スマホで「ハイエース」の走りが変わる!? “足まわりカスタム”の革命! 路面や好みに合わせた制御ができる”次世代電制サスペンションシステム”「アクトライド」を試してみた
カヤバが開発した次世代電子制御サスペンションシステム「ActRide(アクトライド)」は、高級車の専売特許だった可変ダンパーを、後付けで楽しめるキットです。第1弾として登場したハイエース用をサーキットで試乗。100段階の減衰力調整や、路面状況に合わせた自動制御をスマホ一つで操れるその利便性や装着によって大きく変わった商用車の走りをレポートします。
スマホの「スライダー操作」でハイエースの走りが激変
「ドライブモード」を選んで減衰力を変化させられる可変式ダンパーは、高級車向けのオプションであることが通例です。
ところがカヤバが開発した「ActRide(アクトライド)」は、アフターマーケット・パーツとしてインストールできる可変電子制御サスペンションシステムです。
足まわりという専門的なセッティング領域が、スマホ上で見える化されて、乗り手が気軽に調節できるようになったことが素晴らしいポイント。
まるで音楽のプレイリストを選ぶ感覚で、その日の気分や道路状況に合わせた「走り」を選択できるのです。
第1弾として「ハイエース&ハイエースレジアス用」が2026年1月から発売されており、今回は袖ケ浦フォレストウェイサーキット(千葉県)にて、その効き目を体感する試乗会に参加してきました。

まずは、カヤバ オートモーティブコンポーネンツ事業本部 四輪事業部 技術統轄部 部長の馬場智彦氏と、技術統括部 電子技術部 第一開発室 専任課長の宮谷修氏による座学説明から。
「アクトライド」は高度な電子制御機能をもちながら、後付け前提の極めてシンプルなシステムで構成されています。
物理的には、ソレノイドバルブを備えた前後のショックアブソーバーと、制御の要となるIMU(3軸加速度&3軸角速度、つまり6軸センサ)を内蔵した車載コントローラー、さらにこれらを繋ぐハーネスの3要素です。
ソフトウェア領域では専用アプリをスマホにダウンロードすれば、車両の挙動をリアルタイム計測&制御するコントローラーとBluetoothで接続され、設定や操作が可能になります。
ソレノイドバルブは電気的制御を通じて油圧を10ミリ秒単位の応答性で操れ、無段階かつ滑らかに減衰力を変化させられます。
ちなみにこのシステムは車両ネットワークからは独立していて、ワイヤハーネスで電源が接続されるのみ。純正のコンピュータとの干渉を意図的に避けています。
操作はまさに今ドキで、スマホ上でおもにスライダーを動かすタイプ。スマホのアプリ内では基本プリセットとして「コンフォート」「スポーツ」「ノーマル」が用意され、さらに個別チューンできるカスタマイズ×3モードという、計6つが選べます。
また画面上でIMUが検知した車両の挙動は可視化され、減衰の指令がどのように下されているか、リアルタイムで確認可能。いわば乗り味を変えると同時に、車両の状態が手元で見えるところが、“新たな楽しみ”というわけです。
アクトライドの真骨頂は、100段階という細かさでベース減衰力を調整できる点にあります。ダンパー減衰力は純正と比較してもっとも硬い設定で約2倍、逆にもっとも柔らかい設定では約3分の2と、純正ノーマルよりワイドな調整幅が得られます。
このベース減衰に対し、得られる制御アルゴリズムは3種類。上下動やロール、ピッチ、路面の凹凸やうねりに応じて車体をフラットに保つ「ライドコントロール」が1つ目。
2つ目はステアリング操舵という横方向、もしくは加減速によるスクワットといった縦方向の姿勢変化を抑える「ハンドリングコントロール」です。
さらに低速では乗り心地、高速では接地感や安定性を重視し、速度に応じて減衰力を効果的に決める「スピードアダプト」があります。
これら3つのパラメーターは、オートモードONなら状況に応じた自動制御任せもOKで、するとベース減衰力調整は初期の50段階に留まり、いざという時の調整幅を確保するそうです。
スラロームや凹凸路、一般道で走りの違いをチェック
というわけで、いざ試乗プログラムはまずノーマルのハイエースで、車速20km/hでスラロームに挑戦。
空荷で5名乗車とあって、ステアリングを切っても舵が効いてくるまでの微妙な待ち時間があり、左右の切り替えしでは足元が収まりづらくフワフワする感覚です。
ところが続いてアクトライド装着車の「ハイエース」に乗り換えて、同乗するインストラクターがスマホ上で前2者のパラメーター、つまりライドコントロールとハンドリングコントロールを強めます。
するとステアリング操舵量が減って、左右には粘りを増し、前後の無駄な動きが減りました。
スラロームに続き、凹凸そしてスピードバンプ状の障害物上を10km/hで通過してみました。ノーマル基準車では、まるでお神輿のようなヘッドトス気味の揺れが乗員を襲います。
ところがアクトライド装着車はベース減衰力調整を柔らかめにしておくと、明らかに突き上げ方が穏やか。ライドコントロールが効き過ぎていると多少のツッパリ感はあるものの、前後の足が伸びて収束するのも速いのが特徴です。
公道試乗では、まずアクトライド装着車、次いでノーマル・サス装着の基準車を比べてみました。
今回のハイエースは4WD仕様で、2WDよりやや重量があって低重心ですが、アクトライド装着車の方は段差や路面の継ぎ目でも、優しいタッチで乗り越えていきます。中速コーナーでもビタっとした安定感が得られて、ロールもステアリング操舵に対してユラリと“喰っていく”フィール。
対してノーマル脚の基準車は、多少荒れた程度の路面でもドシンバタンと脚が明らかに追従していません。
加えて先ほどと同じコーナーでも、ステアリング操舵するとパタンと急にロールして傾くのに、なかなか姿勢が決まらないから怖いとすら感じさせます。
もちろんアクトライド装着車での走行中は、助手席で開発技術者とインストラクターがコース状況に合わせてパラメーターを上げ下げしてくれました。
ですが、乗り手が気に入ったセッティングは無論アプリ上で保存しておけますから、荷物の積み具合や乗車人数、あるいは高速道路での巡航や街乗り、キャンプ場の未舗装路など、走る状況に応じてカスタマイズを決めて、あとは気分でベース減衰力調整やスピードアダプトの強弱をつければいいでしょう。
前後のベース減衰力のバランスを、どのぐらい違わせるか、それが乗り心地やハンドリングの質を大きく変えるはずです。
短い試乗時間で、セッティングをあれこれ変えるまでには至りませんでしたが、効能は十分に体感できました。そもそもハイエースで、あれだけ乗用車に近いフィーリングを得られることが驚きです。
価格は約27万円! 今後の展開にも期待
初回キットは200系なら2WDにも4WDにも対応しており、取付工賃を含まない税込価格は26万9500円。
干渉を避けるため4WDの前車軸側はソレノイドを内側に向ける必要はありますが、IMUコントローラは車内に固定さえすれば、重心位置と自動補正が効くとか。
つまりダンパー交換のできるガレージなら、近所のカー用品店でも対応可能、それぐらいシンプルなキットで、乗り出し約30万円の感覚です。
惜しむらくは、積載量に応じて後車軸の車高を水平に保てる機能がないこと。ハイエースという車の性質上、あればなお完璧だったでしょう。
ただし今後「アクトライド」シリーズは別車種にも展開していく予定で、ダンパーのケーシングをストラット用の強化型にすることは当然可能。
つまり第2弾は、人気のSUVかもしれないし、サーキット走行もこなすスポーツカーかもしれないし、海外展開も睨んでいるとカヤバのスタッフは述べます。
足まわりのセッティングを通じて、手もちの車の乗り味を進化させ、変えられる。そんな愉しさを拡げる点で、SDVのアップデートメニューに発展していくこともありうるでしょう。
いわばアフターマーケットの枠に留まらない、じつは革命的なプロダクトといえるかもしれないのです。





































