約99万円で買えた「8人乗り」! スズキの「めちゃ安いミニバン」が凄かった! 全長3.2mサイズに「超・シンプル装備」で割り切りすぎ! “日常の足”にイイ「ボラン」パキスタン車に注目

途上国では、日本ではもう見かけなくなった古いモデルが継続販売されるケースがあります。その代表例が、2025年までパキスタンで販売していたスズキ「ボラン」です。超シンプル装備で低価格を実現したこのクルマは、どのような特徴を持っているのでしょうか。

40年以上販売を続けた質素なコンパクトバン

 電動化や先進運転支援機能の搭載など、急速に進化する現代のクルマですが、そうした機能が不要な途上国市場では、日本では姿を消した旧型モデルが販売され続けているケースがあります。

 そのひとつがスズキの「ボラン」というコンパクトバンです。このクルマは1982年に登場し、パキスタンでは2025年までの実に40年以上もの間、販売されてきました。

パキスタンで40年以上販売した「ボラン」
パキスタンで40年以上販売した「ボラン」

 ボランは1982年に誕生したコンパクトバンで、スズキのパキスタン法人「パック・スズキ」が製造販売しています。非常に古めかしいデザインですが、2025年の秋頃まで新車として購入可能となっていました。

 このクラシカルな見た目に見覚えがある方もいるかもしれませんが、実はボランは、日本で1982年に登場した軽商用バン「エブリイ」初代モデルがベースになっているからです。

 日本では現在6代目まで進化を遂げたエブリイですが、パキスタンでは40年以上経過した今でも、ほぼ原型のまま残り続けていました。

 ボディサイズは全長3255mm×全幅1395mm×全高1845mmで、ホイールベースは1840mm。乗車定員は標準で5人乗り、オプションで8人乗りも設定されています。これは日本の初代エブリイとは異なる点です。

 当時の軽自動車規格そのままのサイズであるため、非常にコンパクトで、現地のカラチやペシャワールのようなスラム街でも取り回しがしやすい特徴があります。

 外観デザインは初代エブリイそのままで、装飾を極限まで省いたシンプルなものになっています。

 大きな角型2灯のヘッドライトに塗装なしの黒バンパーという質素な外観で、両ライトの間にはグリル風のガーニッシュが付いており、わずかに現代的な印象を与えています。

 スライドドアは開口部の小さな手動式で、給油口はリッドがなく、キャップがそのまま外に露出している仕様です。現在では懐かしい装備となったサイドマーカーがピラー部に備わっており、モールなどの装飾類は一切ありません。

 内装も実用性を最優先した簡素なもので、装飾は皆無といえます。布張りはおろか、一部のトリムは省略され、外板がむき出しになっている部分もあります。ダッシュボードは樹脂のかたまりのような形状で、エアコンの吹き出し口もありません。

 収納スペースは助手席の小型グローブボックスと、運転席のドリンクホルダーのみという最小限の設定。インストルメントパネルの上部はトレイ状になっており、小物を直接置けるようになっています。

 メーターも非常にシンプルで、最高速度表示120km/hのスピードメーターと燃料計、水温計、いくつかの警告灯だけが装備されているのみと、提供される情報には限りがあります。

 ステアリングはエアバッグが装備されていないウレタン製の4本スポークで、レザー巻きもなく、ステアリングスイッチなども当然備わりません。

 ただし、最新モデルでは若干の仕様変更があったようで、シートやドアにブルーのアクセントカラーを採用し、多少の清潔感を出す工夫がされています。

 装備面も非常に簡素で、先進運転支援機能はもちろん、パワーウインドウさえも装備されていません。最低限のフロントシートベルトは標準装備されていますが、リアシートにはオプションでも選択できません。

 エアコンは現地の気候を鑑み、オプション設定となっています。

 注目すべき点として、ラジオデッキがBluetoothやUSB接続、MP3再生に対応していることが挙げられます。また、盗難防止のイモビライザーも装備されており、この点だけは初代エブリイ発売当初と比べて飛躍的な進化を遂げたといえるでしょう。

 パワートレインは、最高出力37馬力・最大トルク62Nmを発揮する796ccの直列3気筒エンジンに4速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、後輪駆動方式を採用しています。燃費性能は市街地走行で12km/L、高速走行では13〜14km/Lとされています。

 ラインナップには5人乗りの乗用タイプを基本に、最大積載量550kgを確保した2人乗りの商用タイプも用意されています。先述のようにエアコンや8人乗りオプションも設定されており、現地価格は194万パキスタンルピー(約99万円)からとなっています。

 パキスタンの新車レビューサイトでは、さすがに古さを隠しきれないとの評価が目立ちますが、贅沢な装備は一切不要な「単なる移動手段」として割り切って使うなら、ある程度の魅力があるといえるでしょう。

 また、近年のネオクラシックカーブームを考えると、こうした実用に特化したデザインの旧いモデルは、パターン化した現代のクルマにはないデザインであり、一部のクルマ好きにはウケそうです。

※ ※ ※

 スズキは2024年10月にボランの後継となる「エブリイ」をパキスタンで発表し、11月から販売を開始しています。しかし、価格は1.5倍以上と大幅に高額になってしまいました。

 2025年7月頃までは、パキスタンの一部ディーラーでボランの新車在庫が残っていましたが、2025年12月に調べたところ、残念ながら多くのディーラーで終売となっています。

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Writer: 伊勢崎剛志

自動車販売から自動車雑誌編集部を経て、ライターとして独立。趣味も多彩だが、タイヤが付いているものはキホン何でも好きで、乗りもので出かけることも大好物。道路や旅にも精通し、執筆活動はそういった分野をメインに活動。

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