ホンダの「“ミッドシップ”軽トラ」がスゴイ! 斬新「2トーン」の旧車デザイン採用! “農道のNSX”こと「アクティトラック」の「スピリットカラースタイル」とは
軽トラックの世界にも、ひときわ個性的で記憶に残る“隠れた名車”が存在しました。ホンダ「アクティトラック」の最後を飾った特別仕様車「スピリットカラースタイル」とは、どのような1台だったのでしょうか。
ホンダ軽トラックの集大成「スピリットカラースタイル」
生産終了したクルマを振り返ると、実は驚くほど多くの“隠れた名車”が眠っています。ホンダ「アクティトラック」の特別仕様車「スピリットカラースタイル」も、まさにその1台でした。

アクティトラックは1977年に初代モデルが登場し、2021年4月まで43年9か月にわたり生産されたホンダの軽トラックシリーズです。
「スピリットカラースタイル」は、4代目(HA8/HA9型)をベースに2018年11月に登場したTOWNグレードの特別仕様車であり、シリーズ終盤を彩る記念碑的モデルでした。
この特別仕様車は、ホンダ初の四輪自動車である「T360」の誕生55周年を記念して企画されました。
外観デザインにはT360を彷彿とさせる2トーンカラーが採用され、単なる販売促進モデルではなく、ホンダの軽トラック史を締めくくる“フィナーレ”としての意図が色濃く反映されています。
外装には2種類の2トーンカラーが設定されました。ひとつは「ベイブルー×ホワイト」で、これはT360の象徴的カラーである“メイブルー”を想起させる組み合わせです。
もうひとつの「フレームレッド×ブラック」は、ホンダの発電機や農業機械など“パワープロダクツ”をイメージしたカラーです。いずれの仕様も、ドアミラーやホイール、ドアハンドルに専用塗装が施され、Hondaロゴステッカーやセンターホイールキャップなど、細部に至るまで専用デザインが採用されていました。
ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1745mmで、ホイールベースは1900mm。フルキャブオーバー設計と短いホイールベースにより、取り回し性は軽トラの中でもトップクラスを誇ります。荷台長は1940mmで、最大積載量は350kgと、実用性にも優れています。
インテリアはベース車両のTOWNグレードを踏襲しつつ、専用の“クリアライトブルー”ファブリックを採用したシートによって、爽やかで個性的な空間を演出しています。装備面では、AM/FMチューナー付きCDプレーヤー、パワーウインドウ、IR・UVカットガラス、マニュアルエアコンなどを標準装備し、日常使用において快適性の高い構成となっています。
安全装備も充実しており、運転席エアバッグやABS、EBD(電子制御制動力配分)、前席シートベルトプリテンショナー・フォースリミッター、サイドインパクトバー、衝突安全ボディなどが標準装備されています。助手席エアバッグはオプション設定でした。
パワートレインには、最高出力45PS・最大トルク59Nmを発生するE07Z型の水冷直列3気筒SOHCエンジンを搭載するMR(ミッドシップ・後輪駆動。リアルタイム4WDも設定あり)で、5速MTまたは3速ATのトランスミッションと組み合わされます。
ミッドシップレイアウトは、アクティシリーズの伝統的な特徴であり、前後重量バランスに優れ、荷物を積んでいなくても安定した走行が可能です。またこの方式を採用していたことからファンから愛称として「農道のNSX」とも呼ばれていました。
最小回転半径はMRモデルで3.6m、4WDモデルでも3.7mと、狭い場所での機動性にも優れていました。燃費性能はJC08モードで16.2〜18.4km/Lと、軽トラックとして十分な水準を確保しています。
新車価格は、113万5080円〜134万5680円に設定されていました。これらの価格は、ベースのTOWNグレードよりも若干高めではあるものの、特別カラーや専用装備が追加されていることを考えれば妥当な設定といえるでしょう。
なお、これはシリーズ最終モデルにあたる時期の価格であり、現在も中古車市場で高値を維持している事例が報告されています。たとえば、2019年式の4WD・5MT車で走行距離1.4万kmの個体が、支払総額約226万円で販売されていた記録もあります。
アクティトラックの生産終了には、横滑り防止装置の義務化や排出ガス規制への対応の難しさ、そして競合メーカーに対するシェア低下など、複数の要因が影響していました。ホンダはこれを機に軽トラック市場からの撤退を決断し、「スピリットカラースタイル」がその歴史の幕を閉じる象徴となったのです。
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「スピリットカラースタイル」は、ホンダ初の四輪車「T360」への明確なオマージュであり、色彩や名称を通じて“ホンダスピリット”を具現化した記念モデルです。その存在は単なる実用車にとどまらず、ホンダの歴史や哲学に思いを馳せる“文化的な遺産”として、今なお多くのファンに愛されています。
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