「二度と駐車できないようにタイヤをロックしたい」その怒り、実は違法!? 過去には「自力救済」が認められた極めて稀なケースも 無断駐車への正しい対処法とは?
自身が利用する月極駐車場に見知らぬクルマが無断駐車していて、困った経験をしたことがあるドライバーもいるでしょう。こうした場合、どのように対処すべきなのでしょうか。
勝手に動かすのはNG?
日々の暮らしの中で、SNSやニュースを通じて私有地や契約駐車場での無断駐車トラブルがしばしば話題となります。
自分が契約している駐車スペースに、見知らぬクルマが停まっているのを発見した際、多くの人は驚きと同時に強い怒りを感じるでしょう。
無断で駐車する側には、区画を単純に間違えた、あるいは駐車可能な場所だと誤解していたという過失のケースもあります。しかしながら、「短時間なら問題ないだろう」「いつも空いているから大丈夫だ」といった、非常に自己中心的な考えから確信犯的に駐車している事例も少なくありません。
被害を受けた側は、本来使用できるはずの場所に自分のクルマを停められず、慌てて近隣のコインパーキングを探すといった事態に陥ります。その結果生じる余計な出費や手間、そして何より自らの権利が侵害されているという精神的なストレスは大きなものになります。
このような理不尽な状況に直面すると、「レッカー車を呼んで強制的に移動させたい」「二度と駐車できないようにタイヤをロックしてしまいたい」と考えるのは、被害者として自然な感情かもしれません。

しかし、ここで冷静に考えなければならないのが、法律における「自力救済」が原則として禁止されているというルールです。自力救済とは、裁判所といった公的な手続きを経ずに、個人の実力行使によって侵害された権利を回復しようとする行為を指します。
現代の法治国家では、この自力救済は認められていません。もし個人が自由に実力で問題を解決することを許可すれば、力の強い者が暴力的な手段で解決を図るようになり、社会全体の秩序が崩壊する危険性があるためです。
たとえ相手に明らかな悪意があり無断駐車をしていたとしても、許可なくレッカー移動やタイヤロックといった措置を講じると、相手から「クルマに傷をつけられた」「業務で使えなくなり損害を被った」と逆に訴えられ、損害賠償を請求されるという、被害者がさらに不利な立場に置かれる可能性があります。
2022年には、横浜地方裁判所の庁舎出口前に数日間にわたりクルマが放置される事件がありましたが、法を司る機関の前であっても、即座に強制排除することが難しいのが日本の法律の現状です。
では、被害者はただ耐えるしかないのでしょうか。実は、過去には極めて稀なケースですが、自力救済が認められた判例も存在します。
1965年(昭和40年)の最高裁判決では、自力救済は原則禁止としながらも、「法律の手続きを待っていては、権利を守ることが著しく困難であるといった、緊急かつやむを得ない特別な事情がある場合」に限り、必要最小限の範囲で例外的に許容される可能性が示されました。
この「特別な事情」が認定された代表的な事例が、1988年(昭和63年)の横浜地方裁判所の判決です。この事案では、マンションの前に3か月という長期間にわたって無断駐車が継続していました。住民側は所有者に対し何度もクルマの移動を要請し、督促を繰り返しましたが、所有者は一切応じませんでした。最終的に住民がそのクルマを処分したところ、所有者が損害賠償を求めて裁判を起こしました。
しかし裁判所は、長期にわたる放置と度重なる督促を無視した事実を考慮し、住民側には「やむを得ない事情」があったと判断し、所有者側の請求を退けました。これは、単に数時間駐車されたというレベルではなく、考えうるあらゆる手段を講じても解決しなかった極限の状況下で、例外が認められたことを意味しています。
Writer: くるまのニュース編集部
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