スバルのスポーツセダン「WRX」にMT仕様が存在!? 楽しい走りは健在だった! 本格スポーツ「WRX STI」とどう違う?
スバルのスポーツセダン「WRX」の米国仕様には、日本仕様に設定がないMT車が用意されています。そこで、左ハンドルのWRX MT車に米国で試乗してみました。
現行「WRX」にMT車があった!?
米国スバルから「2024年モデルのWRXは、MT車にもアイサイトを装備する」というニュースが発表され、驚いた日本のユーザーも多いことでしょう。
日本向けのスバル「WRX S4」には、「スバルパフォーマンストランスミッション」と呼ばれるCVTの設定しかないのですが、海外向けにはMT車が存在するのです。
筆者(工藤貴宏)は先日、そんなWRXのMT車にアメリカで試乗してきました。
米国仕様のWRXのスタイリングは基本的に日本仕様と同様で、リアワイパーの設定がないことと、トランクリッドのエンブレムが異なる程度です。
一方で、インテリアには大きな違いがありました。
ハンドル位置を現地の事情に合わせて左側にしているだけでなく、MT車にはサイドレバー式のパーキングブレーキを組み合わせているのです(日本仕様のCVT車は電子制御式パーキングブレーキを採用)。
そのうえで、センターコンソールの形状自体が異なるのも意外でした。
シフトレバーの台座がCVT車より低く、またパーキングブレーキレバーとの兼ね合いもあり、ドリンクホルダーの配置はCVT車が左右に2本分を並べているのに対し、MT車は先代WRXと同様に前後に並べるなど環境に合わせて最適化されています。
シフトは6速で、節度感はしっかりあるが硬すぎない絶妙なフィーリング。引っかかりはなく、吸い込まれるようにギヤが入ります。
リバースは6速の脇にあり、シフトノブ下のリングを引き上げながら入れるスバルの一般的なタイプでした。
エンジンは排気量2.4リッターで275psを発生する、FA24型のターボエンジン。つまり日本のWRX S4と同じです。
日本向けにもMT車を設定していた先代までは、MTに組み合わせていたのは2リッターターボのEJ20型でした。そこが、これまで日本で用意していたMT車と、現行モデルとして海外向けに用意しているMT車の大きな違いといえます。
大きな違いといえば、AWDシステムも先代のMT車とは異なるもの。
これまで(先代まで)の日本向けMT車は「DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)方式AWD」と呼ぶ、センターデフのロック率を電子制御で任意に変更して前後のトルク配分を切り替えられる凝った仕掛けを組み合わせていました。
しかし海外で展開している現行型のMT車は「ビスカスLSD付きセンターデフ方式AWD」という、先代「フォレスター」のMT車などに積んでいた方式を採用。これは電子制御を持たずセンターデフで前後トルク配分をパッシブに変化させるシンプルなタイプです。
メカニズムをまとめると、日本市場で従来モデルまで展開していたMT車は「WRX STIとしてより出力の高いエンジンと凝ったAWDシステムを搭載した究極の仕様」だったのに対し、海外向けに用意する現行モデルのMT車は「WRX S4のトランスミッションをCVTからMTに置き換えたもの」といって良いでしょう。
競技での使用を視野に入れ、極限の走行性能を磨き上げたWRX STIではないのです。
とはいえ、実際の走りは実に気持ちの良いものでした。速めのペースでワインディングを走るのであればパワーも十分だし、グイグイ曲がるハンドリングも「凝ったAWDシステムではない」というネガティブさを感じるどころか、「これだけ楽しければ文句なし!」と思える領域。
そのうえで、クラッチとシフトレバーを操作しながらエンジン回転を完全に支配下に置くMTならではのドライブはやっぱり楽しいもので、CVTよりも高くクルマとの一体感を感じられます。
たしかにFA型エンジンは低回転域からのトルクが太い特性で、EJエンジンのように高回転での盛り上がりが高いわけではありません。だからMT向きのエンジンではないと捉えられることもあります。
実際にEJエンジンほどのキレはないものの、乗ってみればMTでクルマに操る楽しさはしっかり詰まっていると感じました。
また、音も魅力。日本仕様よりも排気音が大きめで、エンジンを回すとボクサーサウンドがしっかり聞こえてくるのも気分を高めてくれました。これは日本よりも音量規制が緩やかな海外向けの排気系の影響と思われます。
案の定アメリカネタ
電動パーキングブレーキなんて要らんわ。レバーでワイヤー引っ張れば済むのに、無駄な金をかけよって。