2024全日本ラリーRd.7「ラリー北海道」は希少なグラベル戦!トラブル続出の大波乱ステージはどのチームが制した?

全日本ラリー選手権第7戦ラリー北海道が2024年9月6日から8日にかけて、北海道十勝地方で開催されました。貴重なグラベルラリーとなる本戦はどのような戦いだったのでしょうか。

広大な大地で開催されるラリーは腕とチーム力の見せ所!

 全日本ラリー選手権第7戦「RALLY HOKKAIDO(ラリー北海道)」が2024年9月6日から8日にかけて、北海道十勝地方で開催されました。同選手権は全8戦のシリーズですが、グラベルラリーとなるのは第6戦のカムイとラリー北海道の2戦のみとなります。

帯広駅前で行われたセレモニアルスタートでは多くのギャラリーがその出発を見送った
帯広駅前で行われたセレモニアルスタートでは多くのギャラリーがその出発を見送った

 北海道らしい雄大な景色の中のステージは選手のみならず、ギャラリーにも人気の高いラリーです。

 以前よりステージ数は減ったものの、陸別サーキットを中心に、比較的狭いもののアベレージ速度が高い「ヤムワッカ」、逆に広い道幅で開けた景色の中を走る「パウセカムイ」、テクニカルな「オトフケ」など、個性の異なるステージが選手たちを待ち受けます。

 また今回のラリー北海道には、オーストラリアチャンピオンのハリー・ベイツ/コーラル・テイラー組が参戦し、大きな話題となりました。

 先日開催されたオーストラリア選手権Gippsland Rallyに日本から大竹直生・竹藪英樹組が参戦しましたが、今回は逆にオーストラリアからの選手を迎える形です。

 オーストラリア選手権で使用するGRヤリスRally2を持ち込んでの参戦で、オーストラリアではMRFのコントロールタイヤを使用していますが、ラリー北海道ではピレリを選択しました。

 また、ラリーに先立って選手たちが帯広市立北栄小学校を訪問し、地元への社会貢献活動の一環として交通安全啓発活動を行いました。十勝で国際ラリーが開催されてはや20年以上がたちますが、なかにはラリーの知識が豊富な小学生も見られ、十勝の地でラリーへの理解が浸透しているようでした。

 そして、帯広駅前でのラリーショーに続いて行われたセレモニアルスタートには多くのギャラリーが詰めかけました。

 日本初開催となった2004年のWRCラリージャパンでも駅前でセレモニアルスタートを行い、日本にこんなにもラリーファンがいたのかと思ったものでした。あれから20年がたち、地元の人たちの間にもラリーが根付いたことを実感させるセレモニアルスタートとなりました。

オーストラリアのベイツ・テイラー組は区間ベストタイムを記録

 オープニングステージである、9.81kmのパウセカムイリバースを制したのはなんとベイツ・テイラー組のGRヤリスRally2でした。

 初めて走る日本のステージでいきなりのベストタイムを記録します。オーストラリア選手権はその広大な国土ゆえにさまざまな路面や環境のラリーが開催されているようで、そこを走るトップクラスの選手たちは与えられた環境や条件にアジャストする能力に優れているようです。

 日本のラリーの中でもラリー北海道のフィールドは他の国内ラリーとは違って海外の環境に似ている部分もあり、そういった面も功を奏したとも言えます。

奴田原 文雄/東 駿吾組が操るADVAN KTMS GRヤリスRally2
奴田原 文雄/東 駿吾組が操るADVAN KTMS GRヤリスRally2

 そのベイツ・テイラー組に0.3秒差の2位にはファビアR5の新井大輝・松尾俊亮組がつけます。

 さまざまなチームをわたり歩き、ラリー車としては異例の過走行車両である新井選手のファビアR5はまさに満身創痍(まんしんそうい)です。

 プライベーターということもあって常に予算の問題が付きまといますが、チャンピオン獲得のため、前戦カムイからのインターバルにファビアR5のエンジンをチェコのシュコダモータースポーツへ空輸し、オーバーホールを敢行しました。

 オーストラリアからの刺客も含め、最新のGRヤリスRally2勢に立ち向かうには型落ちのファビアR5ではあまりに不利な条件といえます。序盤こそ走りに粗さが見られた新井・松尾組ですが、2ループ目からは本領を発揮します。

 圧巻はSS6ヤムワッカ2でした。ここを勝負どころと見たか、セカンドベストの勝田範彦・木村裕介組のGRヤリスRally2に18.8秒差、3位のベイツ・テイラー組に29.1秒の差をつけます。

 丁寧な走りを心がけたという新井・松尾組はその後も後続を引き離し、Leg1終了時点で総合2位のベイツ・テイラー組に51.6秒差をつけ、ラリーをリードします。

 また、チャンピオン争いの一角、勝田・木村組はSS7でコースオフを喫しリタイアとなってしまい、チャンピオン争いは不利な状況となりました。

 ヘイキ・コバライネン・北川紗衣組もミッショントラブルで優勝争いから脱落します。リタイアするクルーが続出し、全日本ラリーの中でもいちばん過酷と言われるラリー北海道らしい展開となりました。

 LEG1を首位で終えたJN1クラスの新井・松尾組は、大きなアドバンテージを生かしてペースをコントロールします。SS10オトフケでステージベストを記録するなど、最後まで手を緩めず最終的には2位のベイツ・テイラー組に49.1秒の差をつけ優勝し、新井選手は自身2度目の全日本チャンピオン(ドライバー部門)に輝きました。

 ちなみに、コ・ドライバーの松尾選手はポイントが足らず、コ・ドライバー部門のチャンピオン争いは最終戦に持ち越しとなりました。

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