ホンダの「FRスポーツカー」! 全長4.2mの「ちいさいボディ」&「直5」エンジン採用! 美しすぎる「アルジェント・ヴィーヴォ」とは
色合い、ディティール、車体各部のバランスなどが完璧な美しさを生み出していたコンセプトカー「アルジェント・ヴィーヴォ」をご存知でしょうか。今なお記憶に残る、その美麗さの秘密に迫ります。
車名のとおり水銀でできたような「美しすぎるオープンカー」
いつまでも記憶に残るほど美しいコンセプトカー、というものがあると思います。ホンダとピニンファリーナのコラボレーションにより生まれた「アルジェント・ヴィーヴォ」は、筆者にとってそんな一台。発表は1995年の東京モーターショーのホンダブース。初めて見た時に息を飲んだことを、今でも強く覚えているほどです。
2シーターのオープンカー、と聞けばごく普通の存在ですが、アルジェント・ヴィーヴォは磨かれて煌めくアルミ地肌と濃紺のグラスファイバー製パネルのカラーバランス、丸いところは丸く、シャープなところはきっちりカドを出すメリハリのあるデザインなど、目を奪われる要素に溢れていました。
前後のほどよいフェンダーのふくらみはアルミで造形され、固形というより液体金属的な素材感を持っています。「アルジェント・ヴィーヴォ」はイタリア語で「水銀」。まさにその見た目にふさわしい車名です。
さらに、これらのディティールと合わせて、アルジェント・ヴィーヴォを見目麗しく感じさせる決定的な要素があります。それは、全長4248mm×全幅1795mm×全高1125mmという、ほどよい全長と低く幅広いがもたらすフォルムの良さ。
短いフロントオーバーハング、長いホイールベース、車体後半に載った小さめのキャビンとボディサイズの比率、そして完璧な長さに調整されたリアオーバーハングなどが、アルジェント・ヴィーヴォの類稀なるプロポーションを生み出しているのです。
フェラーリやプジョーなどで幾多の名デザインを輩出したカロッツェリア、ピニンファリーナの高い実力を感じさせます。
古典的なFR(後輪駆動)のロードスターのスタイル通り、駆動方式はFRでした。発表当時のホンダでは、ミッドシップレイアウトの「ビート」と「NSX」を除けばFF(前輪駆動)が基本だったのでは、と思い出す人も多いでしょう。そのため当時では、その意外性に驚いた記憶もあります。

FRゆえに直列5気筒の2.5リッターエンジンは縦置き。縦置きの直5エンジンなんてFF主体のメーカーにあったの?とこれまた思うかもしれませんが、初代「アコード・インスパイア」、2代目「インスパイア」とその兄弟車である初代「セイバー」、2代目「アスコットおよび兄弟車の「ラファーガ」は縦置き5気筒のFF車だったので、そのエンジンを活用することができました。
カーボンファイバー製のルーフは折りたたみ式。油圧で車体に格納できる構造でした。トップがガラスでできており、リアウィンドウも大面積だったため、クローズした状態でも開放感は強かったことでしょう。
このような油圧でハードな素材のルーフを格納する機構は、1990年代後半以降は数多くのクルマに搭載され、いわゆる「クーペカブリオレ」というジャンルを作りましたが、1995年の段階ではまだ珍しい存在でした。
注目すべきはエクステリアだけではありません。ボディカラーと呼応した濃紺の皮革を基本素材としつつ、ダッシュボードやセンターコンソール、ドアパネルなどにウッドを使用。散りばめられたアルミ製のパーツもアクセントとなっていました。
※ ※ ※
なおその後、「美しすぎるコンセプトカー」アルジェント・ヴィーヴォを気に入ったブルネイ国王が、メルセデス・ベンツ「SL600」(R129型)をベースにアルジェント・ヴィーヴォの外観を与えたモデルを、ピニンファリーナにごく少数製作させたとのこと。現在でも数台が残存しているとのことです。
ちなみに1995年のホンダブースにはもう一台、FRのオープンカー「SSM」が展示されていました。こちらはその後1999年に「S2000」として発売されています。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

























































