不具合多発… 「中国製・EVバス」なぜ今リコール? 2年前から把握? 「ブレーキ欠陥」と現場が震える実態、何が起こっているのか
これまでのブレーキホース不具合にありえない対応をしてきてた!
これまでの不具合に対してはどのような対応をしてきたのか。
EVモーターズ・ジャパンの関係者やバス事業者、整備業者に取材した内容をまとめました。
「今回のリコール対象はウィズダムの小型85台だけですが、実は始まりはウィズダムの大型です。
万博会場周辺のシャトルバスを含めて、全国に合計163台(2025年3月末時点)が納入されています。最初の異変は2023年秋に大型で発覚しました。
ブレーキホースの素材が低品質で耐久性がなかったことに始まるのですがブレーキホースの配置が悪く普通に使っていても車体に当たるような設計になっていました。
根本を保護するスプリングがバラけてホースに当たっていました。
素材を頑丈なものに変更したのでホースは傷みにくくなったのですが、根本が硬くなって曲げなければ設置できなくなりました。」(EVモーターズ・ジャパン関係者)
「ホースを保護しているスプリングがホースの外皮部分にあたっており、傷みが早くなっていました。
EVモーターズ・ジャパンはこの状況に対して当たりやすいところに保護剤をつけてブレーキホースの損傷を一時的に防ぐような対応をしただけでした。
その後、全国各地で大型はもちろん小型(6.99m)のブレーキホースにも損傷が起きていることが発覚しましたがその時のEVモーターズ・ジャパンの対応は『ホースの素材を強化した対策品』に交換することでした。
しかし素材があまりにも強固であったため今度はホース根元の金具が硬くなって、小型ではスペースの関係上ホースを曲げないと設置できなくなりました。
さらに使っているうちに動いてタイヤハウスに干渉するようになったのですが、こんな状況でも根本的な改善をせず、EVモーターズ・ジャパンは『当たらないように設置するコツを教える』という対応で逃げていました」(バス事業者)
なおブレーキホースは重要保安部品であるため、そもそもほかの部品に干渉する状態での取り付けは絶対NGです。また、ねじったり曲げたりして付けることも厳禁。
取り回し部分の設計から変更し「設計上の欠陥を解消」する必要があります。事情に詳しい整備関係者は以下のように話してくれました。
「バス事業者から指摘があってブレーキホース素材を強化する、ホースをねじったまま設置するなどについては国交省にも他のユーザーにも問い合わせがあるまでは積極的に対応していませんでした。
何しろ整備するにも手順書が存在しないし、車両ごとに設置角度などもバラバラです。
中にはハンドルの部品に干渉するバスもありました。部品精度、組付け精度が一定していないのは納車時期によって異なる部品が付けられているからだと聞きました」(事情に詳しい整備関係者)

ところで、リコール届出書の「発見の動機」は「国土交通省による指摘」とありますが、これも大問題です。
前述したとおり、ブレーキホースの不具合は2年以上前から報告があったもののその場しのぎの対応しか行わず、リコールはもちろんほかのバス事業者に対して注意喚起をすることも点検や交換を行うこともありませんでした。
その結果は2025年9月の国交省による「総点検」指示で現れました。
全国のバス事業者からたくさんの「ブレーキホースの不具合」が報告されたのです。
国交省も見て見ぬふりもできず、EVモーターズ・ジャパンに指示をしてEVモーターズ・ジャパン経営陣がリコールを届け出る対応を決めたというわけです。

※ ※ ※
今回は小型だけですが、ゆくゆくは大型もブレーキホースに関するリコール対象となる可能性があります。
対応策も、単に強化したブレーキホースに交換するのではなく設計から安全第一で全社をあげて見直すべきだと筆者は考えます。
また、EVモーターズ・ジャパンが輸入販売してきたEVバスにはブレーキホース以外にも多数のリコール案件が存在しています。
過去にはブレーキチャンバー自体が走行中に脱落(溶接不足?)したり、低速走行中に足回りの部品が破断したり、またインバータからの発火も2件発生。
今のところこれらの不具合に関するリコール届出の動きは全くありません。
これらの深刻な不具合が原因の事故が発生しないことを願うばかりです。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。


















