不具合多発… 「中国製・EVバス」なぜ今リコール? 2年前から把握? 「ブレーキ欠陥」と現場が震える実態、何が起こっているのか
EVモーターズ・ジャパンは2025年11月28日、国交省の指摘を受けついにEVバスのリコールを届け出た。対象はブレーキホースだが、実は2年以上前から不具合を把握しつつ、その場しのぎの対応を続けてきた実態がある。度重なる事故や虚偽報告疑惑が渦巻く中、今回の「対策品交換」だけで安全性は本当に確保されるのだろうか。
EVモーターズ・ジャパンはなぜ今リコールを届け出た?
2025年11月28日金曜日午後2時、中国3社からEVバスを輸入販売するEVモーターズ・ジャパンはかねてから噂があったリコールを国交省からの指摘を受けて届出をしました。
今回のリコールは重要保安部品であるブレーキホースの不具合です。
これまでの経緯を含めて解説していきます。

EVモーターズ・ジャパンは自動車メーカーではなく、インポータ(輸入業者)になります。
日本での登録のスタイルは「並行輸入」として新規検査(ナンバーを付けるための最初の車検)を受けていますが、中国のバスメーカー3社と直接契約しているため輸入方法としては「正規輸入」です。
ただし、EVモーターズ・ジャパンのバスメーカー3社に関しては、中国政府による輸出許可を有しているかという点をジェトロ(日本貿易振興機構)や中国商務省にも問い合わせましたが、該当なし。
正規の輸出許可を得ているかどうかは不明です。(2017年から電気バスも対象)
そんなEVモーターズ・ジャパン(EVMJ)が輸入販売するEVバスを巡り、深刻な欠陥と組織的な隠蔽疑惑が露呈しています。これまでの主な経緯は以下の通りです。
発端は2025年9月1日、大阪で発生したオンデマンドバスの単独事故です。EVモーターズ・ジャパン側は当初「運転手の不注意」と主張しましたが、実際は車両の制御不能が原因でした。これを受け、国交省は9月3日、同社が扱う300台以上のバスに対し「全台点検」を指示しました。
しかし、その後の点検でもブレーキ等の重要保安部品に不具合が見つかったにもかかわらず、EVモーターズ・ジャパンは事業者(大阪メトロ等)に対し「異常なし」と虚偽報告を行っていた疑いが持たれています。
大阪・関西万博の現場などでは、ドライバーが乗務を拒否するほど不具合が日常化しているとのことです。
こうした状況を受け、9月26日には環境省が同社製バスへの補助金申請に対し、異例の警告文を出しました。高額な補助金を目当てに導入が進んでいましたが、車両がまともに稼働できない場合は補助金返還の可能性も示唆されており、安全性軽視と公金利用の在り方が問われています。
そんなEVモーターズ・ジャパンですが、今回リコールを届出をしました。なお、国交省では「リコール制度」を以下のように定義づけています。
「設計・製造過程に問題があったために安全・環境基準に適合していない(又は適合しなくなるおそれがある)自動車について、自動車メーカーや輸入元が自らの判断により、国土交通大臣に事前届出を行った上で、回収・無料修理を行い、事故・トラブルを未然に防止する制度」

こうしたリコール制度ですが、今回のEVモーターズ・ジャパンのリコール内容で、特に注目すべきは届出一覧表にある、以下の部分です。
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1.不具合の部位(部品名)⇒ 制動装置(ブレーキホース)
2.基準不適合状態にあると認める構造、装置又は性能の状況及びその原因
前輪ブレーキホースにおいて、ブレーキホースの取り回しの設計検討が不十分なため、ハンドル転舵時に車体等へ接触することがある。そのため、そのまま使用を続けると、ブレーキホースが損傷し、最悪の場合、ブレーキホースに穴が空き、制動力が低下するおそれがある。
3.改善措置の内容⇒全車両、ブレーキホース一式を対策品に交換する。
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2.の基準不適合状態の状況や原因には、「ブレーキホースの取り回しの設計検討が不十分」とあります。
また改善措置の内容としては3.に全車両のブレーキホース一式を対策品に交換する、と記されています。
なお、「リコール届出一覧表」には記載がありませんが、「ブレーキホース一式を対策品に交換する」の中には、メーカーであるWISDOM社による設計変更も含まれるとのこと。
さすがに今回はその場しのぎの対応ではなく、設計変更まで考えられているようです。
実はEVモーターズ・ジャパンのEVバスは多数の不具合を抱えており、ブレーキホースに関しても2年以上前からバス事業者から不具合が報告されており、EVモーターズ・ジャパンは個別にその場しのぎの対応を行ってきました。
2年以上前からこのような危険な不具合を把握していたにも関わらず、やっとリコールの届出が今になって実現したのです。


















