「ETC 2.0」で高速代が安くなる! なのにナゼ普及しない? 「普通のETC」より“良いこと”たくさんあるのに… 一部の人にしかメリットがない現状とは?
高速道路を利用する多くのドライバーが「ETC」を利用していますが、次世代サービスの「ETC 2.0」で利用する人はそれほど多くありません。一体なぜ普及しないのでしょうか。
「普通のETC」より“良いこと”たくさんあるのに…
ETCの次世代バージョンである「ETC2.0」を利用すると、さまざまなメリットが得られます。
しかし、利用率は従来のETCと比べてそこまで高くありません。一体なぜなのでしょうか。

ETCは無線通信技術を使って自動的に有料道路の通行料金を支払うシステムで、高速道路を通行する際に多くの人が利用しています。
2015年からはETCの次世代バージョンである「ETC2.0」の導入が開始されました。
ETC2.0は、従来のETCと比べて大量の情報の送受信が可能となっており、それによって車両の位置情報や経路情報などを収集し、ドライバーの運転支援に役立てています。
具体的にはドライバーに渋滞や交通規制などを回避するルートを提示したり、カーブやトンネルの先の渋滞、事故、天候の急変といったドライバーから見えない情報を提供したりしています。
高速道路では走行車両が渋滞末尾の車両に追突する事故も少なくありませんが、ETC2.0のサポートにより、事故を未然に防止できる確率が上がると考えられています。
さらにETC2.0を搭載した車両が都心部の渋滞を回避するため迂回ルートを選択すると、その通行料金が約2割引されるサービスもおこなわれています。これは東京都や愛知県などの大都市圏で実施されており、都心部の渋滞緩和に一定の効果を発揮しています。
また一部のIC(インターチェンジ)においては、ETC2.0を搭載した車両が高速道路から一時退出し、指定の「道の駅」に立ち寄った上で2時間以内に同一方向へ再進入すれば、追加料金なしで通行できるというサービスもあります。
通常は高速道路を一時退出し、再び高速道路に入り直すと「初乗り料金」がかかりますが、上記のサービスではこの料金が加算されません。
これは高速道路で運転するドライバーが、トイレや食事など適切な休憩をとれるように実施されている社会実験で、現在は全国28か所の道の駅が対象です。なお、今後も対象となるIC・道の駅は増えていくものとみられます。
そしてETC2.0はその機能の高さから、大型トラックの運行管理やトラックドライバーの運転改善のほか、ドライバーの運転日報のデジタル化など、物流企業の経営効率化にも活用されています。
そのほかにも災害発生時、被災地の道路の通行可否情報が分かる「通れるマップ」を提供し、救急・救援車両の通行をサポートするといったサービスもおこなっています。
このようにさまざまな機能やメリットがあるETC2.0ですが、実は従来のETCと比べて利用があまり広まっていません。
国土交通省によると、2025年3月の全国の高速道路におけるETC利用台数は1日あたり約841万台、ETC利用率は95.3%と非常に高い状況ですが、その一方で、ETC2.0の利用台数は1日あたり約322万台、利用率は36.6%。従来のETCと比較して低調な利用状況であることがうかがえます。
その大きな理由として指摘されているのは、「多くの一般的なドライバーにとって恩恵を感じにくい」という点です。
大都市圏で実施されている通行料金の割引は、それ以外の地域のドライバーにはあまり関係がなく、一時退出・再進入の社会実験についても、利用できる道の駅が少ない状況にあります。
また基本的にETC2.0サービスを利用するためには、ETC2.0に対応した車載器が必要で、さらに機能をフル活用するには、対応するカーナビゲーションなども必要となり、すでに従来のETC車載器を車両に搭載している人は買い換えなければなりません。
ETC2.0の車載器は従来のETC車載器よりも価格が高い傾向にあるほか、取り外し・取り付けに別途工賃が発生するケースもあり、ETC本体が故障したりしなければ、積極的に買い換えをおこなう人は少ないといえるでしょう。
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ETC2.0は高速道路でのスムーズな運転や事故防止のほか、物流企業での経営効率化など、あらゆる面でメリットがあります。
今後、通行料金の割引エリアが広がったり新たな機能が追加されたりと、一般ドライバーにとってより恩恵を享受しやすい取組みがおこなわれるのか、その動向が注目されます。
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