狂気の“高級車”ランチア「テーマ“8.32”」実車展示! イタリアの超高級家具「内装」サルーンに“フェラーリ”エンジン搭載!? 見た目は奥ゆかしい「4ドアモデル」の正体とは
「オートモビルカウンシル2026」に展示されたランチア「テーマ8.32」は、知るひとぞ知る高性能な高級サルーンとして名を残しています。その理由はどこにあるのでしょうか。
アピールはホイールとグリルだけの「奥ゆかしさ」にドキドキ
2026年4月10日から12日までの3日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されたヘリテージカーイベント「オートモビルカウンシル2026」には、世界中の歴史的高級車やスポーツカーなどがひしめいていました。
その会場にひっそりと展示されたランチア「テーマ8.32」は、知るひとぞ知る高性能な高級サルーンとして名を残しています。
愛知県名古屋市にショップを構え、日本正規未導入モデルを中心とした欧州車を取り扱う「Lusso Cars」は、テーマ8.32を展示しました。
テーマ8.32には、なんとイタリアの名門“フェラーリ”のエンジンが搭載されています。

ところでフェラーリのエンジンを他のメーカーが搭載した事例としては、まずマセラティが思い浮かぶのではないでしょうか。
マセラティは1993年にフェラーリやランチア、アルファロメオと同じくフィアットの傘下に入り、さらに1997年にはフェラーリの子会社となりました。その結果マセラティにもフェラーリ製のV8エンジンが供給されることとなったのです。
このエンジン供給契約は2023年以降切れてしまったため、2026年現在のマセラティ各モデルはV6エンジンを搭載しています。
しかしそれ以前にも、フェラーリのV8エンジンを載せたスーパー・サルーンが存在していました。
それこそが、ランチアのテーマ8.32なのです。
1984年にデビューした初代テーマは、ジウジアーロがデザインしたスクエアで上品なボディに、シックで上質なインテリアを組み合わせたランチアの最上級モデルです。
ランチアは古くから上流貴族が愛用するメーカーで、フィアットグループ内では高級かつスポーティな雰囲気が持たされていました。
テーマには、当初フィアット製の2リッター直列4気筒 DOHC8バルブおよびそのターボ版、プジョー・ルノー・ボルボが共同開発したPRVの2.8リッターV型6気筒、そして2.4リッターターボディーゼルエンジンをラインアップしていました。
そして1986年、テーマの最上級モデルとして、フェラーリ「308クワトロバルボーレ」用の3リッターV8DOHC32バルブエンジンを搭載した「8.32」が登場。車名の8はV8、32はバルブ数を意味していました。
とはいえ、スポーツカーと実用サルーンではエンジンの特性が異なるため、テーマに移植の際は吸排気系などを改良しています。
最高出力は308の240psから215psへとデチューンされていますが、全長約4.5m、車重1.4tのサルーンを軽々と走らせるには十分で、0-100km/h加速6.8秒、最高速度240km/hという俊足をマークしました。
こんなすごいエンジンを載せているなら、内外装はスポーツモデルらしい大きなスポイラーや黒内装でキメているのだろうと思いきや、さにあらず。
外観に大仰なエアロパーツなどは一切なく、フェラーリエンジン搭載を匂わせるのは、星型のアルミホイールと格子のグリルのみという奥ゆかしさです。普段はトランクリッドに電動で格納されるリアスポイラーも、特徴的な装備でした。
内装も極めて豪奢です。
イタリアの高級家具ブランドであるポルトローナ・フラウ製の高級皮革が存分に用いられており、シートのみならずダッシュボードやドアトリムまで覆っていました。
ダッシュボード前面に広い面積で貼られたウッドパネルも、いうまでもなくローズウッドの本杢目を採用していました。
「フェラーリエンジンを積むサルーン」という夢のようなクルマですが、それを全面に押し出すことはなく、ランチアが持つ上品さとスポーティさを突き詰めた「大人の高級サルーン」の雰囲気を漂わせていたのです。
それだけに価格は高く、1988年当時の日本での販売価格はなんと950万円。これは同時期の4気筒ターボモデル「テーマi.e.ターボ」のほぼ倍のプライスです。
その後、1991年にテーマ全体がマイナーチェンジを受けた際には、最高出力が200psまでドロップ。さらに1992年には、アルファロメオ製のV6エンジン搭載グレードと入れ替わる形で販売を終えています。
このようにフェラーリエンジンの咆哮を楽しめるサルーンとして貴重な存在のテーマ8.32ですが、狭いボンネットに押し込んだV8エンジンの熱問題、決して少なくないトラブルなどから、購入にハードルが高いクルマとしても知られています。
しかしフェラーリエンジンを積んだテーマ、というロマンの塊のようなクルマだけに、今なお多くのファンから羨望を集める存在となっているのです。筆者(遠藤イヅル)にとっても、まさに憧れの一台です。
Lusso Carsが展示した8.32は、1993年式の後期モデルで、走行距離は30700kmという少なさ。ボディカラーは、8.32を象徴する色のひとつ、「ロッソ ウィナー」をまとっています。
驚くべきはその良好なコンディションです。
外装は塗装の色あせもなく、樹脂やモールの劣化もほぼ見られない状態。内装も使用感が少なく、本革シートにひび割れも見られません。
メンテナンスや維持が難しい車種を購入する際、とても重要なのが「これまでの履歴」なのですが、この個体はLusso Carsで管理された期間が長いので安心です。同社でも「過去に扱ってきた8.32の中でもトップクラス」と説明しています。
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掲示された価格は468万円でしたが、素性がわからない、程度そこそこの8.32を300万円で購入し、その後修理代やリフレッシュ代などを注ぎ込むのなら、最初から程度抜群の個体を手に入れた方がいいのではないでしょうか。
そう思わせるほどに、この8.32は美しい状態を保っていました。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

































