なぜ 「空飛ぶクルマ」と呼ぶの? 見た目はドローンに近く「車」とは程遠い! 想いや歴史が関係していた命名背景とは
なぜ「クルマ」なのか? 「利用しやすいこと」が「空飛ぶクルマ」の最重要項目に?
経済産業省では、「空飛ぶクルマ」を「電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」と定義しています。
これを見る限り、少なくとも車輪が備わっているかどうかはあまり関係がないようです。
さらに言えば、どのような形状であるべきかという点にも触れられておらず、やや曖昧ともとれる定義です。
一方、後半部の「利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」という文章からは、政府としては「利用しやすく持続可能」な空の乗り物であるというソフト面に重きを置いており、ボディの形状などのハード面については、現時点ではそれほど重要視していないということがうかがえます。
思えば、かつてはごく限られた人のためのものであったクルマも、1960年代に本格的なモータリゼーションの到来が訪れて以降、日本の人々の生活になくてはならないものとなっています。
トラックやバスなどの商用車も含めて、少なくとも現時点までは、クルマは「利用しやすく持続可能」な乗り物であり続けてきました。
このように考えると、政府のいう「空飛ぶクルマ」とは、「クルマのような形状で空を飛ぶ乗り物」という意味ではなく、「クルマのように人々の生活になくてはならない存在となる空飛ぶ乗り物」であるととらえることができます。
そのうえで、あらためて経済産業省による定義を見返すと、多くの人が利用する乗り物となるためには「電動化、自動化といった航空技術」が搭載され、環境面や安全面へ配慮されている必要がなければなりません。
また、クルマのように利用しやすい乗り物であるためには、市街地など限られたスペースで離着陸できる垂直離着陸機であるほうが好ましいのもうなずけます。
つまり、クルマのような利用しやすさを追求すると、「空飛ぶクルマ」の形状は、必然的に「陸を走るクルマ」の形状からはかけ離れていくということになります。

ただ、これは決して不思議なことではありません。クルマの世界においても、市街地走行をメインとしたものと悪路走行をメインとしたものでは、その形状や構造はまったくといって良いほど異なります。
しかし、その形状や構造は違えど、快適かつ安全に移動するといった基本的概念はどのクルマでも不変です。
そう考えると、経済産業省の定義のなかにある乗り物は、やはり「クルマ」の一種と呼んでも差し支えないのかもしれません。
※ ※ ※
前述のAirXによれば、今後「空飛ぶクルマ」を2025年の大阪万博で本格導入し、2030年には商用運行の普及を計画しているといいます。
クルマのように普及するまでにはさらに長い年月がかかることが想定されますが、もし実現すれば交通システムにとって大きな革命が起きるかもしれません。
そうなったとき、現在の「クルマ」は「陸を走るクルマ」と呼ばれるようになる未来が訪れることも考えられます。
Writer: Peacock Blue K.K.
東京・渋谷を拠点とするオンライン・ニュース・エージェンシー。インターネット・ユーザーの興味関心をひくライトな記事を中心に、独自の取材ネットワークを活用した新車スクープ記事、ビジネスコラム、海外現地取材記事など、年間約5000本のコンテンツを配信中。2017年創業。




















