新井大輝組が逆転勝利、奴田原文雄組は惜しくも3位!全日本ラリーRd.4「ラリー丹後」は山火事の影響で波乱の展開に!

全日本ラリー選手権第4戦「ラリー丹後」が2024年5月10日〜12日にかけて京都府京丹後市を拠点に開催されました。一時、ステージ脇で山火事が発生するなど波乱の展開となった本ラリーをリポートします。

ラリー丹後は2ハイスピード区間とテクニカルな区間が混在するターマック

 全日本ラリー第4戦YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg(ラリー丹後)が2024年5月10日〜12日にかけて京都府京丹後市を拠点に開催されました。一時、ステージ脇で山火事が発生するなど波乱の展開となった本ラリーをリポートします。

奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2
奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2

 第2戦唐津から2週間で第3戦久万高原、そこからさらに2週間で京丹後と厳しい日程が続いてきた3連戦もようやくここでひと段落です。全8戦のシリーズはこのラリーで早くもシーズン折り返しとなります。ラリー丹後は2車線のハイスピード区間と狭いテクニカルな区間が混在するターマックラリーで、下り区間も多く、ブレーキやタイヤに厳しいラリーとも言えます。

 ステージからは日本三景のひとつ、天橋立(あまのはしだて)を望める場所もありますが、選手たちにはそんな景色を楽しむ余裕はありません。

 サービスパークが設置された地域は、元は峰山町(みねやまちょう)だった場所です。丹後ちりめん発祥の地で、江戸時代には峰山藩がこれを保護、奨励したことで発展した地域です。市内にある峰山高校は名捕手、名監督として知られた野村克也さんやWWEで活躍するプロレスラー、中邑真輔選手の出身校で、サービスパーク近くにある、筆者(山本佳吾)のお気に入りの定食屋さんは野村監督の行きつけのお店だったとか。

 ラリーの観戦は観光と組み合わせるのがおすすめと以前にも書きましたが、開催される地域のことや名物を事前に調べておくと、今まで知らなかったことや、思いがけない事実を知って役に立つこともあるので、皆さんにもおすすめします。

なんとステージ脇で山火事が発生! 大波乱となったLeg1は奴田原・東組がトップタイム

 さて、競技の方に話を戻しましょう。SS1でトップタイムを記録したのは、前戦久万高原では早々にリタイアした奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2でした。

全日本ラリー選手権第4戦「ラリー丹後」を走行する奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2
全日本ラリー選手権第4戦「ラリー丹後」を走行する奴田原文雄・東駿吾組のGRヤリスRally2

 その奴田原・東組を0.5秒差で追うのが、こちらも久万高原ではSS1スタートにおいてマシントラブルでラリーを離脱した新井大輝・松尾俊亮組のシュコダ・ファビアR5です。

 続くSS2では新井・松尾組が奴田原・東組を1秒上回り逆転します。奴田原・東組もここにきてGRヤリスRally2に慣れてきたようで、コース脇から見ていても明らかにスピードが違っていました。

 そしてこのラリー最大の事件が起こってしまったのがSS3です。爽やかな高原地帯を通過するステージでギャラリーポイントも設定され、朝から多くのギャラリーが詰めかけたステージでしたが、なんとステージ脇で山火事が発生してしまいました。発見したクルーが停車しすぐに消火活動を始めますが、車載の消火器では歯が立たずステージは中断し、以降の選手には一律のノーショナルタイム(SSが中断された場合に、走行できなかった出場者に与えられるタイム)が与えられました。

 山火事は駆けつけた消防車によって鎮火し大きな被害はありませんでしたが、警察による現場検証が行われることになり、Leg2に同じ林道を逆向きに走行するSS6とSS7がキャンセルされることになってしまいました。大波乱となったLeg1ですが、奴田原・東組と新井・松尾組の僅差のバトルは続き、Leg1最後のSS4は奴田原・東組がトップタイム、わずか0.1秒差で新井・松尾組が続き、Leg1を首位で折り返しました。

どこにどう溝を入れるか経験が試されるタイヤのハンドカット

 山火事の影響でSS2本がキャンセルとなり、4.84kmのショートステージ2本だけとなったLeg2は、前日の晴天とは打って変わって今にも雨が降り出しそうな曇り空です。選手たちにとってはタイヤ選択に悩みそうな展開です。

 SS5が始まる直前にポツポツと雨が降り出すも、路面を湿らすまでには至らずで、この状況ならドライタイヤを選択する選手が多そうです。仮ナンバーでFIA規定のタイヤを使用するJN-1クラスは、タイヤのハンドカットが許されています。レインタイヤを使うほどではない雨量の時などに、ドライ用のタイヤに溝を増やすことで対応しますが、どこにどう溝を入れるかなどにはノウハウがあるようで、ここでも経験が役に立つようです。

仮ナンバーでFIA規定のタイヤを使用するJN-1クラスは、タイヤのハンドカットが許されている
仮ナンバーでFIA規定のタイヤを使用するJN-1クラスは、タイヤのハンドカットが許されている

 SS5を制したのは新井・松尾組でした。2位にはLeg1を総合3位で折り返した勝田範彦・木村裕介組のGRヤリスRally2が入りました。

 SS5終了時点で総合首位の新井・松尾組と総合2位の奴田原・東組は9.3秒差で、4.84kmのステージを1本残してこの差はほぼ勝負あった感もあります。2位の奴田原・東組に肉薄するのが勝田・木村組でその差はわずか0.3秒です。最終ステージを前にして総合2位争いが面白くなってきました。

 そして最終ステージSS8も新井・松尾組が制してうれしい今シーズン2勝目です。2位争いは勝田・木村組が奴田原・東組を0.9秒上回ってフィニッシュし、見事な逆転劇で総合2位となりました。奴田原・東組は最後の最後に逆転されるも、今シーズン初表彰台を獲得しました。

 総合優勝の新井・松尾組のファビアR5はこの日、レインタイヤで出走していました。SS5ではほぼドライだった路面も、SS8では本降りの雨となり、バクチとも言えるタイヤ選択が功を奏した形となりました。

「タイトルを取るにはフルポイントを狙うしかない」と語る新井選手は、体制的にハンディを抱えるプライベーターです。「奇策は、8割以上の勝算があって初めて仕掛けるもんや」とつぶやいたのは、暗黒時代の阪神タイガースを率いることになった野村監督でした。

 グラベル2戦を含めた残り4戦をプライベーターチームがワークスチームに立ち向かうには野村流の「弱者の兵法」が必要になるかも知れません。

JN-6クラスでは、清水和夫・山本磨美組のヤリスハイブリッドが優勝

 1800CC以下のハイブリッド車両や電気自動車で争われるのがJN-6クラスです。アクアやヤリスハイブリッド、CR-Zなどが主な参戦車両です。

 昨年度のチャンピオンである天野智之・井上裕紀子組は、過去にさまざまなクラスでチャンピオンを獲得してきたベテランコンビです。2023年のJN-6チャンピオンでもある天野・井上組を打倒せんと各選手が挑む形になっているのがJN-6クラスです。

JN-6クラスで優勝した清水和夫・山本磨美組
JN-6クラスで優勝した清水和夫・山本磨美組

 このラリーで天野・井上組と接戦を繰り広げたのが清水和夫・山本磨美組のヤリスハイブリッドです。

 清水選手の本業はモータージャーナリスト。しかし、若かりし頃はラリーに明け暮れ、スバルのワークスドライバーとして活躍していました。その後はレースに参戦していた時期もありましたが、2019年に全日本ラリーに復帰しました。

 Leg1から天野・井上組とのシーソーゲームを繰り広げた清水・山本組は最終的に天野・井上組と4.4秒差でクラス優勝を飾りました。清水選手の全日本ラリーでの優勝は、レオーネで参戦した1983年2月に開催されたDCCSウインターラリー以来、なんと41年ぶりのことでした。

 試乗会などで清水選手(あえて先生じゃなく!)と会うと、いつも楽しそうにラリーの話をしてくれて、ほんとにラリーが好きなんだなあと、いつも思っていました。親子ほどの年の差がある選手たちが本気で競えるのもラリーの魅力のひとつだと思います。

 第5戦は、2024年6月7日から9日にかけて、群馬県で開催される「MONTRE 2024」です。かつて、“ラリー銀座”と呼ばれ、「群スペ」と称される名選手たちを産み出した群馬県は、今でもラリーが盛んな地域です。

 今回は碓氷峠の旧道をステージに使用するなど、早くも話題になっているラリーです。首都圏からも近く観戦しやすい地域なので、ぜひ足を運んでみてください。

[Text/Photo:山本佳吾]

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