打倒ベンツ!? FF化したBMW新型「1シリーズ」にBMWらしさはあるか?
FF化の影響を感じさせない乗り味を実現
そんなふたつの優れたパワーユニットに対して、FFレイアウトを採用したシャシが生み出す走りはいかなるものだったのでしょうか。
端的にいって、新型1シリーズの走りは、FF化されてもBMWらしさを感じさせるものになっていたと報告できます。
今回の新型1シリーズでユニークな点は、FFレイアウトを採用しても、かつてFRレイアウトを採用していた先代までの1シリーズに負けないような優れたハンドリングを実現するために、「ARB」と呼ばれる制御を採用したことです。
ARBは電気自動車であるBMW「i3」で採用された技術で、発進時やコーナリング時、さらにウェット路面を走行しているときのホイールスリップを以前よりも3倍速く制御することでトラクションを著しく増大できる仕組み。
従来のモデルではホイールスリップを検知した場合、その信号をDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)のコントロールユニットへと送り、そこからその信号がエンジン・コントロールユニットの制御系へと働きかけ、エンジン回転を抑えることでスリップを制御していました。
しかしARBのホイールスリップの制御は、DSCのコントロールユニット内ではなく、エンジン・コントロールユニットにあります。
このためホイールスリップを検知した場合、その信号は長い経路を通らずに、直接エンジン・コントロールユニットの制御系へと送られ、エンジン回転を抑えスリップを制御。
このため制御速度が従来の3倍となり、体感では10倍近く速くなったように感じるのです。
さらにARBはDSCと緊密に連携することで、DSCを介入させることなくFF特有のトルクステアを大幅に抑制できるのだといいます。これによって、ステアリングフィールも向上する効果があります。
加えて、BMWパフォーマンスコントロールというブレーキ制御によるヨーモーメント制御との組み合わせで、さらにニュートラルなハンドリング特性が得られます。
このような、とても複雑な制御を与えられた新型1シリーズは、確かにほかのFFモデルとは異なるとてもスッキリとした走りが印象的でした。
FFレイアウトを採用するモデルでは、操舵と駆動の両方を前輪が担当するため、操舵フィールのなかに駆動の感触が伝わります。そのため、FRレイアウトのようなスッキリとしたフィーリングにはなりづらいです。
もっとも、多くのFF車がFR車のようなフィールを手に入れようと頑張っているわけですが、そうしたなかで新型1シリーズはこのARBやBMWパフォーマンスコントロール、そしてDSCのなかのダイナミックトラクションコントロールの設定を変えることなどで、限りなくスッキリと気持ち良いフィーリングを作り込んだわけです。
今回は一般道でのみの試乗だったので高負荷をかけたコーナリングなどはおこなっていませんが、普段乗りレベルでも走りがスッキリしたものになっていたことは確認できました。ハイペースのワインディングやサーキットなどではさらに気持ち良さを体感できるでしょう。
とくにM135i xDriveはその恩恵をしっかりと受けていました。118dはディーゼルエンジンの搭載ゆえか、ハンドルを操作するとフロントまわりに若干の重みを感じることもあって、さすがにM135i xDriveほどのスッキリとしたハンドリングまでは到達していませんでした。それでも軽快な走行感覚を持っていたのは確かです。
横から見たパッケージングが、すっかりエンジン横置きのFFになってしまったのが残念。