ホンダの「2ドアスポーツカー」! ロングノーズの“コンパクト”な「後輪駆動モデル」! ワイド&ローなデザインもイイ「スポーツEV」はSシリーズ受け継ぐスポーツカーだったのか

新型「プレリュード」の発売で、電動化時代もスポーツカーを続ける、という意思を示したホンダ。そこで思い出されるのが2017年発表のコンセプトカー「スポーツEVコンセプト」です。

最初の4輪車が「360cc直4DOHCを積んだ軽トラック」ってホント!?

 近年のホンダは、ミニバンや軽トールワゴン、SUVのイメージが強く、またそれらの販売も好調に推移しています。いっぽう、やはりホンダといえばスポーツマインド溢れるスポーティなモデルやスポーツカーを思い浮かべる人も多いでしょう。 

 1948年に本田技研工業を設立したホンダは、当初2輪車のメーカーでした。そして旺盛なチャレンジ精神のもと、1959年に当時世界最高峰だったバイクレースの「マン島TTレース」に初参戦。1961年には早くも125ccおよび250ccの両クラスで上位を独占するなど、短い期間で世界制覇を成し遂げる偉業を達成しました。

ロングノーズのコンセプトモデル!
ロングノーズのコンセプトモデル!

 続く1962年、ホンダは4輪車部門への進出を発表します。当時はまだマイカーも遠い夢のような時代で、クルマといえば商用車がメインの時代でしたが、モータースポーツ文化の育成をも見据えていたホンダは、国産スポーツカーの開発を行うことになりました。

 そして同年秋の「第9回東京モーターショー」で、356ccおよび492cc直4DOHCに4連キャブレターという、バイクレースで培った精密機械のようなエンジンを積んだFRのオープンスポーツカー「S360」「S500」を出展。世界でも類を見ない、本格的な小型スポーツカーとして高い注目を集めました。

 いっぽうで、需要が高い商用車の開発も怠たらず、同ショーに軽トラックの「T360」を持ち込んでいます。このT360も、まさにホンダらしい軽トラでした。

 というのも、S360もびっくり、軽トラックの性格には合っているとはいえない、356cc直4DOHC+4連キャブレターから30psを叩き出す高回転エンジンを搭載していたからです。

 しかもS500より2ヶ月早く1963年8月に発売されたため(S360はお蔵入り)、ホンダ初の4輪車は軽トラック、かつ日本初の直4DOHCエンジン搭載車はT360となったのでした。

 そんなホンダですから、自身もホンダのDNAのひとつに「操る喜び」を掲げており、「シビック タイプR」や、「プレリュード」など、ホンダらしさを体現したようなクルマも作り続けているのはご存知の通りです。

スポーツEVコンセプトは、現代に蘇るSシリーズかも?

 そこで思い出されるのが、2017年開催の「第45回東京モーターショー」に展示されたEVスポーツカー、その名も「スポーツEVコンセプト(Sports EV Concept)」です。

「どんなに時代が変わっても、スポーツマインドはHondaのアイデンティティーであり続ける」と語るホンダが、来たる電動化時代の小型EVスポーツカーを提案したコンセプトカーです。

 コンパクトなボディ、EV専用のプラットフォーム搭載したレスポンスよい電動パワーユニットにより、静かで力強く、そして滑らかな加速、低重心がもたらす優れた運動性能を実現。「人とクルマがひとつになったような未体験の走りへ誘う」と謳われていました。

 ワイド&ローのスポーツカーらしいフォルムを特徴としつつ、ロングノーズ、そして傾斜したテールを持つスタイルは、S500の発展モデル「S600」および「S800」、に用意されていた「クーペ」を彷彿とさせます。

 それでいて丸目を採用したマスクは、どことなくかわいらしいロボットを思わせるデザインとなっており、スポーツカーにありがちなコワモテ感やシャープさとは異なる親しみやすい雰囲気があります。「所有する喜びと愛着が感じられる、次世代のスポーツカーデザイン」を目指した、とホンダは説明しています。

 さらにAI技術を用いた「Honda Automated Network Assistant」を組み合わせており、前後のブラックアウトエリア内に、車外の人とコミュニケーションを取れる文字が表示されるようになっていました。

※ ※ ※

 登場して早8年、コンセプトカーのままで発売のアナウンスが一切ないスポーツEVコンセプトですが、改めて見直してみると、ホンダのDNAや、Sシリーズのスピリットや伝統を受け継ぐ資格のあるスポーツカーではないか…と再認識できました。

 プレリュードの発売により、電動化時代もスポーツマインドを忘れない、というホンダの意思が明確になった今こそ、スポーツEVコンセプトに次ぐ小型スポーツカー像の「次の一手」を期待したいと思います。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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