「ドリフト走行禁止」が今後明文化される? 「過失」ではなく「危険運転」に認定の動き 過去にはドリフトによる人身事故も発生 「自動車運転処罰法」改正でどうなるのか

「ドリフト走行」が自動車運転処罰法における「危険運転」の要件に追加される見通しです。ドリフト走行については、これまで直接的に危険運転の処罰対象とする規定がなく、刑罰に差が生じる、適用されづらいなどといった課題がありました。背景や具体的な内容について解説します。

ネット上では「規定を作るまでもなく重大な危険運転」「立証が難しいと思うのでしっかりと法整備を」などの声

 自動車運転処罰法の「危険運転」の要件に“ドリフト走行”が追加される見通しとなりました。

 これまではドリフト走行を直接的に処罰対象とする規定はありませんでしたが、今後、改正法の骨格案が示される見込みです。

道路に刻まれたドリフト走行の跡(画像はイメージ/PhotoAC)
道路に刻まれたドリフト走行の跡(画像はイメージ/PhotoAC)

 自動車運転処罰法には正常な運転が難しいほどの飲酒運転や、制御困難な高速度での運転など、いわゆる「危険運転」に当たる行為の類型が規定されています。

 このような行為によって人を死傷させた場合は危険運転致死傷罪に当たり、相手が死亡した場合は1年以上20年以下の拘禁刑、負傷した場合は15年以下の拘禁刑という罰則が科されます(一部の行為は死亡で15年以下、負傷で12年以下の拘禁刑)。

 その一方、運転中に必要な注意を怠って人を死傷させた場合は過失運転致死傷罪に該当し、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。

 つまりドライバーの運転行為が危険運転に当たるのか、過失運転に当たるのかで刑罰に大きな差が出るといえるでしょう。

 これまでは高速度の運転に関して、ドライバーが一般道路で時速100kmを超える猛スピードで運転し、他のクルマに衝突するなどして人を死傷させたケースで、危険運転致死傷罪ではなく過失運転致死傷罪が適用されるケースもみられました。

 そのため危険運転致死傷罪の要件の見直しを検討する法制審議会では、進行を制御することが困難な高速度について、「最高速度の2倍や1.5倍」といったように危険性が認められる一定の数値基準を設けることを検討しています。

 また上記に加え、「ドリフト走行」が原因となる死傷事故の処罰についても課題が指摘されてきました。

 これに関しては2013年9月、京都府八幡市の交差点において当時18歳の少年が運転するクルマがドリフト走行をしたうえ暴走し、ガードレールに衝突。反動によって反対側の歩道に突っ込み、集団登校中だった児童5人に重軽傷を負わせるという事故が発生しています。

 実は自動車運転処罰法にはドリフト走行を危険運転として直接的に処罰する規定はなく、この事故について検察は危険運転の要件の一つである「制御困難な高速度での運転」に当たると主張していました。

 しかし2014年10月におこなわれた判決では、少年の運転について「時速40km以上は出ていなかった」などとして過失運転致傷罪を適用し、懲役1年6か月以上2年6か月以下の不定期刑となりました。

 さらにドリフト走行が関連する他の死傷事故でも危険運転が適用されにくい状況がありました。

 これを受けて法務省の法制審議会は、危険運転の新たな類型の一つとして曲芸的な走行行為(ドリフト走行)についての規定を創設することを検討し、このたび追加される見通しとなりました。

 具体的には、タイヤを滑らせたり浮かせたりすることで、自動車の制御機能を安定的に発揮できないような状態にして走行する行為が危険運転に当たります。なお、今後法制審議会の部会に改正法の骨格案が示されるということです。

※ ※ ※

 ドリフト走行が危険運転に追加されることに対し、インターネット上では、「わざわざ規定を作るまでもなく重大な危険運転なのですから、法の運用面でどんどん取り締まるべき」「事故を起こしたときにドリフト状態だったかの立証は難しいと思うのでしっかり法整備をしてほしい」などの意見が聞かれました。

 また、凍結・積雪した道路を走行中にタイヤがスリップして横滑りしてしまうケースや、公道でないサーキット場でドリフト走行をおこなうケースなどが危険運転に該当しないよう、「処罰対象を悪質性の高い運転行為のみに限定する必要がある」との指摘も上がっています。

 今後どのような改正案が出されるのか、その動向に注目が集まっています。

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Writer: 元警察官はる

2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。

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