「寒ければエンジンをかければいい」はNG? 車中泊で快適に過ごす方法は? 最新モデルは快適? 冬の車中泊どうすれば

「寒ければエンジンをかければいい」その油断が命取りになるかもしれません。ブームが定着した車中泊ですが、冬の車内は想像以上に過酷です。本記事では、最新のトヨタ「クラウンエステート」での宿泊実体験と、JAFによる氷点下検証データを基に、冬の車中泊における「生死を分ける」防寒の鉄則を解説。一酸化炭素中毒を防ぎ、安全に朝を迎えるために知っておくべき「三種の神器」とは?

最新モデルでも「準備なし」は禁物? 車中泊の実情

 レジャーの定番として定着した「車中泊」。各自動車メーカーからも快適に過ごせる仕様のモデルが続々と登場しています。

 しかし、気温が氷点下になることもある冬の車中泊は、装備や知識が不足していると命に関わる危険性があります。

 今回は、筆者がまだまだ寒かった2025年の春先に行った車中泊実体験と、JAFによる検証データを元に、寒くなる冬の車中泊における「快適な過ごし方」と「絶対にやってはいけない落とし穴」を解説します。

 まず、最新のクルマがどこまで快適になっているのか、トヨタの新型「クラウンエステート」を例に見てみましょう。

 このモデルは「ワゴン×SUV」というコンセプトで、大人が余裕を持って寝られる広大なラゲッジスペースが特徴です。

 実際に筆者が体験したところ、以下の点が快適性のカギとなりました。

 完全なフラット空間: 専用の拡張ボードとマットを使うことで、2mに及ぶ平らな寝床が確保でき、大人一人なら寝返りも自由自在です。

 電源の確保: PHEV(プラグインハイブリッド)であれば、バッテリー電力でエアコンを一晩中稼働させることが可能です。エンジン音がしないため静粛性が高く、周囲への騒音も気になりません。

 ただし、最新モデルに限らず実際に泊まってみて初めて気づく「盲点」もありました。

 例えば照明です。車内のルームランプは明るすぎて、夜間に点灯すると周囲への光漏れが気になったり、リラックスできなかったりします。

 調光可能なランタンを別途用意することで、ようやく快適な夜を過ごすことができました。

 このように、どれだけクルマのスペックが高くても、「寝具」や「照明」といったプラスアルファの装備がなければ、本当の意味での快適さは手に入らないのです。

気軽に車中泊…冬はどうすれば?(画像は2025年の春先。それでも朝方は寒かった)
気軽に車中泊…冬はどうすれば?(画像は2025年の春先。それでも朝方は寒かった)

■氷点下の恐怖! JAF検証に見る「車内の冷え方」

 最新のPHEVのように電気で暖房が使える場合は良いですが、多くのクルマではエンジンを停止すると暖房が止まります。

 では、冬の車内でエンジンを切ると、どれほど寒くなるのでしょうか。

 JAF(日本自動車連盟)が過去に長野県のスキー場(外気温マイナス10度前後)でユーザーテストを行っています。

 その検証は4人のモニターが異なる装備で挑みましたが、明暗が分かれています。

 まず防寒対策を講じず「ダウンジャケットとジーンズ」のみで挑んだモニターは、開始からわずか2時間45分、車内温度が1.8度まで低下した時点で寒さに耐えきれずリタイア。

 また、災害時用として知られる「エマージェンシーシート」を使用したケースでも、約5時間半後、車内が氷点下3.9度まで冷え込んだところでギブアップとなりました。

 一方で、翌朝まで耐え抜くことができたのは「毛布+使い捨てカイロ」と「冬山用寝袋」を使用した2名のみです。

 しかし、彼らも快適に熟睡できたわけではありません。「カイロがあったおかげで朝まで過ごせた」「冬山用の寝袋でも朝方は寒さを感じてきつかった」といったようで、これら単体の装備だけでは、冬の車中泊を乗り切るにはギリギリであることがわかりました。

 検証結果をまとめると、実験開始時はエアコンで25度に温まっていた車内も、朝にはマイナス7度まで冷え込みました。

「多少厚着をしていれば大丈夫」という油断は通用しません。毛布や寝袋単体でも「寒くてきつい」と感じるのが現実であり、複数の対策を組み合わせることが必須となります。

装備内容 結果・体感
対策なし

(ダウンジャケット+ジーンズ)

【ギブアップ】

開始2時間45分で車内温度1.8℃まで低下し限界に。

エマージェンシーシート使用 【ギブアップ】

約5時間半後、車内が氷点下(-3.9℃)になり限界。

毛布 + 使い捨てカイロ 【耐えられた】

カイロの効果で朝まで過ごせたが寒さは感じる。

冬山用寝袋 【耐えられた】

最も優秀だが、朝方は寒さを感じてきつい場面も。

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■「暖房代わりのアイドリング」が招く最悪の事態

「寒いならエンジンをかけて暖房をつければいい」と考える方もいるかもしれません。

 しかし、日本の多くの場所では「アイドリングストップ」条例があります。

 また積雪地の車中泊においてエンジンの掛けっぱなしは最も危険な行為と言えます。

 最大のリスクは一酸化炭素中毒です。 降雪時にエンジンをかけたままにすると、マフラー(排気管)が雪で塞がれてしまうことがあります。

 行き場を失った排気ガスが車内に逆流し、就寝中に意識を失ってそのまま亡くなってしまう事故が発生しています。

■命を守り、朝のコーヒーを楽しむための「三種の神器」

 では、エンジンを使わずにどうやって暖を取ればよいのでしょうか。過去の事例や検証から導き出された有効な対策は以下の3点です。

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 1. 「火を使わない」暖房器具の活用

 一酸化炭素を出さず、火災のリスクも低い電気毛布やセラミックヒーターが推奨されます。

 これらを使用するために、「ポータブル電源」を準備しておくと非常に役立ちます。また、安価で安全性が高い湯たんぽも、根強い人気があり効果的です。

 2. 「底冷え」と「窓」への断熱対策

 寒さは窓ガラスや床から伝わってきます。窓に断熱シート(シェード)を貼ることは基本中の基本です。

 また、寝袋の下にクッション性のある断熱マットを敷くことで、冷気を遮断しつつ寝心地も向上させることができます。

 実際に筆者が過去に行った寒さ対策としては、窓に断熱シェードを取り付け、厚手マット、毛布などを用意しました。それでも朝方の冷え込む時間帯では寒さを感じたのを覚えています。

 3. 汗冷えを防ぐ「衣類」の選び方

 ただ重ね着をするだけでなく、肌着(インナー)の素材選びが重要です。

 汗をかいた後に冷えて体温を奪われないよう、「汗冷え」に対応した機能性インナーや、保温性の高いウールの靴下を着用しましょう 。

 この点も筆者の実体験がベースですが、特に足元の冷え対策は、安眠のために欠かせません。足先が寒くて夜中に目が覚めることが何度かりました。

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 冬の車中泊は、朝の澄んだ空気の中で飲むコーヒーや、静寂に包まれた景色など、冬ならではの魅力があります。しかし、それは「安全」が確保されてこその楽しみです。

「クルマの暖房には頼らない」という覚悟を持ち、ポータブル電源や適切な寝具、断熱グッズをフル活用して、安全で快適な車中泊を楽しみたいものです。

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Writer: くるまのニュース編集部

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