なぜ軽の売れ筋は「スーパーハイトワゴン」ばかり? ホンダ「N-BOX」みたいな“背の高い軽“に人気が集中する訳

軽スーパーハイトワゴンが“定番”となったわけ

 スズキの販売店は、N-BOXやスーパーハイトワゴンについて、以下のように述べました。

「スズキでもファミリーのお客さまを中心に、スーパーハイトワゴンのスペーシアが人気です。その次は『ハスラー』です。

 ハスラーはSUV風の軽自動車でスーパーハイトワゴンではありませんが、お客さまが値引きなどで選択に迷う他メーカー車にはN-BOXが多いです」

 N-BOXは軽自動車の定番になり、ハスラーの購入を検討している人も意識しているようです。

スズキの軽スーパーハイトワゴン「スペーシアカスタム」
スズキの軽スーパーハイトワゴン「スペーシアカスタム」

 軽自動車のスーパーハイトワゴンが人気を高めた背景には、クルマの値上げもあります。日本の平均所得は1997年頃をピークに下がり、直近では増加傾向ですが、今でも26年前の水準には戻っていません。

 それなのに、クルマの価格は同じ車種同士で比べると、2000年前後の1.2倍から1.5倍に上がっています。

 値上げされた一番の理由は、安全装備の充実と環境性能の向上が挙げられるでしょう。かつてよりも現在のクルマの価格が高くなってもそれ以上の価値が加わり、むしろ買い得になっているともいえます。

 しかし、そうはいってもクルマの購入資金には限りがあります。

 そのために、ボディやエンジンの排気量を小さく抑えた軽自動車に注目が集まるようになり、なかでも、200万円前後で購入できる軽自動車のスーパーハイトワゴンが人気となっているのです。

 軽スーパーハイトワゴンはミニバンと違ってシートは2列ですが、後席を格納すると自転車を積むことが可能です。

 学習塾などの帰りや雨が降ってきたときなど、自転車で出かけた子どもを親がクルマで迎えに行くといった状況で、自転車をクルマに載せるという使い方をしている人も多く、メーカーの商品企画担当者からは「学校が指定する27インチの自転車を積めることも大切な条件です」という話も聞かれます。

 また、スライドドアの採用により乗り降りもしやすいのも軽スーパーハイトワゴンの特徴のひとつ。以前のホンダ「ステップワゴン」の使い勝手が、今はN-BOXをはじめとした軽スーパーハイトワゴンに変わったというわけです。

※ ※ ※

 残価設定ローンの普及やクルマの値上げ、所得の低迷など複数の理由により、軽スーパーハイトワゴンが定番の選択になりました。

 今では新車として売られる軽乗用車の50%以上がスーパーハイトワゴンとなっており、特にホンダの場合、国内で売られる新車の約40%をN-BOXが占めています。

 このような状態になると国内に投入される新型車にも偏りが生じ、ホンダはN-BOXとそのほかの軽自動車、小型ミニバンの「フリード」で国内販売の約70%を占めるため、小型/普通車には力が入りにくいです。

 軽スーパーハイトワゴンを好調に売りながら、ほかのカテゴリーの販売促進も入念に行い、幅広いニーズに応えることが大切だといえるでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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