スポーツカーの代名詞「リトラ」なぜ消えた? 夜に「パカっと開くライト」が憧れだった! 今のクルマに無い“ロマン装備”まさかの再評価で「復活の可能性」も!?

昭和から平成初期にかけて、クルマ好きの心を鷲掴みにした「リトラクタブルヘッドライト」。この魅力的な装備はなぜ消滅してしまったのでしょうか。また、今後リトラクタブルライトが新車で復活する可能性はあるのでしょうか。

スポーツカーの代名詞「リトラ」なぜ消えた? 再評価で「復活の可能性」も!?

 昭和から平成初期にかけて、“スポーツカーの代名詞”といえば、低いボンネットからパカッと現れる「リトラクタブルヘッドライト(通称:リトラ)」でした。

 トヨタ「スプリンタートレノ(AE86)」やホンダ「NSX」、マツダ「RX-7」、さらには海外のスーパーカーなど、数々の名車がこぞって採用し、クルマ好きの心を鷲掴みにしました。

 SNSやインターネット上でも、当時のクルマを懐かしむ声は後を絶ちません。

「夜間にライトを点灯させる際の、あのウィーンというモーター音とともに起き上がるギミックが最高だった」「空気抵抗を減らすための極端に低いノーズと隠しライトの組み合わせは今見ても素直にカッコいい」といったコメントが多く見受けられ、現在でもリトラクタブルライトには根強いファンが存在しています。

 しかし、2000年代に入る頃から次々と姿を消し、現在の新車市場ではこのリトラクタブルライトを採用しているクルマは一台もありません。

 一体なぜ、あの魅力的な装備は消滅してしまったのでしょうか。

 最大の理由は「歩行者保護」という安全性の観点です。

 リトラクタブルライトは、展開した際にボンネットの上に角ばった構造物が飛び出す形になります。

 万が一、歩行者と衝突する事故が起きた場合、この飛び出したライトの角が歩行者に深刻なダメージを与えてしまう危険性が高いのです。

リトラクタブルライトを装備したホンダ「NSX」[Photo:Collecting Cars]
リトラクタブルライトを装備したホンダ「NSX」[Photo:Collecting Cars]

 近年、クルマの安全基準が世界的に厳格化し、歩行者保護性能を高めることがメーカーに強く求められるようになったため、突起物となる開閉式ライトは生き残ることが難しくなりました。

 二つ目の理由は「空力性能と重量のジレンマ」です。

 ライトを格納している昼間は空気抵抗を減らせるというメリットがあったものの、いざ夜間にライトを点けて走行すると、飛び出したライトユニットが空気抵抗(空気の壁)を生み出すのです。

 また、重いライトを開閉させるためのモーターやリンク機構などの金属部品が必要になるため、スポーツカーにとって最大の敵である「重量増」を招くという矛盾も抱えていました。

 くわえて、構造が複雑な分、「片方だけライトが開かない」といった故障のリスクもありました。

 三つ目の決定的な理由は「ヘッドライト技術の進化」です。

 かつてのクルマは、夜間に十分な光量を確保するために、大きなガラス製のレンズと反射板が必要でした。

 そのため、スポーツカーらしい低いボンネットデザインを実現するには、大きなライトユニットごと内部に隠してしまうのが一番手っ取り早い方法だったのです。

 しかしその後、プロジェクターライトや、極めて小さくても強烈な明るさを持つLEDヘッドライトが登場。

 ライト自体を極限まで薄く、小さく作れるようになったため、わざわざ重くて複雑な機構を使ってライトを隠す必要性が根本からなくなってしまったのです。

 それでは、今後リトラクタブルライトが新車で復活する可能性はゼロなのでしょうか。

 現在の日本の保安基準において、リトラクタブルライト自体を禁止する法律はありませんが、厳しい歩行者保護基準をクリアしつつ開閉機構を設けるのは、技術的にもコスト的にも至難の業であり「実質的に復活は不可能」と長年言われてきました。

 しかし近年、そんな常識に一石を投じる存在が現れました。

 マツダが2023年秋に開催された「ジャパンモビリティショー2023」で発表した次世代スポーツカーのコンセプトモデル「アイコニックSP」です。

 美しいプロポーションを持つこのモデルは、極めて低いフロントノーズに、なんと現代的な解釈を加えた「開閉式ヘッドライト」を採用していました。

 マツダによれば、コンパクトなロータリーEVシステムを採用したことでボンネットを極限まで低く抑えることができ、そこに最新の薄型LED技術を組み合わせることで、歩行者保護などの要件も視野に入れた上で、ごくわずかな隙間から光を放つシームレスな開閉ライトをデザインしたといいます。

 この発表に対し、ネット上では「まさか令和の時代にリトラの新作が見られるとは!」「このまま市販化してくれたら絶対に買う」「メーカーがリトラのロマンを捨てていなかったことが嬉しい」と歓喜の声が殺到しました。

 一方で、「コンセプトカーだからできる芸当で、市販時は普通の固定式ライトになりそう」という冷静な見方もあります。

 実際に市販化される際には、厳しい安全基準という高い壁が立ちはだかります。

 しかし、最新技術を用いればリトラクタブルライトの復活も決して夢物語ではないという可能性を、アイコニックSPは示してくれました。

 過去の遺物と思われていた開閉式ライトが、再び現代の道路を照らす日が来るのか、多くのクルマ好きが熱い期待を寄せています。

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Writer: くるまのニュース編集部

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