打倒ベンツ!? FF化したBMW新型「1シリーズ」にBMWらしさはあるか?
8年ぶりにフルモデルチェンジがおこなわれるBMWのコンパクトモデル「1シリーズ」。FRレイアウトからFFレイアウトへ変更されたことが大きな特徴となっていますが、いったいどんなクルマに仕上がっているのでしょうか。
FRからFFへ大変身! 新型1シリーズの実力は
今回、8年ぶりとなるフルモデルチェンジで第3世代となったBMWのコンパクトモデル「1シリーズ」。最大の特徴は、これまで採用してきたFRレイアウトに別れを告げて、このクラスの標準的な駆動方式であるFFレイアウトを採用したことです。
駆動方式が変わったことによって、新型1シリーズはどのようなクルマに進化したのでしょうか。
BMWは、2014年に発売した「2シリーズアクティブツアラー」で、同社初となるFFレイアウトのモデルをラインナップしました。さらに、2015年には3列シートの「2シリーズグランツアラー」を追加しました。
これは同じBMWグループのMINIブランドで使っているFFレイアウトのアーキテクチャを用いて作られたクルマでした。
今回の新型1シリーズは、この流れにあるといって良いでしょう。MINIが用いているFFレイアウトのアーキテクチャを、新型1シリーズも使ったということです。
新型1シリーズのボディサイズを見ると、全長4319mm×全幅1799mm×全高1434mmで、ホイールベースは2670mm(欧州値)となります。ホイールベースは2シリーズアクティブツアラーや、「ミニ クラブマン」および「ミニ クロスオーバー」と同じです。
デザイン的には、最新のBMW「3シリーズ」や「8シリーズ」などで展開される巨大なキドニーグリルが特徴的な新世代のものとなりました。
FFレイアウトを採用しつつも、フォルムは以前よりむしろスポーティになったといえます。同社のほかの新世代モデルと共通性を感じさせるテイストで、とくに外観は比較的エッヂを多用して筋肉質に見せるパワフルなデザインとなっています。
このあたりは、最近のトレンドでもあるキャラクターラインを削いでいく方向とは真逆の、濃厚な感覚といえるもので、人によってはうるさく感じる場合もあるでしょう。
内装は、3シリーズなどと共通する世界観で、10.25インチサイズのフル液晶メーターパネルと、その横に10.25インチのタッチスクリーン式コントロール・ディスプレイが組み合わされます。
そんな先進性とドライバーオリエンテッド感の強さを融合した、スポーティなBMWらしい内装となっています。
今回、1シリーズがFFレイアウトを採用した最大の理由は室内空間、とくに後席の足元スペースおよび荷室スペースの拡大です。
こう聞くと、寂しさを感じるBMWファンは多いかもしれません。しかし、このクラスでは上質な走りが実現できる一方で室内を犠牲にするFR駆動よりも、普段使いでの使い勝手の良さが優先されます。
ただ、その数値を見ていくと切ないものを感じるのも事実です。室内空間に関して、新型では後席の膝まわりのスペースは33mm、ヘッドルームは19mm、後席肘まわりのスペースは19mmそれぞれ拡大されました。ラゲッジスペースは先代モデルよりも20リッター増えて380リッターになったといいます。
ファンからすると『きわめてわずかな増加』と思えるわけで、そのためにFRレイアウトを諦めたのかと考えると残念な思いもあります。
こうした室内の寸法拡大に加えて、FRレイアウトゆえに生じていた、このクラスにしては高いコストとの決別が裏テーマとして存在するのは、やはり間違いないでしょう。
室内は、たしかに先代よりも広がっていることを感じます。とくに後席に座ると明らかに広く、以前よりも乗り降りもしやすいです。ただ、このクラスだと後席にそれほど頻繁に人が乗るとは思えないわけですが。
荷室容量も含めて、このクラスのFFモデルとして常識的なものになっているといえます。
横から見たパッケージングが、すっかりエンジン横置きのFFになってしまったのが残念。