マツダ3代目「ロードスター」は挑戦だった! NC型開発で重視した“マツダらしさ”とは
開発陣が語るNC型ロードスターのあるべき姿とは
デザイナーである中山雅氏は、NC開発中の2001年から2004年まで独・フランクフルトのデザインスタジオに勤務しており、欧州での生活のなかで「第一級のスポーツカーであるためには、それ相応の存在感を示す『オーラ』が、そのクルマのプロポーション自体から放たれていなければならないと悟った」といいます。
また、「NCは、クルマの大きさそのものは『大きく』なること、より性能の高いクルマになることも分かっていました。またシャシを見れば、それまでのロードスターよりも本格的な作りをしています。
インテリアについては、ドライビングポジションやトンネルの高さ、サイドシルの高さなどからも走りに傾注した作りがうかがえます」と分析したそうです。
実務としては「フランクフルトのデザインスタジオから、エクステリアとシャシの特長を活かしたシンプルさと小気味よさを表現したインテリアを本社に提案しました。
グローバル3拠点(日本、ドイツ、アメリカ)でのコンペの末、ドイツからのインテリア案が採用され、私はヨーロッパから本社に『逆出張』してデザイン作業をおこないました」と当時を振り返ります。
さらに「私にとってNCとは、『ロードスターのこれからはどうあるべきか?』を考え始めるスタートラインとなったクルマ」とし、このときから中山氏がNDチーフデザイナーへの道を歩み始めていたことがうかがえます。
一方、現在のND主査である齋藤茂樹氏は、筆者(桃田健史)からの「あたなにとってNCとは?」という問いかけに「挑戦」と表現しました。そのうえで、NC開発における体験を詳しく語ってくれました。
「NCの開発には、走り・燃費実研のチームリーダーとして参画しました。とにかくこだわったのがエンジンレスポンスです。エレキスロットルを採用し、より綿密なアクセルコントロールが可能となりましたが、従来のケーブル式と比べ、電気デバイスを通るためにタイムラグが発生します。
この対策のため設計部門やサプライヤーと一緒に取り組み、当時として世界一反応スピードの速いエレキスロットルを開発できました。
また、反応の遅れをエンジンだけで対応するのではなく、クルマとして捉え、エンジンマウント、プロペラシャフト、ドライブシャフトなどのねじれ剛性の最適化を図り、アクセルを踏んだらすぐにタイヤが回転するダイレクト感を向上させるため、最先端のシミュレーション技術にも取り組みました。
さらに、より楽しさを向上させるため、走る/曲がる/止まるという操作フィーリングを統一させる“統一感タスク”を立ち上げ、関連実研部門と一緒にクルマのチューニングの合わせ込みをおこなっています。
NCではさまざまな新しい取り組みに挑戦し、後につながるチャレンジ精神を養うことができたと思います」
※ ※ ※
時系列で見れば、NCがあってNDがあるのは、いま振り返れば当然のことですが、改めてNCという挑戦がロードスターの歴史のなかでいかに重要なのかを、歴代主査の皆さんのコメントから感じ取ることができました。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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