斬新すぎる「水陸両用車」公開! “世界初”の画期的モデルは4輪&スクリュー搭載で「そのまま水にドボン」もOK! 日本で1台のみ!?な「アンフィカー」どんなモデル?
旧車を中心とするイベント「オートモビルカウンシル2026」で、非常に珍しい「水陸両用車」が展示されました。どのようなクルマなのでしょうか。
世界でも類を見ない「量産型水陸両用乗用車」
2026年4月10日から3日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された旧車を中心とするイベント「オートモビルカウンシル2026」に、どことなくボートのようなクルマ「アンフィカー」が置かれて来場者を驚かせていました。
どのようなクルマで、どのような理由で展示されたのかを探ります。
「水陸両用車」をご存知ですか。
読んで字のごとく、水上も陸上も“走れる”クルマのことです。
ところが自動車の長い歴史の中でさえ、軍用車や災害対応車、そして「ダックツアー」で用いる観光用のバスなどを除き、市販の量産乗用車として販売されたケースはほとんどありません。
理由はご想像のとおりで、一般的に需要がほとんどないことがあげられるでしょう。
ところが1960年代に、実に3800台以上を売り上げた水陸両用車が存在しました。
それが、1961年に登場した世界初の量産型水陸両用乗用車「アンフィカー(Amphicar)770」です。量産されたとはいえその台数は多くはなく、日本ではこれ1台かも、といわれる超希少車です。
そのアンフィカーがオートモビルカウンシル2026で展示され、大きな注目を集めました。

アンフィカーの開発を行ったのは、1930年代から水陸両用車に情熱を傾けたドイツ人のハンス・トリッペル。生産はIWK(Industoriewerke Karlsruhe AG、現:KUKA)が担当しました。
なおこの生産プロジェクトには、ドイツの大富豪で1950年代に経営危機にあったBMWを救い、今なお同社の大株主であるクヴァント家が関わっていました。
1950年代のクルマらしく、テールフィンを立てたアンフィカーの外観は、高い地上高、小さなホイールアーチ、車体長に比して短いホイールベース、長いフロントオーバーハングなど、一見して「ふつうのクルマ」とは大きく印象が異なります。
フロント下部が大きく斜めにカットされているのも、ボートっぽいイメージを強めています。
フロントにグリルはありませんが、これはアンフィカーがエンジンを後部に搭載したRRレイアウト(リアエンジン・リアドライブ)のため。横向きに開くエンジンフードの中には、英国トライアンフ製の水冷直列4気筒OHV「スタンダードSC」エンジンが縦向きに置かれています。
そしてそのまま車体後部の下に視線を移動すると、なんと2基のスクリューが目に入ります。これもまたアンフィカーが水陸両用車である証。これ以外にもボンネットやエンジンフードには航海灯や旗を立てるマスト、さらには汽笛なども備えています。
気になる運転および操縦方法は、思いのほか極めて簡単。
クルマとして走行するには通常の4速マニュアルトランスミッションを用いますが、水上ではそのギアをニュートラルに入れ、脇にある前後進レバーを動かすとスクリューが回転します。
舵は路上と同じくフロントタイヤが担うので、ステアリングを切って向きを変えます。水中内でのブレーキは、前後進レバーを切り替えてスクリューを逆回転にするとのことです。
アンフィカーはドイツ車ですが、発表は米国の「ニューヨークショー」で行われました。クヴァント家とトリッペルは、レジャーカーや働くクルマとしての側面が強い水陸両用車の活路を、北米に期待したためです。
事実、アンフィカーは約3000台がアメリカに輸出されました。
販売台数の見込みは2万台以上とされましたが、やはり北米でもそこまでの需要はなかったこと、高級車並みの価格だったことなどから1965年で生産を終了、1968年まで販売が行われました。
そしてアンフィカーは驚くべきことに、日本でもインポーターの「ウエスタン自動車」が5台輸入したとのこと。ただし今回展示されたのは、1990年代末に日本に上陸した個体だといいます。
この愉快なクルマを展示したのは、ポルシェやフェラーリなどのスポーツカーの共同オーナー型サービスを展開する「RENDEZ-VOUS(ランデヴー)」。
代表の浅岡 亮太氏によると、このアンフィカーは浅岡氏個人の所有で、買い物や日常でも使っているとのこと。レア度や特殊性が極めて高いだけに、さすがに共同所有の対象ではないものの、状況によっては検討もありうると笑って話してくれました。
アンフィカーをオートモビルカウンシル2026に持ってきた理由を聞いたところ、「アンフィカーは遊び心があり、唯一無二の存在。シンプルに、『よくわからないクルマだけど、みんなが笑顔になれる』このクルマの魅力を伝えたかった」と話しました。
ちなみに車内に積んであるオールは、「水上でクルマが壊れたら漕いで帰る」という「ガチ装備」です。
なおアンフィカー770という車名の由来は、水陸両用を意味する「Amphibious(アンフィビアス)」と自動車の「Car(カー)」を合わせた造語で、770は「水上を最高7ノット、陸上を70マイル(時速113km/h)で走れる」ことを意味しています。
気になることは他にもあります。水上で乗る場合の免許はどうなのか聞いたところ、やはり「小型船舶操縦士免許」は必要といいます。なお浅岡氏はすでにこちらは取得済みです。
ただし、船舶としての登録は難しいようで、臨時に航行できる許可を得ているとのこと。浅岡氏も「今後は実際に水上に入って走らせてみたい」と語っていました。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。


































