日本どうなる? EV旋風で中国が日本を凌駕する日は来る? 変わりゆく自動車産業の今後
国力の強さが如実に表れるのが自動車産業
さて、ここで本稿のタイトルである「中国の自動車メーカーが日本の自動車メーカーを凌駕する日は来るのか?」という点について、私見を述べたいと思います。
もし、ここでいう「自動車」が、従来のガソリンエンジン車の延長線上にあるものを指すのであれば、近い将来、少なくとも10年から20年のうちに、質・量ともに日本の自動車メーカーが中国の自動車メーカーの後塵を拝するということをないでしょう。
それほどに、日本の自動車メーカーが積み重ねてきた歴史は重く、強固なものだといえます。
一方、新エネ車、とくにEVという視点で考えるのならば話はまったく変わります。
もちろん、日本も優れた技術は有していますが、日本のように各メーカーがそれぞれ、既存のガソリンエンジン車との兼ね合いのなかで開発・生産を進めるのと、中国のように、国策としてEV開発に邁進するのとでは、そのスピード感は異なるでしょう。
その一例として、バッテリー(リチウムイオン電池)があります。EVにとってバッテリーが心臓部であることは前述のとおりですが、EV用バッテリーのトップシェアはCATLという中国の国策企業です。
バッテリーの製造に必要なレアメタルの入手をめぐって各国が戦略的に動いており、そこでは国力の差が大きく現れます。
航続距離や出力、安全性などの面で、EV用バッテリーはまだまだ改善の余地があるとされていますが、そもそもそのバッテリーのトップシェアを握っている中国がその開発においても有利であることは否めません。
結局のところ、「中国の自動車メーカーが日本の自動車メーカーを凌駕する日は来るのか?」という問いは、「これからもガソリン車は生き残るのか、あるいはEVの時代になるのか」という問いと同義になります。
この点については、現在さまざまな議論が噴出している過渡期であり、簡単に結論を出すことは難しいというのが本音ですが、程度の差こそあれど、各地域でいま以上にEVが存在感を増すのは間違いないでしょう。

筆者も、中国ではNIOのSUV「ES8」をはじめとする最新のEVに触れ、試乗する機会がありましたが、少なくとも目に見えるレベルの粗さは感じません。
もちろん、すべての中国産EVが世界基準の品質を持っていることはなく、ピンキリであるとは思いますが、「ピン」はかなりのレベルに達していることを実感しました。
そして、そのNIOは2021年5月にノルウェーでの正規販売を開始するなど、ついに中国以外へと進出をはじめています。
いまはまだ自動車産業における小さな動きに過ぎませんが、今後徐々に中国自動車メーカーの海外展開も加速していくことでしょう。
※ ※ ※
中国の自動車産業が日本の自動車産業にとって大きな脅威となりつつあることは疑いようのない事実です。EV化が進めば進むほど、中国にとっては追い風になることでしょう。
一方で、日本の自動車産業が培ってきたさまざまなノウハウは、EVにおいても活用できるものです。
よいクルマとは、バッテリーのようなコア部品だけでできるものではなく、デザインや走行安定性、使い勝手、さらにいえば、販売やアフターサービスなども含めたトータルで成り立つものです。
日本の自動車産業の強みを最大限に活かしつつ、筆者は、さまざまな国や企業が切磋琢磨し、次の100年の自動車産業が形成されていくことを期待しています。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。






























































