1リッターで“47km”走る!? “全長3.5m”のトヨタ「ちいさな“3ドア”ハッチバック」! ディーゼルターボ搭載の超低燃費マシン「ES3」とは
2001年に登場したトヨタのコンセプトカー「ES3」。リッター47kmという驚異的な燃費を達成しながら、なぜ市販されることはなかったのでしょうか。
ガソリン高騰の今欲しい超低燃費車!
トヨタ「ES3(イーエス・キュービック)」は、2001年の東京モーターショーなどで公開されたコンセプトカーです。
その名は「Eco Spirit Cubed」を象徴し、超低燃費、低エミッション、先進的なリサイクル技術という3つの要素を高い次元で結集した、トヨタの未来へのビジョンを示す一台でした。
ES3が目指した驚異的な燃費性能は、車両全体を一つのシステムとして捉える包括的なアプローチの産物でした。その核心は、徹底した軽量化、卓越した空力性能、高効率なパワートレインという3つの要素を高い次元で融合させることにありました。
この開発思想は、奇しくもES3が登場する2年前に発売された初代ホンダ「インサイト」と軌を一にするものでした。
インサイトもまた、「パワーユニットの高効率化」「空力性能の追求」「車体の軽量化」を三本柱とし、アルミボディによる軽量化(820kg)やCd値0.25という空力性能を達成していました。21世紀の究極の低燃費車という同じ頂を目指しながら、パワートレインにおいて「ハイブリッドのホンダ」と「ディーゼルの可能性を追求したトヨタ」という異なる道筋を描いたのです。
ES3は、まず「軽量化」において700kgという驚くべき車両重量を実現しています。ボディはアルミニウムと樹脂を主体に構成され、植物由来のバイオプラスチックなども採用されました。この思想は、後のトヨタの設計思想「TNGA」を先取りするものでした。
次に「空力性能」です。全長3520mm×全幅1630mm×全高1460mmというコンパクトなボディは、空気抵抗を極限まで低減するために機能的な形状が追求されました。その結果、Cd値(空気抵抗係数)は0.23という驚異的な数値を達成しています。
そして、これらの土台の上に「パワートレイン」が成り立っています。ES3には1.4リッターの直噴ディーゼルターボエンジンとCVTが搭載されました。

また、ハイブリッド車ではありませんでしたが、「ハイブリッド車開発技術の応用」として、エンジン自動停止や減速エネルギーを回収するシステムも盛り込まれていました。
これほどまでに先進的だったES3が、なぜ市販されなかったのでしょうか。
法外な製造コストなど複数の要因がありましたが、市場環境も大きな障壁でした。当時の日本国内にはディーゼル乗用車への逆風が吹いており、市場がほぼ存在しなかったのです。
興味深いのは、同時期の欧州では全く逆の動きがあったことです。2000年にはフランスのプジョーが世界に先駆けDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)を標準装備したモデルを発売するなど、欧州メーカーはディーゼルを「クリーン化」して積極的に推進していました。
つまりトヨタは、欧州の主流であったクリーンディーゼル路線という選択肢がありながら、それを選ばなかったのです。市販化が見送られた究極の理由は、トヨタの全社的な戦略にありました。
当時、初代「プリウス」の成功でハイブリッド技術の世界的リーダーとなっていたトヨタは、欧州の主流とは異なる「ハイブリッド」という技術にグローバル戦略の舵を切るという、意識的な経営判断を下していました。
市販はされませんでしたが、ES3の思想と技術は後のトヨタ車に大きな影響を与えています。
その精神は、徹底した空力性能と燃費を追求した「アクア」や、TNGAプラットフォームによる軽量・高剛性ボディを基本とする現代の「ヤリス」に、色濃く受け継がれていると言えるでしょう。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。









