動物が交通事故で命を落とす「ロードキル」多発! 国道で約7万件、高速道路では約5万件が発生 動物との事故が起きたらどうするべき?
最近は熊や鹿、イノシシなどの動物が山から下りてきて、市街地に現れるケースも増えています。これにより動物が交通事故で命を落とす「ロードキル」も発生していますが、もし野生動物や犬、猫などとの事故を起こしてしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
動物別ではタヌキや犬、猫など中型動物との事故が多い傾向に!
近年、熊や鹿、イノシシといった野生動物が山の方から下りてきて、市街地で目撃される機会が増えています。これにより、動物が道路上でクルマやバイクにひかれて命を落とす「ロードキル」も多く発生しています。
動物との事故を起こしてしまった場合、一体どうしたら良いのでしょうか。

国土交通省が公表したデータによると、2022年度におけるロードキルの発生件数は直轄国道で約7万件、高速道路で約5万1000件でした。動物の内訳は、直轄国道で犬、猫が29%と最も多く、タヌキが28%、鳥類が11%、鹿が8%、キツネが3%などと続きます。
また高速道路においては、タヌキ、キツネ、犬、猫といった中型動物がロードキル全体の52%を占め、鳥類などの小型動物が42%、鹿、熊、イノシシなどの大型動物が5%という結果でした。
このデータを踏まえると、国道と高速道路のいずれも、犬や猫、タヌキといった中型動物との接触事故が多く発生している状況があるといえるでしょう。
では、もしクルマを運転中、動物に遭遇し接触事故を起こしてしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
事故を起こすと気が動転してしまうかもしれませんが、まずは落ち着いてクルマを路肩など安全な場所に停めることが大切です。
そしてハザードランプを点灯させたり、可能ならばクルマの後方に三角表示板を設置したりして後続車に事故を知らせ、二次被害を防止しましょう。
その後、事故があったことを警察に通報します。たとえ相手が野生動物であっても、衝突すれば物損事故扱いとなるうえ、クルマの修理などで任意保険を使う場合は警察の「交通事故証明書」が必要となることから、必ず警察に知らせるようにしましょう。
次に動物の状態を確認し、死んでいた場合は感染症や安全の観点から素手で触れないようにして、通行の妨げにならないよう道路の端に移動させます。
ただし高速道路の場合は道路上に出ると危険であるため、ガードレールの外など安全な場所に移動したうえで、道路管理者や道路緊急ダイヤル(#9910)に通報しましょう。
なお、死んだ動物については道路管理者や自治体が回収して処理します。
また一般道路の事故で動物が生きている場合は、市役所や保健所、動物病院、保護施設などに連絡して、指示を仰ぐようにしましょう。
上記が基本的な対応ですが、仮に熊や鹿、イノシシといった大型動物と事故を起こし、その動物が生きている場合は、車外に出ると身に危険が及ぶおそれがあります。
そのような状況であればドアと窓を閉めて鍵をかけ、車外に出ないようにして警察の指示に従うことが重要です。
そのほか大前提として、ドライバー自身が日頃から動物と接触事故を起こさないような運転を心がけることも求められます。
たとえば「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識が設置されている道路ではクルマのスピードを抑えたり、夜間であればハイビームを点灯して視認性を高めたりと、動物の急な飛び出しに注意しましょう。
現在、国土交通省ではロードキル対策のモデル地区として北海道、鹿児島県(奄美)、沖縄県を選定し、エゾシカ、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナなどに関する「ロードキルの発生・対策箇所マップ」を公開する取り組みを試行しています。このようなロードキル対策マップを活用し、運転に役立てることも肝要です。
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ロードキル防止に向けては、トンネル上部を樹林化して野生動物のテリトリーを保護したり、野生動物の道路への侵入防止柵を設置したりとハード面での対策も実施されています。
とはいえ、動物の道路への飛び出しを完全に防止できるわけではありません。特に大型動物との事故ではクルマが大破し大ケガをするおそれもあるため、ロードキルが頻発している場所や注意喚起の標識がある場所ではより慎重な運転を意識すべきでしょう。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。

















