今年のホンダはなぜ強い? F1撤退最終年に勝利を積み重ねる理由
今季投入した新開発パワーユニットのパフォーマンスがスゴい
そんなホンダが、カーボンニュートラル時代への対応を理由に、2021年限りでF1から撤退すると発表したのは2020年10月のこと。つまり、今年はホンダがF1に参戦する最終年度なのですが、ここでメルセデス・ベンツを相手に互角以上の戦いを演じていることが国内外で大きな注目を集めています。
ちなみに過去3年間のメルセデス・ベンツとレッドブル・ホンダの対戦成績は、2019年がメルセデス・ベンツ15勝でレッドブル・ホンダが3勝、2020年がメルセデス・ベンツ13勝でレッドブル・ホンダが2勝なので、今季のレッドブル・ホンダの成績が突出して良いことがわかります。
なぜ、レッドブル・ホンダはこれほど好調なのでしょうか?
理由のひとつは、今季ホンダが投入した新開発のパワーユニットが群を抜くパフォーマンスを発揮していることにあります。
ホンダは当初、2022年に新開発のパワーユニットを投入する予定だったそうです。ところが、2021年限りのF1撤退が決まったことで、計画を1年前倒しにして新パワーユニットを完成させたのです。
新しいパワーユニットについて、開発責任者の浅木泰昭さんは次のように語っています。
「(新パワーユニットは)カムシャフトの位置を相当、下げました。地面に近いほうに降ろしたのです。これによって(パワーユニットの)重心も下がるし、カムシャフトの上の空間も広がるので、空気の流し方も改善できます。
そうしたなかでも、いちばんやりたかったのは燃焼室の改良ですね。これによって馬力を増やしたかった。そのためにバルブの挟み角を変更して燃焼室形状を変えました。さらにシリンダーごとの間隔も詰めて小型化を実現しています。そういうことを含めて私たちは“新骨格エンジン”と呼んでいますが、まったく新しいエンジンと考えていただいて間違いありません」
最終年度に完全な新パワーユニットを投入したのは、ホンダ自身が有終の美を飾りたかったことに加えて、ここまでホンダのことを信頼して共に戦ってきたレッドブルとアルファタウリへの感謝の気持ちがあったからかもしれません。
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レッドブルとアルファタウリは、今後ホンダから知的所有権を譲り受け、2021年型ホンダF1パワーユニットと同じものを今度は自分たちで製造し、2022年以降のF1グランプリに投入することになります。
ただし、自動車メーカーでないレッドブルにパワーユニットの開発は難しいため、彼らはライバルであるメルセデス・ベンツ、フェラーリ、ルノーの3社に対して「2022年以降も2021年と同じ仕様のパワーユニットで戦う」ことを提案し、その了承を得ています。つまり、ホンダはレッドブルとアルファタウリのためにも、新パワーユニットを残してF1参戦を終了したかったと考えられるのです。
もちろん、今季のレッドブル・ホンダが躍進しているのは、レッドブルがメルセデス・ベンツを上回る性能のシャシを開発したからでもありますが、これについてはまた別の機会に説明することにしましょう。
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