深刻化する整備士不足 制度見直しで変わる「クルマのお医者さん」の未来とは【PR】
自動車整備士の人材不足が深刻化し、社会問題となっています。本記事では2027年に本格施行される新制度を解説するとともに、「クルマのお医者さん」とも言われる整備士の「未来」について考えます。
【この記事のポイント】
- 自動車整備士の不足が深刻化している
- 自動車整備士の制度改正が行われる
- 整備士になるためのポイント
- 整備士の未来は?
深刻化する整備士不足――自動車業界が人材確保に本格始動
自動車整備士の人材不足は、社会問題としてたびたびメディアでも取り上げられるほど深刻化しています。
2014年度に34万2486人いた整備士は、2025年度には33万3475人となり、この10年ほどで約9000人(約2.6%)減少しています。
(引用:日本自動車整備振興会連合会「自動車特定整備事業実態調査」2025年度版 /2014年度版)
また、自動車整備士資格の受験者数も年々減少傾向にあります。2024年度は3万5504人と過去最低を記録し、ピークだった2004年度(7万2623人)からは約51%減少。20年の間に、資格取得を目指す人が半分以下になった計算です。

さらに、ハローワークの2024年度平均有効求人倍率が1.25倍であるのに対し、自動車整備士は5.45倍と、圧倒的に人材が不足している現状がわかります。
こうした状況を受けて、自動車業界では16の自動車関連団体が参加する「自動車整備人材確保・育成推進協議会」を設立。国土交通省と連携し、PR活動やインターンシップの推進、中高生への職業体験など、次世代人材の確保に向けた取り組みを進めています。また、各企業でも労働環境や待遇の改善を進めるなど、業界全体で人材不足の解消に向けた動きが加速しています。
クルマの進化とともに変わる、整備士という仕事
ここで、自動車整備士の仕事について、あらためて見てみましょう。
自動車整備士は、自動車の点検・整備・修理などを行う、いわば「クルマのお医者さん」のような仕事です。主な業務内容には、車検や定期点検、不具合箇所の修理、オイルやタイヤの交換、カーナビやドライブレコーダーなどの取り付け作業などが含まれます。
自動車整備士には、1級・2級・3級・特殊があり、いずれも国家資格を取得した人だけが整備士を名乗ることができます。また、特定整備などの作業は3級整備士でも行えますが、認証工場では2級以上の資格保持者が管理・確認を行うことが必須となります。

近年では、自動車技術の高度化・複雑化により、電子制御に関わる整備も増えています。それに伴い、整備士の仕事もスキャンツールと呼ばれる外部故障診断装置を使った点検など、従来の整備とは異なる新しい形へと変化しています。
しかし、どんなにクルマが進化しても、点検・整備・修理の必要性がなくなることはありません。整備士には、これまで培われてきた分解整備の技術とともに、電子制御などの新しいシステムへの理解と対応力が求められています。
今、自動車業界はまさに転換期を迎えており、整備士の役割だけでなく、働く環境そのものも大きく変わろうとしています。
新制度のもとで、整備士を目指すには? 学び方とポイントを解説
自動車整備士制度が新しく!2027年施行の主な変更点まとめ
自動車整備士資格制度の見直しが行われ、2027年1月から新制度が施行されます(一部はすでに施行済み)。今回の制度改正は、自動車技術の高度化や整備士不足といった課題に対応するためのもので、これから整備士を目指す人にとってはより学びやすく、受験しやすい制度へと変わります。
制度の見直し内容は多岐にわたりますが、この記事ではこれから整備士を目指す人が知っておきたいポイントにしぼってお伝えします。どのような点が変更されたのか、順に見ていきましょう。

【資格について】
資格の区分を変更。「総合」「二輪」の2種類に
・今まで1級は「大型」「小型」「二輪」、2級・3級は「ジーゼル」「ガソリン」「シャシ」「二輪」と分かれていましたが、施行後は「総合」「二輪」と区分は2種類になります。
電子制御の追加
・今までは1級整備士にのみ電子制御の知識と技能が求められていましたが、新制度では2級整備士および特殊整備士(自動車電気装置整備士・自動車車体整備士)にも、電子制御の知識と技能が必要になります。なお、1級整備士・2級整備士の指示で整備を行う3級と、電子制御装置に関する整備が伴わない自動車タイヤ整備士は電子制御の知識と技能は求めません。
新たな自動車整備士の役割
・1級整備士・2級整備士は、整備主任者や自動車検査員の役割を担うことができます。※現行の制度では、1級・2級を問わず整備主任者としての実務経験を積み、自動車検査員教習を修了することで、自動車検査員になることが可能です。現状では1級と2級に明確な差はありませんが、自動車整備士の魅力向上や社会的地位の向上の観点から、自動車検査員を1級整備士に限定する案も検討されました。
しかし、自動車検査員資格を取得するまでの期間が長くなるなどの懸念があったため、今回の制度改正では見送られ、現行どおり1級・2級どちらの整備士も自動車検査員として選任できることになっています。なお、この件については今後も引き続き検討が行われる予定です。

【試験について】
1級の口述試験廃止
・1級試験の口述試験が廃止され、ユーザーとの対話スキルを確認する内容が実技試験に加わります。
実務経験の短縮
・実務を始めた年度の末に試験を受けられるようになります。(例:3級のケースでは4月に実務を始めた場合、翌年3月の試験を受験可能)
・2級、3級、特殊の自動車整備士資格を取得するために必要な実務経験期間を短縮。3級自動車整備士1年→6カ月、2級自動車整備士3年→2年、特殊自動車整備士2年→1年4カ月(事業規制見直しによる変更 2025年7月8日施行済み)
(引用:自動車整備の事業規制について)
受験資格で必要な実務経験に関する変更
・電気・電子系学科卒業者は、機械系学科卒業者と同様に必要な実務経験を短縮できます。(2022年5月25日施行済み)
実務経験として認められる整備作業
・電子制御装置の整備作業は、自動車電気装置整備士の受験資格にかかわる実務経験に認められていますが、新制度では自動車電気・電子制御装置整備士と自動車車体・電子制御装置整備士の実務経験として認められます。
試験範囲
・新制度では区分が「総合」「二輪」に変更となるため、1級・2級・3級の「総合」はすべての種類の自動車が対象となります。特殊の自動車整備士のうち、自動車電気・電子制御装置整備士および自動車車体・電子制御装置整備士は、自動車の装置の種類に電子制御装置が追加されます。なお、学科・実技試験の科目は、現行の科目でも電子制御装置に関わる内容を加えることができるため、科目の変更はありません。
(引用:自動車整備士資格制度等の見直しについて)
整備士になるには? 学び方と進路の選び方を紹介
自動車整備士を目指すには、働きながら実務経験を積んで資格取得を目指す「独学コース」と、専門学校などの養成施設で体系的に学ぶ「通学コース」の2つの道があります。

どちらにもメリット・デメリットがあり、自分に合った学び方を選ぶことが大切です。ただし、近年は自動車技術の電子化・高度化が進み、独学だけで対応するには難しい面も増えてきました。
また、制度改正で実務経験の期間が短縮されたとはいえ、未経験から1級整備士を目指す場合には、最短でも実務経験が5年6カ月必要になります。
一方で、専門学校などの養成施設では、卒業と同時に受験資格を得られるほか、受験時の実技試験が免除されるというメリットがあります。さらに、就職支援やメーカーとのネットワーク、国家資格の高い合格率といった学校ならではの強みもあります。
特に自動車メーカー直営の学校では、最新の実習車や設備を使った実践的な学びができ、卒業後すぐに現場で活躍できる力を身につけることができます。夢が明確に決まっていて、最短で整備士を目指したい人には、こうした養成施設での学びは一つの有力な選択肢になるでしょう。
とはいえ、「学びたいけれど経済的に不安がある」という声も少なくありません。多くの学校では奨学金制度や、企業が学費をサポートする制度が用意されています。無理のない形で、自分に合った学び方を選ぶことが何より大切です。
整備士という仕事の本質は、これからも変わらない
自動車は社会を支える大切なインフラのひとつであり、今後も私たちの生活に欠かせない存在であり続けるでしょう。最近では「AIに奪われない仕事」という言葉を耳にしますが、自動車整備士はまさにその代表格です。
人とクルマ、そして社会の安全を守る仕事であるため、確かな知識と高い技能が求められます。

便利さが進むほど、それを支える仕組みは複雑になります。整備士になるには多くの学びが必要ですが、その過程で“一生ものの技術と知識”を身につけることができます。
今、自動車業界は大きな転換期を迎えており、新しい時代に対応できる整備士がこれまで以上に求められています。
時代が変わっても整備士の役割の重要性は変わることはありません。








