「数ではなく『選ばれる理由』で勝つべき」マツダ毛籠社長が示す2030年へのビジョンとは 「新型CX-5」投入で不確実な時代を勝ち抜く
マツダが発表した2026年3月期決算は、米国関税の影響を受けつつも、下期の巻き返しにより営業利益516億円を確保しました。今期は新型「CX-5」の本格導入を柱に、反転攻勢へ打って出ます。
下期で巻き返し516億円の最終黒字に
マツダは2026年5月12日、2026年3月期の決算説明会を行いました。
毛籠勝弘社長は「当社は数を頼みに規模で勝つ会社ではなく、(顧客に)『選ばれる理由』で勝つべき会社」だとマツダのあるべき姿を表現。
そのためには「資本効率を高めながら独自価値を磨き続け、ブランド価値経営によって持続的な経営と企業価値の向上を実現する」とし「不確実な時代であっても、その不確実性の中で利益を出せる構造へ経営を着実に進化してまいります」と2030年代に見据えたマツダの方向性を示しました。
さらに、今期のキーファクターとしてグローバル市場における新型「CX-5」の重要性も強調しています。

では、決算に関する具体的な数字を見ていきましょう。
売上高は前期と比べて1007億円減って4兆9182億円。事業の儲けとなる営業利益は1345億円減の516億円となりました。
上期の厳しい状況を踏まえ、全社一丸となって経営の効率化に取組み、合わせて下期で欧米において新型CX-5が立ち上がったこともあり、黒字を確保できたと言えます。
販売台数は、122万3000台となり前期比で4%、数にして8万台減少しています。
仕向地別で見ますと、最も多い北米が3万5000台減の58万2000台、欧州が1万台減の16万4000台、日本が8000台減の14万4000台、中国が3000台減の7万1000台、そのほかの市場が2万3000台減の26万2000台。
そのほかの市場では、マツダの需要が多いオーストラリアで9000台減の8万9000台
となりました。
こうした販売台数の減少の主な要因は、やはり米国関税の影響です。
また、モデル別で見ますと、北米では「CX-30」の販売減、欧州では旧型(2代目)
「CX-5」と「マツダ2」の販売終了、さらに各市場での「マツダ6」の販売終了が影響しました。
また、中国市場全体での需要の大幅な落ち込みや、第二次トランプ政権の環境政策転換による電動車向け補助金の終了などによってプラグインハイブリッド車の販売が伸び悩んだという状況です。
一方で、日本への導入を求める声も多い「CX-50」がアメリカで販売を伸ばしたほか、欧州ではEV市場が再び成長軌道に乗り始める中で「マツダ6e」の導入が販売に効果を見せています。
ただし、第4四半期に入った2月には、中東情勢の悪化がグローバル市場に影響を及ぼしています。
次に、営業利益について深堀りします。
減益要因としては、米国関税影響が1549億円、台数減少で318億円、原材料・物流費等が377億円でした。
増益要因は、為替ではユーロを始めとする主要通貨に対する円安による106億円、コスト改善で369億円、さらに一般経費や品質費用を中心にマツダ一丸となって取組んだことで424億円に積み上がりました。
結果として516億円となりましたが、これは2月の通期見通しで公表した500億円から改善しています。

電動化投資を見直し、“選択と集中”
では、今期の見通しです。
グローバル販売台数は10万2000台増の132万4000台。理由としては、日本を含む各国で新型CX-5の導入が始まり、欧米では通期で新型CX-5の効果が続くと見ています。
欧州では復調の兆しがあるEV市場で、マツダとしてもEV販売増を見込んでいるほか、主力市場であるアメリカではマツダ3やCX-50のさらなる販売増が期待されます。具体的には、北米で4万7000台増、欧州で3万4000台増、日本で9000台増。
毛籠社長は「アメリカで展開する次世代店舗、約350店でCX-5販売への士気が高まっている。欧州では新型EVも立ち上げる」と販売増に期待を示しました。
これらの要因により、売上高は5818億円増えて5兆5000億円、営業利益は984億円増えて1500億円を見込みます。

決算説明に続いて、「2030経営方針に基づく取り組みの進捗」についても紹介し、その中で電動化戦略の見直しが明らかになりました。
事業構造転換については、外部環境変化に左右されにくい、安定的に利益を生み出せる事業構造への転換を着実に進めています。
対策としては従来通り、国や地域の実情に合わせてパワートレインの電動化を最適化するマルチソリューション戦略、電動化を含む今後の投資リソースを効率化するライトアセット・協業戦略、そしてブランド価値経営の3本柱を改めて強調しました。
その中で注目されるのは、ライトアセット・協業戦略です。電動化に伴う投資の在り方を抜本的に見直し、投資の選択と集中を実行します。
これにより、2022年11月公表時では、2022年から2030年までの投資総額をインフレによる想定費用を含めて2兆円としていましたが、2025年3月で1.5兆円に、さらに2026年3月には1.2兆円で最適化するというのです。

具体的には、マツダ自社開発中のEVの市場導入を2027年から2029年に変更。
また、「マツダEZ-6」と「マツダ6e」として導入した中国・長安汽車との協業を拡大し中国からグローバル市場向けにEVを展開します。
これにより2030年時点でEV販売台数を20万から25万台とし、これはグローバル販売の約15%に相当します。
また、CX-50で投入しているトヨタハイブリッドシステムについても、他モデルへの展開を進めます。
電池工場については、岩国工場の建設に着手しており、国内の完成車工場がある広島と山口の中間地点という位置を有効に使い、次世代電動化戦略の重要拠点としての役割を果たしていきます。
日本市場では、5月発売の新型CX-5への期待が高まっていますが、2030年以降のグローバル市場におけるEV市場拡大が想定される中、グローバル市場において当面の間、新型CX-5の重要性が高いことがわかります。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。















