パイオニア、台湾液晶メーカーのグループ入り 矢原社長「グローバル展開を目指しAIソリューションを強化」
カーナビや音響システムなどで知られるパイオニアは2025年12月4日に都内で記者会見を開き、1日に台湾のCarUXへの株主移行が完了したことを発表しました。会見には、パイオニアの矢原史朗社長執行役員と、CarUXのジム・ホン会長が登壇しました。
CarUXは台湾液晶大手「イノラックス」の子会社
カーナビや音響システムなどを手掛けるパイオニアは2025年12月4日に都内で記者会見を開き、1日に台湾のCarUXへの株主移行が完了したことを発表しました。
パイオニアは2019年3月、「パイオニア再生プラン」に基づき、アジア系ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)傘下入り。2021年に「パイオニア再生プラン」が終了すると、将来に向けた“成長投資ステージ”へ移行し、2022年にはスウェーデンを本拠とする投資ファンドEQTがBPEAを買収して、EQT傘下に入っていました。

そして2025年6月には、台湾液晶大手の群創光電(イノラックス・Innolux Corporation)子会社のCarUXの一員になることを発表。それから半年で、株主移行が完了した形です。
CarUXは「スマートコックピット」と呼ばれる運転席周りのディスプレイシステムを欧米の自動車メーカーに納め、Tier1サプライヤーとして主要OEM各社と長年にわたりパートナーシップを築いています。
そのCarUXグループの一員として、これからはパイオニアが名前を連ねることになるのです。
今回の記者会見では、イノラックスCEOでもあるCarUXのジム・ホン会長と、パイオニアの矢原史朗社長執行役員が登壇しました。
矢原社長は「ファンドにおける再生プランは終了しており、現在は順調に業績も回復して6期連続の黒字も達成しております。海外生産拠点やR&Dセンターの開設など開発力の強化を行っています。そのなかでグローバルな展開を目指すとともに、CarUXの一員となることで、パイオニアが持つ音響技術やカメラ事業、AIやSDVなど次のソリューションといったビジネス基盤を、より強固なものできると確信しています」と話しました。
一方のジム・ホン会長は「CarUXはイノラックスから分社化され誕生し、スマートコックピットソリューションの再定義に集中することを使命としています。自動車メーカーさまといろいろなやりとりをするなかで、車内で過ごす時間は単なる移動の時間ではなく、人生をつなぎ、広げていく空間と体験になると信じるに至りました。ユーザーエクスペリエンスを作り出すために、パイオニアが持つ音響技術などが重要になってきます」と述べました。
CarUXがパイオニアを買収することによって、顧客基盤の強化、商品ポートフォリオの拡充、グローバルな製造基盤が整うことになり、お互いにない部分を補完し合えると両社は言います。なお、具体的な提携や商品に関しては今後協議の場が持たれるとのことです。
日本のユーザーにとっては、カーナビゲーションやスマートフォンアプリなどがどうなっていくのか気になるところですが、矢原社長は「カーナビなどはパイオニア単独で今後も伸長させていくプランはありますが、CarUXと一緒になることで、スマートコックピット内におけるカーナビのルーティングや検索、ソフトウエアのノウハウを盛り込むことができ、統合コックピットという点で、ユーザーエクスペリエンスが向上すると思っています」と話しました。
つまりCarUXの一員となるものの、パイオニアとしての組織体制や事業運営、従業員の雇用、ブランドは維持されると思われます。世界的なメーカーの傘下に入ることで、パイオニアはより安定的かつ強固なビジネス基盤を手に入れました。ユーザーの1人として、今後の商品展開を期待したいと思います。
Writer: 雪岡直樹
1974年東京生まれ。フォトスタジオアシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーへ。雑誌やWeb媒体の撮影を担当。自動車雑誌の撮影と並行してユーザーインタビューやイベントレポートを担当することで、ライターとしても活動。国内最高峰のレース「SUPER GT選手権」を長年取材。新車情報やレースレポート、イベントレポートなどを雑誌やWebに寄稿する。
















