“走り心地”がさらに進化! HKS 新型「HIPERMAX S」が”フラットライドコンセプト”を掲げてリニューアルしたのでさっそく試乗してみた
約5年ぶりに進化したHKSの車高調「HIPERMAX S」。耐久性や質感の向上に加え、走行性能も大幅にアップデートされました。ワインディングロードでの試乗を通して、その“走り心地”の進化を山本シンヤさんがリポートします。
ターンパイクでガチ試乗! 3台の特性はノーマルとどう違う?
1台目の試乗はトヨタのGR86です。このモデルはHKSのスーパーチャージャーキットが装着されており約300psのスペック、タイヤはアドバン・フレバが装着されています。

その印象は「GR86とBRZのいいとこ取り+α」です。具体的には回頭性はGR86のA型のような切れ味とBRZのSTIスポーツのようにリアがドシッと構えたスタビリティの良さが違和感なく連続的に融合。つまり、「ワクワクするけどドキドキしない」味付けです。
さらにノーマルよりも前後左右の姿勢変化が抑えられているにもかかわらず、ローダウンを忘れるストローク感が備えられているので、路面を問わずしなやかなのに吸い付くような走りが可能でした。
乗り心地はノーマルよりバネレートは高いものの、初期入力を上手に逃がしているのと、抑え込むのではなく“いなし”を効かせた減衰により快適性はむしろノーマルより高く、シットリした足の動きも相まって動的な質感も高められていたのは、ビックリ!!
実は「試乗前は300psでストリートサス、意外とじゃじゃ馬なのかな?」と予想していましたが、乗ると良く調教されたサラブレッドで「そのままサーキットに持ち込んでも悪くないな」と思うポテンシャルでした。
2台目はホンダのシビック・タイプR(FL5)で、タイヤはアドバン・エイペックスを装着。純正でZF製アダプティブサスペンション装着なので、試乗前は「総合的なノーマル越えは厳しいか?」と思っていましたが、走らせると……。その印象は「新旧タイプRの融合」です。
具体的には旧世代のタイプRのような薄皮を剥いだようなダイレクト感と、新世代タイプRのしなやかさと懐の深さを両立。FFながらアンダー知らずでノーズがインに吸い込まれるように旋回するノーマルの良さはそのままに、より自然、より滑らかに曲がっていきます。例えるならばフロントヘビーな前後バランスが整い、リアタイヤをより使ったコーナリング。その結果、舵(だ)角も少ないので、楽に、安定して走ることができました。
乗り心地はノーマルにあるドライブモード「コンフォート」と「スポーツ」の中間といった印象で、動き過ぎず抑え込みさせ過ぎない絶妙な足の動きと、GR86と同じく初期入力を上手に逃がし、抑え込むのではなくいなしを効かせた減衰の合わせ技により、メカサスとしてはかなり理想に近いセットかな……と。
個人的には走りと快適性のバランスがRの中で最良だと思っている、アコード・ユーロRを思い出すような乗り味でした。
最後はWRX STI(VAB)で、タイヤはアドバン・エイペックスを装着。上記の2台と異なり世代がちょっと古いモデルですが、新時代のサスとの組み合わせで伸び代はあるのでしょうか?
その印象は「より骨太になったSTIコンプリートモデル」です。具体的にはサスペンション可動部がより自然に動いている印象で、例えるならば緊張していた筋肉がほぐれて強さの中にしなやかさがプラスされています。特にリアサスの動きは激変レベルで、リアがシッカリ仕事をしてくれることで、ノーマルは力技で曲げていたのに対してより自然、より素直な旋回になっています。
ただ、HKS推奨値だとワインディングではややリアが動き過ぎだったので、リアを1段硬めにすると落ち着きがアップ。ただ、それだとステアフィールが希薄になるので、フロントを1段硬めに調整。すると、ステアフィールは良くなったがリアのしなやかさが…‥…とどんどん沼にハマっていきました(汗)。しかし、いろいろ試しながら「マイベスト」を見つけるのも、楽しいことです。
乗り心地は動きが渋い上にヒョコヒョコと落ち着かない感じが消え、最新のレヴォーグのようなしなやかさとアタリの優しさプラス。コンペティションマシンからロードカーに変貌……といった印象でした。
走る場所・路面を問わないマルチパフォーマー!
そろそろ結論にいきましょう。今回3台の新HIPERMAX S装着車に乗って感じたのは、ノーマルの良さを損なうことなく走りがレベルアップしていることと、ストリートがメインのサスペンションながらも「サーキットもイケるだろう」と感じさせるポテンシャルを備えていることでした。要するに走る場所・路面を問わないマルチパフォーマーだということです。

このあたりをサスペンション開発課の矢部健司氏に聞くと、「われわれはノーマルを否定するのではなく、リスペクトした上で独自の性能をプラスさせています。その1つが走りだけでも、快適性だけでもない『走り心地』の思想です。それは限界域の性能だけでなく、サスの動き始めや素直なクルマの動きといった過渡領域の性能も磨き上げないとたどり着きません。その実現のためには、シミュレーターや実車テスト、大学との共同研究(気持ちいい走りの数値化)『自社開発』と、極めて細かいセットをすぐに形にできる『自社生産』のこだわりも大きいです」と教えてくれました。
以前、従来品のHIPERMAX Sに乗った時、「サードパーティーのサスペンションで“乗り味”について語る日がやって来るとは」と思いましたが、新HIPERMAX Sはそれがより奥深く、より懐深く、そしてより味わい深くなっています。
一般的にサスペンション交換の目的は「ハンドリング向上」、「快適性向上」が主ですが、HIPERMAX Sはそれに加えて「乗り味」も大きく引き上げるサスペンションと言っていいと思います。
そんな「走り心地の進化」に感銘した筆者は愛車GRヤリス(24式)に新HIPERMAX Sを装着しています。車高はこだわりのノーマル比マイナス10mm、減衰は高速移動が主なのでHKS推奨(フロント:15、リア:15)ではなくフロント:22、リア:22に調整。
その走りはGRヤリスとLBX MORIZO RRのいいとこ取りの「グランドツアラー」といったモノです。先日GRヤリスMORIZO RRが登場しましたが、未試乗ながらも個人的には「乗り味は負けていない!!」と思っております。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
















































