“手放し”走行OK!? ホンダの「先進安全“技術”」何がスゴイ? ホンダ新「アコード」に搭載される「Honda SENSING 360+」実際どう?

2025年5月、アコードの追加グレードとして「e:HEV Honda SENSING 360+」(以降360+(サンロクマルプラス))が設定されました。この新グレードは一体、これまでも用意されていたグレードとは何が違うのでしょうか。

手放し運転を実現! 実際どう?

 2025年5月、アコードの追加グレードとして「e:HEV Honda SENSING 360+」(以降360+(サンロクマルプラス))が設定されました。 

 従来からあるグレード「e:HEV」に対して約40万円の価格アップ(599万9400円)となるとなるこの新グレードは一体、これまでも用意されていたグレードとは何が違うのでしょうか。

ホンダの最新技術何がスゴイ?
ホンダの最新技術何がスゴイ?

 もっとも大きなポイントは、高速道路において「手放し運転」ができること。「ハンズオフ機能」によりハンドルを握って操作しなくても、クルマがハンドルを制御して車線の中央を走り続けてれくれるのです。

 もちろん、その際はACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=クルマが自ら前を走る車両との間隔を保って速度を調整してくれる機能)により、通常状態ではドライバーの速度調整操作も不要。ハンドル操作とブレーキ/アクセル操作から解放されるのです。一般的な感覚からいえば、これはもう“自動運転感覚”といっていいでしょう。

 正確にいえば“本当の自動運転”だとドライバーはすべての操作からは解放され、前方や周囲を見る必要もありません。だから運転中ながら、法的に認められた状態で堂々とスマホや映像コンテンツを見ることができます。

 しかし、アコードに新搭載されたハンズオフ機能は自動運転ではありません。あくまでも補助的なハンドル制御です。ですからドライバーは周囲の状況をしっかり注視し、必要があればハンドルを握って操作する必要があります。

 とはいえ、ハンドルから手を離し続けたままでも高速道路を走り続けるので、運転がリラックスしたものとなり、長時間運転時の疲労も軽減されるのが間違いありません。実際に運転してみるとその効果は本当に大きく、一度その世界を知ってしまうと正直なところ今までのクルマ(ハンズオフ機能非搭載)には戻れなくなってしまうので気を付けましょう。

さて、実際の使い方を紹介します。もしかすると「さぞかし使うのが難しい」なんて予想する人もいるかもしれませんが、そんなことはなくて、むしろ逆。操作はシンプルで、筆者の印象は「こんなに簡単!?」というものです。実質的に、ハンドルについているボタンを1回押すだけでいいのですから。たった1回ですよ。

使う際は、まずシステムのメインスイッチをオンにします。この時点で、新たな変化がありました。

これまでこのメインスイッチはACC機能を使うたびに「ON」にしなければなかったのですが、なんとアコードのホンダセンシング360+装着車ではメモリー式へと進化。

 いちどオンにしておけば、次にエンジンを掛けなおした(ハイブリッドシステムを起動した)ときもその状態に復帰するようになったのです。

 これは朗報に他なりません。これまではACCを使おうとするたびにシステムをオンにする必要があったのですが、その手間が省け、よりシンプルにACCが使えるようになったのですから。

 高速道路に入り、巡航したい車速になったらハンドルにある車速設定ボタンを押すことでシステムが作動開始。まず、ACCと車線を走るようにハンドルを“アシスト”するレーンセンタリング機能(車線維持支援システム)が働き始めます。

この状態だとまだハンドルから手を離すことはできませんが、足の操作(アクセル/ブレーキによる速度調整)からはすでに解放されています。

 少し(状況にもよるがだいたい800mほど)そのままの走行を続けてシステムが道路の状況を読み取り、ハンドルから手放しできる状態を確認できればハンドルにある青いランプが光ります。それが「ハンドルから手を離してもOK!」のサイン。ハンドルから手を離しての走行ができるのです。

 流れはたったのそれだけ。操作感としては一般的なACCと寸分違わないどころか、ACCの作動開始までに「メインスイッチON」と「車速設定」の2つの操作が必要な一般的な国産車(ワンボタンで作動するトヨタ/レクサスやスズキの新型車以外)よりはるかに簡単に扱えるのです。誰でも使いやすい、そのイージーさに感動しました。

●上手なドライバーが運転しているかのような制御 

手放しでも安心して任せられる制御を実現
手放しでも安心して任せられる制御を実現

作動はとにかくスムーズ。ハンズオフ時でもハンドルの動きにギクシャクがないから、安心して手を離すことができます。

またACC機能としては、前の車が減速した時はもちろん、前に他のクルマが車線変更してきた際などもスムーズに減速するからまるで上手なドライバーが運転しているかのようです。その自然さは他メーカーと比べてもトップレベルと判断できるもの。

 こういった機能はいかにギクシャクせず、スムーズに上手なドライバーが運転しているかのように制御するかが安心して使えるかの肝。ハンドル操作を任せたはいいけど不安な動きだと「自分でやったほうがずっとはやいわ!」になってしまいますからね。

 そういう意味で360+のハンズオフは、大いに合格と判断できるもの。安心して運転を任せ、運転時の疲れを減らしてくれるのです。もう、長時間ドライブも苦になりません(あえて言えば平和過ぎて「眠気」との戦いになっちゃうかも……)。

 機能面ではハンズオフのほかにも、前方に遅いクルマがいると車線変更を提案し、その際はハンドルのボタンを押すことでクルマが自ら車線変更する機能(車線変更中はハンドルに手を添える必要がある)や道路の曲り方に応じてクルマが自ら速度を落とす機能も搭載。

 車速制御機能自体は他メーカーも採用していますが、一般的には安全マージンを持ってドライバーの感覚よりも速度を落としすぎてしまうのが正直な印象。しかし360+では“適度な減速”に留め、違和感をもたらさなかったことに驚きました。

 ちなみに作動上限速度は日本の高速道路の制限速度である120キロまでで、「運転の主体はあくまでドライバー」という考え方から速度設定自体は走っている道路の制限速度に関係なくおこなえます(同じようにハンズオフ機能を用意するトヨタもホンダと同様の考えですが、日産は“制限速度+10キロまで”と考え方が異なるのが面白いところ)。

 システムの作動にあたっては、車線の幅や曲がる曲率から白線の状況まで道路を詳細にデータ化した高精細地図を活用(日産やトヨタの全車速域ハンズオフ機能も同様)。車両価格が上がっているのは、それに加えてレーダーやカメラなどもアップグレードされているのが反映されているからです。ちなみにドライバー異常検知機能として、運転操作がなくなると車両を停止させるシステムも追加されています。

 作動範囲に関しては他の多くのシステムと違い「トンネルの中でも機能する」というのがアドバンテージのひとつですが、曲率が大きく右車線と左車線の間に柱も存在する首都高速道路の都心環状線はハンズオフ機能が動作しないそうです(これも他車と同様)。また工事などで連続したパイロンや人を検知すると、ハンズオフが解除されるという安全機能も組み込まれています。

 筆者はテストドライブが好天に恵まれたので確認することができませんでしたが、「霧を除けば悪天候にも強い」というのも自慢とエンジニアは教えてくれました。

 ちなみに全車速域のハンズオフ機能はこのアコードだけでなく、トヨタ「MIRAI」やレクサス「LS」、そして日産「セレナ」などに装着車が用意されています。また、すでに販売は終了しましたが日産「スカイライン」やホンダ「レジェンド」にも装着車がありました(レジェンドは高速渋滞時の自動運転まで世界で初めて実現!)。

 高速道路を使って遠出することが多いなら、このアコードホンダセンシング360+をはじめハンドルから手を離して運転できるハンズオフ機能装着車を選ぶと、信じられないほど運転が楽になります。問題は価格が高いことなので、よりリーズナブルなクラスのクルマにも搭載する日が1日も早く来るのを祈るばかりです。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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