トヨタ、WECで「来季に向け新パッケージ投入」を明言、ルマンの雪辱へ「旧態依然とした体制を壊す」 水素マシンやGT3も近い将来に走り出す!?

FIA世界耐久選手権(WEC)富士戦の場で、TOYOTA GAZOO Racingが記者懇談会を実施しました。今季の苦戦とルマンでの敗北を糧に、来季は新型パッケージを投入し雪辱を誓うと表明。中嶋裕樹新会長のもと「旧態依然とした体制を壊す」として、マシンと組織の両面から大変革に挑むことを明らかにしました。

TOYOTA GAZOO RacingがWECを振り返る! 水素マシンやGT3にも言及

 2025年のFIA 世界耐久選手権(WEC)第7戦の舞台である富士スピードウェイで9月28日、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)が記者懇談会を開催しました。

 今シーズンの厳しい戦い、特にルマン24時間レースでの敗北を糧に、来シーズンへ向けた車両の大幅アップデートと体制強化で雪辱を誓う考えを明らかにしています。

TOYOTA GAZOO RacingがWECを振り返る! 水素マシンやGT3にも言及
TOYOTA GAZOO RacingがWECを振り返る! 水素マシンやGT3にも言及

 ●ルマンでの敗北。「空力とタイヤ」が浮き彫りにした課題

 懇談会の冒頭、TGRヨーロッパのチームディレクターである中嶋一貴氏が、今シーズンの戦いを振り返りました。

 特に、王者として長年君臨してきたルマン24時間レースでフェラーリやポルシェといったライバルに及ばず、厳しい結果に終わったことについて、その原因を分析。

「空力で劣っていた。一番大きな課題はクルマの空力性能です」と中嶋(一貴)氏は語ります。ライバルが最高速で優位性を示す中、TGRは「どんな条件下でも空力性能が正しく発揮される」という点で課題を抱えていたようです。

 王者として臨んだ今シーズン、ライバルの猛追の前に苦杯をなめたトヨタ。2025年からTGRヨーロッパ会長に就任した中嶋裕樹氏は「正直、我々には甘さがあった」と率直に認めました。

 これらの反省を踏まえ、TGRは来シーズンに向けて「エボジョーカー」(ハイパーカークラスにおけるアップデート)と呼ばれる規則内の大幅な車両アップデート権を行使し、新しい空力パッケージを投入する準備を進めていることを明言しました。

 これは全くの新型車両ではなく、現行の「GR010 HYBRID」を進化させたマシンとなります。

 中嶋(一貴)氏は「ルマンで得た教訓を活かし、この2、3ヶ月で開発を進めてきた。ドライバーが常に自信を持って攻められるクルマにしなければいけない」と、巻き返しへの決意を述べました。

TGRヨーロッパのチームディレクターである中嶋一貴氏
TGRヨーロッパのチームディレクターである中嶋一貴氏

 ●「風通しの悪さ」を打破へ。量産部門の“エース”を投入する新体制

 課題はマシンだけでなく、チームの体制にもあるといいます。TGRヨーロッパのマネージングダイレクターである上原隆史氏は、「技術面とマネジメント面の両方で改革が必要」だと語ります。

 象徴的だったのが、2025年のルマンで8号車に起きたタイヤ脱落のトラブルです。上原氏によると、メカニックからは同様の懸念が以前から提起されていたにもかかわらず、改善されないままレースを迎えていたという背景があったことを明かしました。

 この「風通しの悪さ」を打破するため、チームは新たな人材を投入します。元々トヨタの電動車開発で走行制御を担当していた山本雅哉氏をテクニカルコーディネーターに任命。

 山本氏を中心に、量産部門で培った知見をレース現場に活かし、技術的な課題を年内に洗い出して解決を目指します。

 中嶋会長は、この状況を「トヨタ自動車が抱える課題と同じ」と指摘。

「正直、旧態依然…個々の能力は高いもののコミュニケーション不足などの体質があった。それを変えるために、むちゃくちゃ無理を言って“エース”を投入した。新しい風でぶち壊すしかない」と、強い言葉で改革への覚悟を示しました。

 この危機感をバネに、マシンと組織の両面で大きな変革に挑むTGRが、来シーズンどのような戦いを見せるのか、その動向から目が離せません。

2025年からTGRヨーロッパ会長に就任した中嶋裕樹氏
2025年からTGRヨーロッパ会長に就任した中嶋裕樹氏

 ●水素開発とGT3マシンへの期待

 懇談会では、未来に向けた取り組みについても語られました。

 TGRが「走る実験室」と位置づける水素エンジン技術については、グローバルモータースポーツダイレクターの加地雅哉氏が「現在、水素エンジンレーシングカーの開発を進めており、今年の年末頃から液体水素を使ったテストを開始する予定」と説明。

 これに対し中嶋会長は「(水素で)いつまで遊んでいるんだ。とっとと本気を出せ」と檄を飛ばし、開発の加速を強く促しました。

※ ※ ※

 また、ファン待望のGT3車両の開発状況についての質問が飛ぶと、そばにいたTOYOTA GAZOO Racingの高橋智也プレジデントは「順調に苦しんでいます」とユニークな表現で回答。中嶋会長は「それだ」と賛同する場面も。

 デビュー時期については明言を避けつつも、「むちゃくちゃ近い将来」(中嶋会長)と語り、その登場が間近であることを示唆しました。

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Writer: くるまのニュース編集部

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