トヨタの「ミッドシップ×4WD“セダン”」がスゴイ! ターボ+スーチャの「高性能エンジン」搭載モデル! 50:50の重量配分も実現した“4ドアモデル”「FXV」とは

数十年前のコンセプトカーの中には、「来なかった未来」を示すクルマもあって興味は尽きません。1985年発表のトヨタ「FXV コンセプト」では、どのような未来像を示していたのでしょうか。

ミッドシップで4WDの4ドアセダン、エンジンはターボ+スーチャー!

 各メーカーがモーターショーに出品するコンセプトカーの多くは、メーカーごとの最新技術や環境への取り組みや近未来像が投影されます。

 そのため時間を経てから改めて見てみると、見事に未来を予見していたようなものから、現代の視点から見ると不思議なコンセプトでまとめられていたものもあります。一方で、市販予定のクルマを飾ってショーモデル風に仕立てたコンセプトカーも存在します。

ミッドシップセダン!?
ミッドシップセダン!?

 それらのコンセプトやデザイン、技術は発表当時の流行や世相、テクノロジーレベルを反映しているため、コンセプトカーはまさに「時代の鏡」とも言えます。

 1985年の第26回東京モーターショーにトヨタが展示した「FXV コンセプト」も、時代性を強く見せていました。

 FXVは、4人乗りの4ドアセダンでありながらMR(ミッドシップ・レイアウト)という一風変わったコンセプトカー。ミッドシップ4ドア4シーターというパッケージは、「新時代のスポーティサルーンのためのアドバンスド・レイアウト」と紹介されていました。

 1980年代半ばといえばトヨタ「マークII」兄弟をはじめとして、ラグジュアリーなセダンがもてはやされた時代。まずはセダンで未来像を示すのは珍しいことではなかったとはいえ、あの頃としても突飛なコンセプトだったのは確かです。

 しかし実はかなり真面目かつ現実的に、「トヨタが考える近未来のクルマ像」として作られていました。

 まず、前述のMR採用については「理想的な50:50の重量配分と優れた走行性能を可能とする」とされ、このレイアウトに意味を持たせていました。

 そして4人が十分快適に過ごせるキャビンを組み合わせることで、当時のトヨタのキャッチコピーである「Fun To Drive」を実現する、と謳われていました。

 スポーツカー然としたウェッジシェイプのフォルムは「新空力スタイル」と銘打たれており、格納式ワイパーや使用時に上にせりあがる「ライズアップヘッドライト」、徹底したフラッシュサーフェス化・空力解析によりCD値0.24を達成。未来的なスタイルも手に入れています。

 メカニズム面でも当時最新の技術を投入。エンジンはターボ+スーパーチャージャーを組み合わせた2リッターDOHCで、パーシャルリーンバーン(希薄燃焼)システムや電子制御スロットル、ディストリビューターレスの点火方式、セラミック製タービン・マグネシウム合金製ピストンなどを採用。

 当時のトヨタが開発を進めていた「LASRE(=Light-weight Advanced Super Response Engine。レーザー)」と称する、新しいDOHCエンジンの象徴という側面も持っていました。オートマチックトランスミッションは当時では画期的な5速。フルタイム4WDによって優れたトラクション性能を発揮しました。

 サスペンション形式は4輪ダブルウィッシュボーン式で、電子制御のハイドロニューマチックを備えて操縦性・乗り心地・安定性を両立したほか、速度に応じて後輪を同位相・逆位相に制御可能な電子制御4WSも搭載。

 各メーカーで導入が進み始めていたABS(トヨタでは4輪ESCと呼んでいた)はもちろんのこと、ソーラーパネルや赤外線をカットする熱戦反射ガラス、フルカラー液晶のタッチ式マルチインフォメーションシステムなど、現在では普及した装備も載せていました。

※ ※ ※

 FXVのデビューから約30年。「トヨタの予言」と称したコンセプトカーが背の低いスポーティセダンで、パワーユニットがターボ+スーパーチャージャーエンジンというのは、今では考えられません。そういったコンセプトカーは、今後も登場しないでしょう。

 今となっては「来なかった未来」を示す、かつてのコンセプトカーFXV。「トヨタの予言」がどこまで当たっているかを調べるのも、面白いのではないでしょうか。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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