メーカーの多くは、本格的な電動化はまだ遠い未来の話だと考えていたのです。
しかし2015年、VWによるディーゼルエンジンの不正事件、いわゆる「ディーゼルゲート事件」が起こりました。これによりディーゼルエンジンは環境問題の救世主ではなくなり、ガソリンエンジンも技術上の限界に達しつつあるということで、欧州の自動車メーカーは急速に電動化へとシフトせざるをえなくなりました。
そして同年、京都議定書の進化版と言えるパリ協定が採択されます。これは「産業革命前からの世界の平均気温上昇を『2度未満』に抑える。加えて、平均気温上昇『1.5度未満』を目指す」というものでしたが、結果として日本は2030年までに2013年比で温室効果ガス排出量を26%削減することが求められるなど、各国で厳しい目標が設定されました。
自動車は温室効果ガスの排出量に大きく関係します。そのため、ほとんどの国は環境負荷の低い自動車への優遇および環境負荷の高い自動車へのペナルティを制定しました。その結果、自動車メーカーは、より多くの自動車を売るために、各国で優遇措置のある電動車を積極的に開発する方向にシフトすることになるのです。