クルマの進化を支える「アイシン」知られざる歴史と技術力を深掘りしてみた!
アイシンの「パワートレイン技術説明会2025」がおこなわれました。これまでの歴史と現在、また未来に向けての提案まで盛りだくさんだった内容を山本シンヤさんの詳細リポートでお届けします。
知られざる技術の巨人 「アイシン」とは
クルマは2万点以上の部品で成り立っています。当然、自動車メーカーの自前もありますが、多くはその技術にたけたサプライヤーから供給されています。その一つが今回紹介する「アイシン」です。
部品メーカーとしての歴史は古く、1965年に「愛知工業」と「新川工業」の合併により総合自動車部品メーカー「アイシン精機」が設立されたのがスタートです。ちなみにアイシンの名は両社の漢字の頭文字から名付けられています。トヨタグループ企業の1つですが、世界の自動車メーカーと取引しており、自ら「カーメーカーに最も近い自動車部品メーカー」と語っています。
そんな「走る/曲がる/止まる」に関わるさまざまな事業を展開する自動車部品のグローバルサプライヤーであるアイシンの売上の半分(54.74%)を占める屋台骨とも言っても過言ではない「パワートレイン事業」について、同社「パワートレイン技術説明会2025」の内容とともに紹介したいと思います。

多くの人は「アイシン=トランスミッション」というイメージが強いと思いますが、愛知工業時代にトヨタからトヨグライド(日本初のトルコン式AT)を生産受託したのがスタートです。その後、開発がトヨタから移管されたのちに、1969年にアメリカの部品メーカー「ボルグワーナー社」との合併会社「アイシン・ワーナー」設立に至ります(2021年にアイシンと経営統合)。
1972年に登場したFR用3速AT(03-55)は、性能(シフトフィール)と耐久性、そして作りやすさのために構造・設計を一新。さらに生産初期には、完成したATを全機実車に搭載してテストしてから出荷するという念の入れようでした。このATはボルボにも供給され、まさに世界のアイシンの“礎”を築いた製品と言えるでしょう。
その後、ATは多段化・電子制御化の道を歩んでいきます。とりわけ、FFはスペースの問題で多段化が難しいと言われていましたが、1983年にFF用4速AT(AW-Z)を開発。その後5速ATへ進化し、さらに2002年にはFF横置き6速AT(F21)を開発しました。このATはアウディTTを皮切りにVWゴルフ(V)など世界の数多くのモデルに搭載されました。
実はこれには逸話があり、当時VWグループ会長だったフェルディナント・ピエヒ氏がアイシン製のAT車に乗り「これはいいね、次の検討候補に…ただし、6速でね」と言う注文を元に、開発陣が奮起して生まれたそうです。
この6ATをベースに、フロントギアセットにクラッチを1つ追加して開発されたのが2016年に開発されたFF横置き8速AT(AWF8F)です。6速ATと比較しケースは大型化されましたが、張り出し量はわずか+10mmに抑えられています。このATは、レクサスを皮切りにプジョーやボルボにも供給されました。
ちなみに、この8速ATをベースにモータースポーツでも活用できるように圧倒的な変速スピードとダイレクトフィールにこだわって開発されたのが、GRヤリス/GRカローラに搭載されるGR-DAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)になります。


























