日産の斬新「“2列6人乗り”ワゴン」が凄い! “前席3人乗り”シート&「リッター23キロ」走るメーカー初の「低燃費モデル」も! 全長4.3mちょうどいいボディの「ティーノ」って?
近年コンパクトミニバンの人気が高まっています。新型車が注目される一方で、過去には現代にも通じる先進性を持ったモデルが存在しました。日産「ティーノ」はその代表格で、短命ながら革新的なアイデアを数多く搭載していました。今改めて振り返る価値のある一台です。
革新的なレイアウトとパワートレイン―挑戦が詰まった1台
自動車市場では近年、電動化や安全装備の進化が急速に進み、各社が新型車を続々と投入しています。
なかでも、家族での移動手段として使い勝手の良いコンパクトミニバンは依然として人気が高く、最新型トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」には長納期が発生するほどの注目が集まっています。
こうした現在の状況を見ると、かつて存在した一台の先駆的モデルが、改めて光を当てられるべきではないかと感じさせられます。

そのクルマこそ、日産が1998年に発売した「ティーノ」です。ティーノが登場した当時、日本の自動車市場はRV人気が落ち着き、家族で使える実用車が求められ始めた時期でした。
日産はそうした流れをいち早く読み取り、乗用車の使い勝手とミニバンの広さを両立したまったく新しいカテゴリーのモデルとしてティーノを登場させました。
「オールマイティーノ。」というユニークなキャッチコピーが示す通り、日常使いからレジャーまで幅広い用途を想定した一台でした。
ボディサイズは全長4270mm×全幅1760mm×全高1610mmと3ナンバーながら取り回しがしやすい寸法にまとめられ、当時のコンパクトカー「サニー」をベースに新設計されたプラットフォームを採用していました。
そのサイズ感は現代のコンパクトミニバンに近く、先見性の高さがうかがえます。特に室内幅1500mmという余裕のあるキャビンは、2列すべてに3人が座れる空間を生み出し、ミニバンとしての機能性を強く打ち出していました。
ティーノを語るうえで外せないポイントが、前列3人+後列3人という“3+3”のシートレイアウトです。
このレイアウトは2004年に登場したホンダ「エディックス」を連想させるものですが、両車には明確な違いがありました。
エディックスが全席独立シートだったのに対し、ティーノは前席がベンチシート、後席が独立式という構成を採用しています。
さらに、コラムシフトと足踏み式パーキングブレーキを組み合わせることで前席足元に大きな空間が生まれ、ウォークスルーを可能にしていました。
当時としては非常に斬新で、ミニバンというジャンルの可能性を広げようとした意欲が感じられます。
実用性にも徹底してこだわっており、後席を倒すと商用車並みのラゲッジスペースが確保できました。
さらに後席は工具不要で取り外すことができ、車検証の記載変更も必要ありませんでした。
こうした柔軟な使い方ができる点は、現在の人気モデルにも通じる重要な要素であり、ティーノがその原型を提示していたと言えるでしょう。
パワートレインには1.8リッターと2リッターの直列4気筒エンジンが用意され、価格は1.8リッター車が169万7000円から、2リッター車が189万6000円でした。
そしてティーノには、もう一つ特筆すべき仕様があります。それが日産初のハイブリッド車となった「ティーノ ハイブリッド」です。
わずか100台限定の希少モデルで、1.8リッターエンジンにモーターとリチウムイオン電池を組み合わせたハイブリッドシステムを採用していました。
10・15モード燃費は23.0km/Lと、同時期のガソリン車の倍以上という高効率を実現しています。
トヨタ初代プリウスの28.0km/Lには及ばなかったものの、その数値は当時の技術力を考えれば非常に優秀で、日産がハイブリッド分野に早くから挑戦していたことがわかります。
しかしティーノは、革新的であったがゆえに市場の理解を得られなかった部分もあります。
最大の特徴であった6人乗り仕様は、ユーザーからの支持を得られず、2002年のマイナーチェンジで廃止され、従来型の5人乗りに一本化されました。
結果として2003年には日本での販売が終了し、その後2021年にノートオーラが登場するまで、日産から3ナンバーサイズのコンパクトカーは姿を消すことになります。
わずか5年弱という短命で終わったティーノですが、現代の視点で振り返ると、多くのチャレンジが詰まった意欲的なモデルだったことがよくわかります。
特に、限られたサイズの中で最大限の居住性と機能性を追求する姿勢は、現在のコンパクトミニバンが重視している価値そのものです。
いま再びコンパクトミニバンが人気を集める中で、ティーノが示したアイデアは再評価されるべきでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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