誰もが心躍ったバブル・スポーツカー5選

いまだに世界中の自動車愛好家から注目度大のGT−RとNSX

 発売当初、初代NSXはトム・クルーズが購入するなど、世界のセレブにも認められるスーパースポーツとなりました。一方のR32型スカイラインGT−Rは、ツーリングカーレースなどで大活躍したこともあって、海外では「ゴジラ」と呼ばれるほどの人気があります。
 
 初代NSXとR32型GT−Rが世界に与えた衝撃は、現在では考えられないほどの大きさだったのです。

プロモーションのため欧州で撮影されたNSXは、もはや日本車の枠を超えた存在として当時の若者の目には映った
プロモーションのため欧州で撮影されたNSXは、もはや日本車の枠を超えた存在として当時の若者の目には映った

●日産「スカイラインGT-R」(BNR32型)、1989年8月デビュー

 1973年に初代GT−Rの流れをくむS20型エンジンを搭載して誕生した2代目GT−Rは、わずか3ヶ月ほどで生産が終了しました。その後、GT−Rの名前は1989年に登場する3代目スカイラインGT−Rの誕生までまたなければなりませんでした。

 搭載されるエンジンRB26DETT型・直列6気筒DOHC24バルブ+ツインターボの排気量は2.6リッター。スカGの伝統を守ったストレート6は、GT-Rとして初めてターボ化され、その最高出力は280馬力/6800rpm、最大トルク36.0kgm/4400rpmとなり、国内最強のエンジンのひとつでした。トランスミッションは5速MTのみを組み合わせます。

 ボディは1989年5月に8代目としてフルモデルチェンジしたスカイラインGTクーペに前後ブリスターフェンダーを与え、全幅とトレッドを拡大した全長4545mm×全幅1755mm×全高1340mm、ホイールベース2615mmの3ナンバーボディとなります。

 駆動方式および足まわりもきわめて凝ったシステムで、積極的に前後トルク配分を変える4WDの「ATTESA E-TS」に、4輪操舵の「SUPER HICAS」を採用しました。デビューの翌年、グループAのホモロゲーション車両として、軽量化などを受けた500台限定の「GT-R NISMO」が発売されます。

 1993年にマイナーチェンジを受けて、前後ブレーキローターを拡大したブレンボ製ベンチレーテッドディスクを装備、BBS製鍛造アルミにGT-R初の50%扁平225/50R17タイヤを履いた「V Spec」が加わりました。翌年にはタイヤサイズを245/45R17に換装した「V Spec II」となります。BNR32型GT-Rは1994年12月に販売を終了。GT-Rとして歴代最高の4万3661台の販売を記録しました。

●ホンダ「NSX」、1989年2月デビュー

 ホンダ「NSX」は、日本を代表するスーパースポーツと呼ぶにふさわしい1台です。1989年2月、米シカゴショーでアキュラ・ブランドとしてデビュー。まさに日本のバブル絶頂期にプロトタイプとして発表され、その翌年の1990年9月に市場に登場した新世代ミッドシップスポーツでした。

 NSXのボディ寸法は全長4430×全幅1810×全高1170mm、ホイールベース2530mm。オールアルミニウム製モノコック&ボディは車重1350kg(MT車)と軽量です。これは、4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションアームや支持部材、搭載エンジン、内装のシートレールやシートフレームなどもアルミ製とすることで達成しました。

 車幅こそ1.8m超でしたが、それ以外の寸法は当時大ヒットしていたデートカーと呼ばれたホンダ・プレリュードと大差ないサイズでした。

 NSXの心臓であるC30型エンジンは、3リッターV型6気筒DOHC24バルブエンジン。可変バルブタイミング&リフト機構「VTEC」を搭載しました。このホンダ独自の機構は、自然吸気エンジンで究極の性能を持たせるためのホンダの回答でもあったのです。

 その最高出力は、国内メーカー自主規制値であった280馬力/7300rpm(MT車)と265馬力/6800rpm(AT車)。最大トルクは30.0kgm/5400rpmを得ています。高回転まできれいに回るエンジンでしたが、低中速のドライバビリティも優れた、柔軟性の高いエンジンでもありました。

※ ※ ※

 バブル景気は国産車に多様性をもたらしました。それは、今回紹介したスポーツモデルにとどまりません。日産は「Be-1」などの一連のパイクカーを輩出しながら市場では“シーマ現象”を起こしました。
 
 トヨタは高級セダンの「セルシオ」を生み、ミニバンとしては「エスティマ」を発売します。
 
 スバルは6気筒ボクサーを搭載し、ジウジアーロがデザインした「アルシオーネSVX」を発売。NSXをリリースしたホンダは、一方で軽自動車でオープン2シーターの「ビート」も販売しました。
 
 今後このように多様なクルマが登場する時代がやってくるでしょうか。

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