今年のホンダはなぜ強い? F1撤退最終年に勝利を積み重ねる理由
今季のフォーミュラ1(FIA・F1世界選手権)では異変がおきています。今シーズンをもってF1から撤退を表明しているホンダですが、そのエンジンを使用するレッドブル・ホンダが、絶対王者であるメルセデスAMGと並ぶ強さを見せているのです。これまで11戦を終え、レッドブル・ホンダは6勝(チームポイント291ポイント)、メルセデスAMGは5勝(チームポイント303ポイント)。なぜこれほどまでに2021年のホンダは強くなったのでしょうか。
今シーズンは絶対王者のメルセデスAMGと互角の戦い
2021年のF1グランプリで、ホンダ(レッドブル・ホンダ)がメルセデス・ベンツ(メルセデスAMG)と並ぶ強さを見せています。
ちなみにこれまで11戦を終えて、対戦成績はレッドブル・ホンダの6勝に対してメルセデス・ベンツは4勝。レッドブル・ホンダのエースドライバーであるマックス・フェルスタッペン選手は6勝のうちの5勝を挙げており、メルセデス・ベンツのルイス・ハミルトン(4勝)を凌いでいます(ハンガリーGP終了時点)。
これは近年のF1グランプリでは異例の事態です。なにしろメルセデス・ベンツは、2014年から昨年まで7年連続でチャンピオンに輝いてきた常勝チーム。ひとつのチームが7連覇を遂げたのは、長いF1史でも初めてのことです。
なぜメルセデス・ベンツがこれほど強かったかといえば、2014年に導入された新しいエンジン規則で彼らが圧倒的な技術力を発揮したからに他なりません。
現在も継続して運用されている新規則は、1.6リッターV型6気筒ターボエンジンに2種類のハイブリッドシステムを組み合わせたもので、エンジンとハイブリッドシステムが複雑に連携してパワーを生み出すことから、現在では単にエンジンと呼ぶのではなく、エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた“パワーユニット”という呼び方が一般化しているほどです。
メルセデス・ベンツは早くからこの新規則に向けた基礎研究を開始。初年度となった2014年には19戦16勝という驚異的な勝率でチャンピオンに輝きました。
それまで他チームにエンジンだけを供給する立場だったメルセデス・ベンツが、シャシ開発やチーム運営を含めたフルワークス体制での参戦に切り替えたのは2010年のこと。そんな彼らが初めて栄冠を手にしたのがこの2014年で、これ以降、無敗伝説を守り続けているのですから、メルセデス・ベンツがいかにF1パワーユニットづくりに長けているかがわかろうかというものです。
一方のホンダは、2008年にフルワークス体制での参戦を休止。じつは、このときホンダが手放した施設をいまメルセデス・ベンツが使っているのですから、なんとも皮肉な巡り合わせですが、2015年にF1参戦を再開したホンダは、メルセデスとは反対に、パワーユニットだけをチームに提供する“パワーユニット・サプライヤー”となる道を選びました。この判断には、フルワークス参戦の難しさを2008年までに痛いほど味わったことが深く関係しています。
しかも、2015年にエンジン供給先として選んだチームは、名門マクラーレン。ホンダは以前、1998年から1992年にもマクラーレンにエンジンを供給。この時代のマクラーレンはアイルトン・セナ選手やアラン・プロスト選手などの名手が所属していたこともあり、マクラーレン・ホンダは4年連続でタイトルを勝ち取る大成功を収めました。こうした成功体験も、マクラーレンをパートナーに選んだ理由だったようです。
ところが、2015年のマクラーレン・ホンダは惨敗。チームの成績を競うコンストラクターズ選手権では9位という屈辱的な結果に終わりました。これは1966年にF1グランプリへの参戦を開始したマクラーレンにとって、史上最低の成績でした。
マクラーレン・ホンダが惨敗した理由は、ホンダの準備不足がおもな原因でした。
ホンダは2012年頃にF1復帰の検討を開始。2014年に参戦に関する発表をおこないましたが、このときはパワーユニットの試作機さえ完成していない状態だったといいます。それで2015年3月の開幕戦からF1グランプリに挑むのは、無謀な挑戦との侮蔑を拭えません。これが、マクラーレン・ホンダが苦戦を強いられた最大の原因とされています。
その後、マクラーレン・ホンダの成績は少しずつ上向きになりましたが、関係者が当初、抱いていた期待を満たすことはついになく、2017年に両者は関係を解消。ホンダは2018年からレッドブル系のトロロッソ(現在のアルファタウリ)へのパワーユニット供給を開始すると、翌2019年からはこれに加えて本家のレッドブル(正式名称はレッドブル・レーシング)にもパワーユニットの供給を開始し、現在に至っています。
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