ダイハツの「4ドア“クーペ”」がスゴイ! 旧車デザイン&全長4.2m級の“ちょうどいいサイズ”採用! まるで「小さな高級車」な「DNコンパーノ」どんなモデル?
モーターショーなど、様々な自動車イベントには、“コンセプトカー”が登場します。そんなコンセプトカーのひとつが、2017年に開催された第45回東京モーターショーで初公開された「DNコンパーノ」です。どのようなモデルなのでしょうか。
あの車名を冠した、流麗なコンパクト4ドアクーペ
コンパクトな4ドアクーペとして注目を集めたダイハツのコンセプトカー「DNコンパーノ」。デザインのみならず、車名でも注目を集めました。その理由を探ります。

美しくなめらかなクーペルックでありながら4ドアの利便性、+2もしくは大人2人が乗れる居住性を確保した「4ドアクーペ」というジャンル。1985年に登場した、室内の広さよりもスタイルを優先した4ドアピラーレスハードトップのトヨタ「カリーナED」がその始まりといえます。
カリーナEDはヒット作となり、同門トヨタも「コロナ EXiV」「カローラセレス」「スプリンターマリノ」を発売。そして日産「プレセア」、三菱「エメロード」、アンフィニ(マツダ)「MS-8」など、数多くのフォロワーを生み出しました。
しかし近年では、メルセデス・ベンツ「CLS」「CLA」、BMW「6シリーズグランクーペ」「2シリーズグランクーペ」、アウディ「A5スポーツバック」など、ドイツ車を中心とした海外勢にすっかりお株を奪われている状態です。
ところが2017年開催の「第45回東京モーターショー」に、ダイハツはスタイリッシュな4ドアクーペのDNコンパーノを出展して、話題を呼びました。
流麗なラインで後方に流れ落ちるルーフライン、キャビンフォワードで長めのフロントオーバーハングが小粋なスタイルを生み出しているDNコンパーノは、一見すると2ドアクーペに見えますが、よく見るとドアが4枚設けられていることがわかります。
フロントには、縦格子の横長グリルを配置。サイドの窓下に入る立体的なキャラクターラインは、そのまま縦型のテールライトにつながっており、どこかレトロフューチャー・デザインを感じさせます。
パワーユニットは直列3気筒の1リッターターボか1.2リッターハイブリッドの搭載を想定。全長はわずか4.2mというコンパクトさですが、このサイズで流麗な4ドアクーペのサイドビューを作り出しているのは、見事というほかありません。
全幅も1.7m以下に抑えられているのも、小さなクルマにこだわるダイハツならではの美点です。
小さな4ドアクーペのためリアシートの居住性はさほど高くないと思われますが、DNコンパーノのターゲットユーザーは「子育てが終わったアクティブなシニアが、豊かなセカンドライフを楽しむクルマ」とされていることから、コンパクトで運転しやすく、買い物などでも便利で、かつパーソナル感の高い4ドアクーペというチョイスは、最適解のひとつとして興味深いものです。
さらに、DNコンパーノが注目を集めたのには理由があります。それは、1960年代にダイハツが発売していた800/1000ccクラスの小型車、「コンパーノ」の名前を冠していることでした。
今でこそスズキと並ぶ日本有数の軽自動車メーカーのダイハツですが、実は乗用車市場への進出は軽自動車ではなく、1951年に登場したユニークな3輪自動車「Bee」、そして1963年発売のコンパーノが始まりでした。
しかもコンパーノは当初乗用車ではなく、1962年の第9回東京モーターショーに参考出品された際はバンボディの「コンパーノ・バン」で登場したことも意外なポイント。翌年4月にバン、6月にワゴンをリリースしたのち、同年11月に2ドアセダンの「ベルリーナ(イタリア語でセダンの意)」を追加しています。
コンパーノの美しいデザインは、かつて存在したイタリアのカロッツェリア「ヴィニャーレ」が手がけたものですが、ベルリーナ用に新たに起こされた車体後半のデザインは、ダイハツ自身の手によるものです。
1965年4月には1000ccエンジンを載せたオープンモデルの「スパイダー」、同年6月になってベルリーナに4ドア版も設定されました。
DNコンパーノは、まさにかつての名車コンパーノのオマージュといえるモデル。コンパクトながらスタイリッシュだったコンパーノを、レトロフューチャーデザインで現代に蘇らせています。インテリアを見ても、ドライバー正面に並ぶ2連メーターはまさにコンパーノを彷彿とさせる雰囲気を醸し出していました。
DNコンパーノは、極めて完成度の高いデザインとコンセプトで誕生しましたが、市販には至りませんでした。ダイハツは軽自動車だけでなく、コンパクトSUV「ロッキー」や、トールワゴン型コンパクトカーの「トール」など、実用性に富んだ小型車もラインナップしています。
スタイリッシュなセダンがほぼ存在しない日本市場で、小型車の新しい可能性を切り開くためにも、発売を熱望したい一台と言えます。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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