HKSの車高調「HIPERMAX S/R」を箱根で試乗! 一般ユーザーも参加した「体感試乗会」でアフターサスペンションのイメージが変わった!
驚きの連続…これは「ノーマルよりノーマル」だ!
そこで筆者も体感試乗に参加しました。試乗ステージは自動車メーカーの新車取材でも走り慣れた「アネスト岩田 ターンパイク箱根」です。
まずはストリートからワインディングを想定したセットアップが特徴の「HIPERMAX S」をテスラ「モデルY」で試します(タイヤは純正サイズのヨコハマ アドバンスポーツEVを装着)。
車高はノーマル比で30mmダウンされており、モデルYの腰高感はうまく消されていますが、その一方で「この車高で走りはどうなの?」という疑心暗鬼な部分も……。
ただ、走り始めて「えっ、マジです!?」と驚きの連続。もちろん良い意味で…です。
ノーマルはサイズや重さを感じさせない機敏なハンドリングながらも、ノーズの入りが悪く、ある意味“強引”に旋回状態に持ち込む印象でしたが、HIPERMAX Sはステアリングを切るとスーッとノーズが入っていきます。
つまり、ノーマルよりもコーナリングの一連の流れに連続性があり、結果としてより素直、より自然なフィーリングです。
HKSの担当者に話を聞くと「HIPERMAX Sのアッパーは通常は強化ゴムマウントですが、モデルYは ノーズの入りの悪さを解消するためにピロアッパーを採用。それが効いていると思います」と教えてくれました。
また、旋回時の姿勢も上手に荷重が四輪に分散されている印象でした。結果としてフロント外輪への負担が減り、ノーマルよりも少ない舵(だ)角で曲がることが可能です。恐らく、ステアリングを切り始めの応答が良い→素早く旋回姿勢に持ち込める→4つのタイヤのグリップを上手に活用→より安定、より楽に、より速く旋回ができる…というわけです。
ある自動車メーカーの評価マイスターは「旋回は切り始めが勝負」と言っていますが、HIPERMAX Sはそれをサスペンションチューンで実現しているのです。
乗り心地もいい意味で裏切られました。ノーマルは路面からの突き上げや突っ張った足の動き(ヒョコヒョコしてしなやかさに欠ける)が気になっていましたが、HIPERMAX Sは入力にカドがなく優しい印象です。足の動きも30mmローダウンしていることを忘れるくらいストローク感がある上に、スムーズかつシットリとしており、車格に見合った質感です。
実はバネレートはフロント8kg、リア9kgとストリート用としては高めの設定ですが、乗り心地はノーマルよりも確実に良いと感じるレベルです。恐らくバネレートも減衰力もノーマルよりハード側の設定ですが、タイヤをシッカリたゆませる→初期入力をタイヤで吸収→その先はサスペンション側で吸収という連携が上手にできているのでしょう。
要するに乗り心地はバネ、ダンパー、そしてタイヤのバランスが重要となります。
これらの印象から、個人的には「ノーマルよりもノーマル」と言っても過言ではない走りの仕上がりだと感じました。
最新型のシビックタイプR(FL5)のMAX Rの走りに感動を覚える
つづいてサーキットからワインディングを想定したセットアップが特徴の「HIPERMAX R」をホンダ「シビックタイプR(FL5)」で試します(タイヤはノーマルの19インチから18インチにインチダウンされたヨコハマ アドバンA052を装着)。
シビックタイプRには純正でZF製のアダプティブサスペンションが装着されています。
その実力は「わざわざ変更する理由があるのか?」と思うくらい高いレベルなので、がぜんハードルは上がります。
HKSの担当者は「サーキットスペックではありますが、多くの人はストリートを走る機会が多いです。そのためHIPERMAX Rは『究極のマルチパフォーマー』として開発しています」と自信を見せます。
「それ、本当なの?」と思いながら走り始めますが、こちらも驚きでした。実はバネレートはフロント14kg、リア14kgと完全にサーキットスペックなのですが、乗り心地はスッキリした足の動きと人の感覚に合わせた減衰感の相乗効果で、かなり引き締められてはいるも不快な感じはありません。
イメージ的には「タイプRユーロ」FN2型を思い出す「しなやかな硬さ」といった印象かな…と。
ハンドリングはセンター付近がノーマルより穏やかに感じる所はあるも(恐らくインチダウンの影響が大きい)、そこからステアリングを切り込むと、切れ味の鋭いノーマルに対してリニアに旋回Gが高まっていく印象です。
人によっては刺激は少なめかもしれませんが、筆者はむしろコントロールの幅や精度が高まっていると評価しました。恐らくサーキットではより高い速度域でコントロールする必要が出ますが、この特性が確実に生きるはずです。
旋回時は当然、ノーマルより姿勢変化は少なめで前後左右方向ともに無駄な動きは抑えられています。となると、ハンドリングの特性はタイヤの性能依存、もしくはよりピーキーな方向かなと思いましたが、実際はその逆でむしろ乗りやすくなっていました。
ノーマルはFF(前輪駆動)ながらもアンダーステア(カーブで外側に膨らむ挙動)知らずでノーズがインに吸い込まれるように旋回しますが、HIPERMAX Rはより自然に旋回していきます。
要するに、ステアリングで曲げるのではなく、4輪全体で曲がっている感覚があるのです。
結果的にステアリング舵角はノーマルよりも少なめでコーナリングできるので、しなやかな足の動きでありながらも無駄な挙動は出にくく「意のままの走り」を「安心感高く」実現しているということになります。
ちなみにコーナリング時に旋回軸はFFながらもよりドライバーに近く感じましたが、これはリアに荷重がかかりやすくなるようなセットアップになっているからのはずです。加えて、HIPERMAX R専用開発されたLVS(LOW Vibration Spring:レスポンスと雑味のない乗り味を両立)やダンパーオイル(Super Response Fluid:微低速から減衰が立ち上がるうえに熱ダレに強い)、さらには「スプリングリテーナー(低フリクション化により追従性向上)なども寄与していると考えられます。
もちろん、万能性ではノーマルのほうが間違いなく上でしょうが、HIPERMAX Rに乗ってみて、どこか昔のタイプRを思い出したのも事実です。ただ、勘違いしてほしくないのはハードかつ武闘派になったわけではなく「ピュア」で「ダイレクト」なフィーリングがそう感じさせるのでしょう。もしかしたら、タイプRよりタイプRらしいフットワークと言えるかもしれません。
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