「GRスープラ GT4」がめちゃ凄かった! 特別なマシンを体感! 感激する魅力はいかに【試乗】

「GRスープラ GT4」とベース車は「同じ思想」でつながっている

 GRスープラ GT4のエンジンは、ストレートエンドで時速250キロ前後と、量産車と比べて「凄く速い!!」と言う印象ではありません。

 しかし常用域のピックアップの良さやターボラグの少ない滑らかな特性、高回転までスッキリと回る伸び、そして澄んだサウンドなど、絶対性能を高めると官能性も上がることを実感しました。

サーキットで走ってみると、ベースの「GRスープラ」と同じ設計思想でつながっていることを実感できる!
サーキットで走ってみると、ベースの「GRスープラ」と同じ設計思想でつながっていることを実感できる!

 なお今回の走行のなかで、7速トランスミッションのシフトスピード、ダイレクト感、正確さなどに、ATであるネガを感じる事は全くなかったです。

 逆に、シフト時にギアが噛み合うようなノイズがしない事は、走行時のストレスフリーにつながる、と言う事にも気が付きました。

 実はビビッて走ったのは最初の1周のみで、その後は全開走行。といっても限界はまだまだ先ですが、ラップタイムは1分51秒から52秒くらいだったので、初めて乗って数周で、その性能の8割から8.5割は引き出せるくらいの「扱いやすさ」を持っている事が証明されたといえるのではないでしょうか。

 わずか5周の走行でしたが、正直な感想は「こんなんじゃ足りないよ!」でした。

 渋々ピットに戻ると、メカニックの方に「もっと乗りたかったですよね。無線でピットイン指示した際に、山本さんの『はーい、戻ります』のテンションがあまりに低くて笑えました」と。車内での“心の叫び”をすべて読まれていました。

 そろそろ結論に行きましょう。

 GRスープラ GT4は、レーシングカーながらも基本的な部分はもちろん、その走りもベース車のGRスープラと同じ思想で密接につながっています。

 逆にGRスープラは、レースマシンと同じポテンシャルを持つ、とも言い換えることができるでしょう。

 これまで筆者はGRスープラに対し、「GRヤリス」や「GR86」などと比べて量産車とモータースポーツとの関連性が薄いと感じていました。

 しかし今回GRスープラ GT4に乗って「実はモータースポーツの関係性は、他のモデルに決して負けていない」と大反省させられたのです。

 ちなみに2019年のニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したGRスープラのレーシングマシンは、のちのGRスープラ GT4の試作車でしたが、この時ステアリングを握ったモリゾウ選手は「GRスープラはそのどれよりも安心して走ることが可能で、最後の何周かはニュルを楽しむ事もできました」と語りました。

 当時、筆者は「GRスープラのポテンシャルは凄い!」と判断しましたが、今回自らGRスープラ GT4に乗ってみて、「あの時にモリゾウ選手が語ったコメントは、量産車とモータースポーツとの関係性も含まれていたんだ」と気付き、こちらの点も大反省した次第です。

 量産車のGRスープラユーザーは、ぜひ一度、GRスープラ GT4のステアリングを握ってほしいと考えます。

 間違いなく「自分のクルマと同じ!」と感じてもらえるとともに、自分の愛車が「こんな実力を持つ」と今まで以上に好きになるはずです。

 ですから開発陣の皆さん、是非ともGRスープラのユーザーにも体感できる機会を作ってあげてください。

 そんなGRスープラ GT4は、2020年3月に発売を開始して以降、約3年で100台が生産されました。ちなみにれっきとした“量販モデル”なので、カタログもシッカリと用意されています。

 もちろん値段は決して安くはありませんが、「買ってそのままレース参戦可能」できることや、「メンテナンスやサービス対応」などを考えると、実はモータースポーツの敷居を下げる存在だと筆者は考えています。

 ちなみに購入を含めた問い合わせ先は、欧州地域がTGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH)、北米地域がTRD-USA、そして日本・アジア地域はTCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)がそれぞれ窓口になっています。気になる方は問い合わせてみると良いでしょう。

 レースへの参戦のためだけでなく、サーキット専用車として楽しんでいる人も多いそうです。

※ ※ ※

 ちなみに他のメーカーからも様々なGT4マシンが発売中ですが、GRスープラ GT4のシェアは全体の3位だといいます。

 これはビジネス的にも成功している証拠でもあります。さらにGRカンパニーの使命である「レースで培った技術やノウハウを量産モデルに活かしてビジネスを行なうというサイクル」が回り始めているモデルと言えるでしょう。

 そんなGRカンパニーの活動も今まであまり知られていなかったかもしれませんが、これを機にもっと知って欲しいと筆者は願っています。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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