トヨタ新型「RAV4」世界初公開! 6年ぶり「全面刷新」で「3モデル」に! “時速180km”想定の「超スポーティモデル」もイイ「大人気クロスオーバー」が示すものとは
トヨタは2025年5月21日、6代目となる新型「RAV4」を世界初公開しました。2018年の世界初公開以来、約7年ぶりのフルモデルチェンジとなりますが、どのようなモデルなのでしょうか。
キムタクのCMから30年…6代目に訪れた進化は?
キムタク(木村拓哉さん)がCMキャラクターとなっていたトヨタ初代「RAV4」のデビューは、1994年。もう30年以上前なんですね。筆者(工藤 貴宏)はあのとき大学1年だったけれど、あれから30年が経ち気付けば50歳へのカウントダウン中。それは歳もとるわけだ。

初代RAV4のエポックメイキングだったことは、乗用車系のプラットフォームを使って作ったSUVだったことでしょう。
当時のSUVはラダーフレームの採用が当然。それらはオンロードの快適性や操縦安定性はひとまず置き、オフロード性能に全振りしていました。
いっぽうRAV4は、悪路走破性はひとまず忘れ、一般的な乗用車のような乗り心地や操縦安定性を備えていたのが特徴。世の中の大多数の人はSUVに乗っていても険しいオフロードに踏み入れることはないわけで、そんな使い方ならRAV4の考え方が大正解というわけです。当然、ヒット車種になりました。
ちなみにラダーフレームではなくモノコック構造のSUVとしてはRAV4よりもラーダ「ニーヴァ」のほうが先に世に出ていましたが、それはあくまでニッチすぎる存在。世の中に影響を与え、現在の「SUVでもモノコック構造が一般的」という流れを作ったのはRAV4だといっていいと筆者(工藤 貴宏)は考えています。
そんなRAV4も先代(5代目)からは“増えすぎた都会派SUVに埋もれること”を避けるため、ラギッドなデザインとなりオフローダーイメージを強めてきました。
振り返れば3代目ではライバルが増えたこともあり日本での売れ行きはパッとせず、4世代目は日本販売をお休みしたけれど、キャラをガラリと変えてきた5世代目(先代)からは日本販売も復活して人気も上々。ワイルド化へのキャラ変は成功だったみたいですね。
そんなRAV4ですが、2025年5月21日に通算6世代目となる新型RAV4が登場しました。
新型に対してまず思ったのは、「ADVENTURE」に寄せてきなってこと。先代で登場した「ADVENTURE」グレードは、アグレッシブな専用バンパーなどひときわワイルドなスタイリングで“カッコいいRAV4”を具現化した存在。
新型の“標準モデル”は新たに「CORE」というグレード名を与えられましたが、先代の標準モデルに比べるとエッジを効かせたスタイリングで個性が強調されていると感じるのはきっと筆者だけではないでしょう。
もうひとつシリーズ構成で興味深いのは「GR SPORT」が柱のひとつになっていること。“GR”はトヨタのスポーツブランドで、 「GR SPORT」はスポーツグレード。これまで「GR SPORT」はまずベース車が登場し、しばらくしてから追加されるという流れが国内では一般的でした。
しかし新型RAV4では「CORE」「ADVENTURE」そして「GR SPORT」とはじめから3つのシリーズを用意し、3本柱としているのが新しい。
本格SUV「ランドクルーザー300」も最初から「GR SPORT」を用意していましたが、あちらはオフロード性能を鍛えたモデルでRAV4のそれとはちょっと違う感覚です。
ちなみに「GR SPORT」は専用のフロントバンパーを組み合わせますが、その開口部の冷却性能に対する重要性を説明している資料をみると“高速域”として書かれている速度はなんと180km/h。“たとえば”の話だとは思いますが、見ている速度領域がさすがですね。意識が高い。
さて、新型RAV4をチェックしていると操作系にも新しさを感じました。ひとつはアクセルペダル。なんと、下部を支点にしたタイプ、いわゆる「オルガン式」になっています。
マツダではコンパクトカーの「デミオ」まで採用し、トヨタ系でもレクサスの各車はそうしていましたが、トヨタがこのクラスのクルマに使うのは異例。状況から考えると、今後のトヨタ車はオルガン式のアクセルペダルが増えていきそうな気配ですね。理想を求めるとやはりオルガン式にたどり着くのでしょうか。
そして操作系の新しさはもうひとつ。電子制御式のシフトレバーが新しくなっているのです。何がトピックかといえば、いわゆる“プリウス式”をやめて、純粋にレバーを前後に動かすタイプになったことですよ。シフトレバーの動かし方を変えるって、大変化じゃないですか。
個人的にはプリウス式のシフトも違和感なく受け入れていたのですが、世の中的にはそう考えている人ばかりではなかったということなのかもしれません。
ちなみに「ADVENTURE」だけは電子制御シフトではなく、一般的なレバー式。使い分けるなんてなんとも贅沢な……ですが、「オフロード走行時は瞬時にシフトレバーを動かすこともあるから、それにあわせて」とのこと。
たしかに筆者がデザートサファリを体験した時、ドライバーさんは砂漠走行中にシフトレバーを頻繁に操りマニュアル操作のシフトダウンを駆使していました。そういうことなのでしょう(クルマはRAV4じゃなくてランクルでしたが)。
それから新型RAV4の概要を見て思うことがもうひとつ。RAV4がトヨタのスタンダードのひとつになったんだ、ということです。
新型RAV4には「Arene(アリーン)」と呼ばれるトヨタの新しい車載ソフトの開発基盤がトヨタブランドで初めて使われました(レクサスでは新型「ES」から採用)。
加えて、ディスプレイのホーム画面をカスタマイズ可能としたり、音声認識の応答速度・理解精度を向上させた次世代マルチメディアも採用。そういった新しい技術やデバイスが新型車に採用されるのは日々起こっていることですが、車載ソフトの開発基盤や全面刷新したインフォテイメントなど“きわめて重要なシステム”が2つも同時に投入されるのは、余程のこと。
それはRAV4がトヨタにとってどれだけ重要な位置づけであるかを示していると言っていいでしょう。
2024年に米国で約47万5000台を販売したRAV4は今や、北米で最も売れる日本車にまで成長しました。30年間の成長を経て、トヨタにとっても欠かせないモデルとなったのです。
しかしそこで“守り”に入るのではなく、しっかりと“攻め”を続けるのが、今のトヨタらしいなと筆者はつくづく思いました。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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