トヨタが「AE86 2人乗り&MT仕様」を世界初公開、なぜ? 発売から40年目…水素&EVで華麗にドリフトするハチロクを展示した理由
AE86が水素車とBEVに大変身! 中身はどうなっている?
まずは「AE86 H2コンセプト」です。
開発は水素エンジンに知見を持つGRカンパニーが担当、ベース車のレストアと並行しながら水素エンジンへのコンバートを実施。
エンジンは1.6リッターDOHC16バルブの 「4A-GE」をベースにインジェクターやプラグ、燃料タンク&供給システムを水素エンジン用に変更。
この辺りはS耐に参戦する水素カローラと同じですが、最大の違いは燃料噴射の部分で、水素カローラは直噴ですがAE86 H2コンセプトの4A-GEはベースと同じポート噴射を採用しています。
実は筆者は2022年S耐の取材時にGRパワートレイン開発部の小川輝氏に「水素エンジンは直噴でなければ実現は難しいのでしょうか?」と質問をすると、「直噴だと水素エンジン最大の課題である異常燃焼を防ぎやすくなります。ただ、我々はポート噴射の開発も諦めてはいません」と意味深な発言をしていました。
筆者はこのときに「既存エンジンの水素コンバートも検討中なのかしら?」と勘ぐりましたが、その予想はズバリ的中。
ただ、こんなに現物を見ることができるとは、GRのアジャイルな動きには正直驚きしかありません。
MIRAI用を流用した燃料タンク(2本)はカーボン製のキャリアで覆われラゲッジルームのスペースに上手に収納されています。
ただし、水素タンクは法律で「車室外」に取り付ける必要があるためフロアの一部が加工されており、室内と燃料タンクは遮断されています。
水素の充填口はAE86の燃料給油口と同じ場所にレイアウト、給油蓋の裏には車載容器総括証票や「水素に限る」ステッカーやコーションが貼られています。
さらにリアハッチの裏には車載容器一覧証票、リアウィンドウ右下には燃料の種類を示すステッカー(水素)が貼られるなど、細部までこだわっていました。
ちなみに水素エンジンへのコンバートによる重量増は+55kgで、車両重量は1トンを切る995kgに抑えられた。開発コンセプトの一つ「AE86の軽さを活かす」はかなり高レベルで実現できたといえるでしょう。
続いて「AE86 BEVコンセプト」です。
開発はコーポレートで電動化をけん引するレクサスインターナショナルが担当、H2コンセプトと同じくベース車のレストアと並行しながら電気自動車へのコンバートを実施。
パワートレインはベース車の4A-GEからモーターに変更されています。
ちなみに搭載するにあたりマウント類の加工をおこなっていますが、それ以外はノーマルから変更はないそうです。
モーターはタンドラi-FOURCE(1モーターのパラレルハイブリッド)を流用した物です。
モーター単体での出力は未公表ですが、ガソリン車とi-FORCE MAXの出力差を比べると49ps/140Nm。制御はAE86専用なので、実際の出力はもう少し高いのではないかと推測しています。
さらに驚きなのは6速MT(GR86用を流用)を組み合わせていることでしょう。
一般的に電気自動車にはトランスミッションは不要ですが、あえて装着しています。
これは電動化しても「コモディディにしない」という挑戦のひとつだといいます。
ちなみにエンストはしませんが、通常のMTと同じようにクラッチ操作をしないとシフトは入らないそうです。
バッテリーは先代プリウスPHV用のリチウムイオンで容量は8.8kWhで航続距離は30kmから50kmの間でしょう。
とはいえ、AE86のコンパクトな車体に搭載するとリアシートとラゲッジを覆うサイズ。
そのため、リアシートは取り外され2シーター仕様となっています。
ちなみにレビンBEVコンセプトのみロールバーが装着されています。
筆者は見た際「バッテリー搭載の重量増をカバーする補強なのか?」と勘ぐりましたが、開発者に聞くと「とくにそういうわけではなく、ベース車に装着されていたので、そのまま活かしました」とのことで、その緩さも面白い所です。
原理主義者は「そんなバッテリー容量では使い物にならない」というでしょうが、開発陣は「AE86の良さである『軽さ』をできるだけ犠牲にすることなく電気自動車にするために、バッテリー容量は割り切っています」とキッパリ。
ちなみに重量増は+70kgで、車両重量は1トンを僅かに超えますが1030kgと電気自動車にしてはかなり軽量に仕上がっています。
ちなみに前後重量配分は51:49くらいとベース車よりも適正化されています。
充電は普通充電のみとなっていますが充電口はAE86の燃料給油口と同じ場所にレイアウトされています。
給油蓋の裏には「電気に限る」のステッカー、リアハッチの右下には燃料の種類を示すステッカー(電気)が貼られるなど、細部までこだわっています。
そもそもドリフトはスピン回復のテクニックであって、速さには関係しない。比較的新しい競技で子供のころはなかった。マナーの悪さが問題になっている。水素、evの新技術は否定しないが、わざわざ優れたガソリンエンジンを捨てるのはどうかと。修理部品を作るなど技術の引き継ぎや古典技術を楽しむ方が好きだ。