ヤリス、ノートの猛攻でどうなる? トヨタ・ホンダ・日産の小型車合戦! 王者の座は誰の手に
国産コンパクトカーの代表的モデルとして、トヨタ「ヤリス」、ホンダ「フィット」、日産「ノート」の新型モデルが2020年に出揃いました。遅れて登場したノートが2021年に隠し玉となる「ノート・オーラ」を投入することで、2021年の国産コンパクトカー市場はどのような変化が見られるのでしょうか。
トヨタ対ホンダのコンパクトカー対決となった2020年
2020年は、国産コンパクトカーを代表する3車種がフルモデルチェンジを遂げた節目となる年でした。
トヨタ「ヤリス(旧ヴィッツ)」、ホンダ「フィット」、日産「ノート」が新しくなったことで、コンパクトカー市場にどのような影響があったのでしょうか。
2020年2月10日にヤリスがそれまでの日本での車名となるヴィッツから海外車名と統一される形で発売。その4日後となる2月14日には長年の間ヴィッツのライバルとして販売台数を競い合っていたホンダ「フィット」が4代目となり発売されました。
そして、ヤリスとフィットから遅れること10か月後の12月24日にはノートがハイブリッド専用車(e-POWER)となり発売されます。
日本自動車販売協会連合会の発表によると、ヤリスとフィットが発売された翌月である2020年3月それぞれの販売台数は、ヤリスが1万3164台、フィットが1万4845台でした。
ヤリスは、パワートレインにガソリン車(1リッター/1.5リッター)、ハイブリッド車(1.5リッター+モーター)、トランスミッションではガソリン車(6速MT/CVT)、ハイブリッド車(電気式無断変速機)が選択可能です。
また、駆動方式ではそれぞれに2WD/4WD(ハイブリッド車はE-Four)を設定し、グレード展開はガソリン車が4種類、ハイブリッド車が3種類となっています。
対して、フィットのパワートレインはガソリン車(1.3リッター)、ハイブリッド車(1.5リッター+2モーター)、トランスミッションはガソリン車が無段変速オートマチック(トルクコンバーター付)、ハイブリッド車(電気式無段変速機)、駆動方式はそれぞれ2WD/4WDを設定しています。
なお、フィットはグレードではなくタイプとして異なる特徴を持つガソリン車、ハイブリッド車それぞれに5種類を用意。
フィットのタイプは、シンプルな「ベーシック」を基本として、生活に馴染むデザインと快適性を備えた「ホーム」、アクティブに過ごしたいユーザーのための「ネス」、週末の外出などエンジョイライフに応える「クロスター」、そして、上質さを備えたスタイリッシュな「リュクス」です。
3月時点の販売状況について、ホンダ販売店のスタッフはこう話します。
「発売当初の受注状況は非常に好調で、約1か月で3万台の受注台数があったと記憶しています。
5タイプのなかではとくにハイブリッドのe:HEV HOMEが売れ筋でした。
担当したお客さまのなかには、ヴィッツやトヨタ『アクア』からの乗り換えされるお客さまも多くいらっしゃいました」
翌4月にはヤリスが1万119台、フィットが8977台と逆転し、5月はヤリスが1万388台、フィットが7235台と差が開いてきます。
5月以降は、ヤリスがフィットとの差を4000台から5000台でリードしているなか、8月31日にコンパクトSUV「ヤリスクロス」、9月4日にはスポーティモデル「GRヤリス」が公表される販売台数にヤリスとして加わりました。
これにより、9月の販売台数はヤリスが2万2066台、フィットが8992台とダブルスコアになるまで差が開いています。
9月の販売状況について、トヨタ販売店のスタッフは次のように話します。
「ヤリスを検討していた人や、同じコンパクトSUVの『C-HR』を検討していた人が、最終的にヤリスクロスを契約するということが多くありました。
シンプルでスタイリッシュなデザインなエクステリアや、安全装備も充実しているという点から、お客さまからのヤリス人気の声は非常に多かったように思います」
その後、12月になるまで両車種とも逓減していきますが、最後までヤリスのリードは崩れません。
振り返ってみると、フィットがヤリスをリードしていたのは3月のみということになります。
2020年8月31日のヤリスクロスの追加により売り上げが伸長した背景には、アウトドア嗜好のユーザーや、視点が高いほうが安心して運転できるという層を取り込めたと考えられます。
また、フィットのグレードのひとつであるクロスターは、フェンダーアーチなどの専用加飾を追加した3ナンバーのクロスオーバー風であることに対し、ヤリスクロスはヤリスとプラットフォームは同じもののボディ構造が大きくことなり、全長240mm、全幅70mm拡大しているため、別車種としてユーザーから認識されていたことも販売面で異なる部分です。
ヤリスは同じ名前であっても、万人受けのコンパクトカー、趣味性の高いコンパクトSUV、スパルタンなスポーツカーという3つの異なる種類のクルマを、異なるアプローチで開発し、生み出したといえます。
また、2001年から2019年までのフィットと、ヤリスと名を変える前の「ヴィッツ」の年間販売台数の動向をさかのぼってみると、通算19年中ヴィッツが5勝、フィットが14勝となっています。
歴史的に見てヴィッツは、フィットに辛酸をなめさせられてきた背景があるといえ、フィットとのライバル関係においては、ヤリスへのフルモデルチェンジは成功だったといえるでしょう。
ノートの記事では「割高」がクローズアップされるが、高性能ハイブリッド車として見ると全くそんなことは無い。
日産は現時点の体力から、安価なコンパクトカーは取り敢えず後回しとして付加価値の高い差別化技術で利益が取れるクルマに特化しており、その商品力はヤリスやフィットと比較しても充分に高い。結果として安いクルマを求める層には現時点で対応しないし出来無いカタチになった事を、メディアは掘り下げるべきでしょう。
ノートの記事では「割高」がクローズアップされるが、高性能ハイブリッド車として見ると全くそんなことは無い。
日産は現時点の体力から、安価なコンパクトカーは取り敢えず後回しとして付加価値の高い差別化技術で利益が取れるクルマに特化しており、その商品力はヤリスやフィットと比較しても充分に高い。結果として安いクルマを求める層には現時点で対応しないし出来無いカタチになった事を、メディアは掘り下げるべきでしょう。