良いクルマなのになぜ売れない? 商品力は高いけど販売が苦戦するクルマの裏事情
月間販売台数が1万台や2万台を超える人気車がある一方、1000台以下のクルマも多く存在します。そのなかにも商品力が高いにもかかわらず、販売が苦戦しているクルマもありますが、どのような事情を抱えているのでしょうか。
良いクルマなのに売れないのは、何か理由がある
好調に売られるクルマは、多くの人が使っている実績があるので、優れた商品と判断できます。
直近の2021年7月の実績では、もっとも売れたクルマはトヨタ「ヤリス」の2万3200台。
コンパクトカーのヤリスとSUVの「ヤリスクロス」、スポーツモデルの「GRヤリス」のシリーズでの販売台数となりますが、非常に好調な販売であるといえるでしょう。
ほかにも、ホンダ「N-BOX」(1万6992台)やスズキ「スペーシア」(1万983台)、トヨタ「ルーミー」(1万4807台)が同月に1万台以上の販売を記録しました。
その一方で、販売が低迷するクルマもあります。商品力が低いクルマもありますが、そうではないのに、何らかの理由で売れ行きが伸び悩むことがあるのです。
2021年の1か月の平均販売台数が1000台に満たないものの、「もっと売れてもいいのに…」と思える魅力を持つクルマの裏事情に迫ります。
●トヨタ「ヴェルファイア」(751台/月)
トヨタのラージサイズミニバン「アルファード」は、2021年に1か月平均で9392台を登録するなど、好調な販売を記録する一方、その姉妹車となる「ヴェルファイア」は751台です。
基本的に同じクルマなのに、ヴェルファイアの売れ行きはアルファードの8%と大差がつきました。
2015年に現行モデルが発売された時点では、アルファードよりもヴェルファイアが好調に売れていました。
ヴェルファイアは外観の存在感が強く、販売店もネッツ店ですから、アルファードのトヨペット店よりも拠点数が多かったのです。
従って当初はヴェルファイアが優勢でしたが、2017年末のマイナーチェンジで流れが変わります。
アルファードのフロントマスクがカッコ良くなり、2018年3月頃からは、ヴェルファイアよりも多く売られるようになったのです。
さらに2020年5月には、トヨタの全店が全車を扱う体制に変わり、それまでアルファードやヴェルファイアを扱っていなかったトヨタ店とカローラ店でも、アルファードが好調に売れ始めました。
そして遂に、長年にわたりヴェルファイアを売り続けたネッツ店でも、アルファードの登録台数が上まわったのです。
2021年には、ヴェルファイアは特別仕様車のみに整理され、販売格差が一層拡大。フロントマスクの違いで売れ行きに10倍もの開きが生じるのですから、クルマにとってデザインはとても大切です。
そして全店が全車を売る体制への移行は、もともと車種のリストラが目的でした。
ヴェルファイアの販売低迷と車種数の削減は、トヨタにとって想定の範囲内だったでしょう。
●日産「リーフ」(728台/月)
リーフは本格的な電気自動車(EV)で、現行モデルは2017年に登場した2代目です。リーフはEVを代表する存在で、認知度も高いです。
「X」の価格は382万5800円ですが、衝突被害軽減ブレーキや電気自動車専用のカーナビなどが標準装着。
そしてシンプルな買い方でも38万8000円の補助金が交付され、実質的な購入価格は340万円少々に下がります。
環境性能割や自動車重量税も非課税ですから、購入時の経済的な負担は比較的軽いでしょう。
それでも売れ行きが伸びないのは、ユーザーの充電環境です。
日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住み、自宅に充電設備を設置しにくいことから売れ行きが伸び悩みました。
またリーフは40kWh仕様のXでも、1回の充電でWLTCモードにより、322km(62kWh仕様は458km)を走行できますが、ユーザーによっては充電場所について不安を感じるでしょう。
一方、ハイブリッドを代表するモデルのトヨタ「プリウス」は、「S」グレードもWLTCモード燃費は30.8km/Lなので、レギュラーガソリン価格が145円/Lなら、単純計算して1km当たりの走行コストは4.7円に収まります。
しかもプリウスSの価格は273万1000円で、環境性能割や自動車重量税は非課税です。
そうなると充電する環境が整っていないユーザーの場合、リーフではなく、簡単に給油できて安心して使えるハイブリッドのプリウスを選ぶという判断も成り立つのでしょう。
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